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戦争を知っているか【タケノコxミモザx歩行者bコラボ】

タケノコさん X ミモザさん X ほこb でコラボしました。
それぞれがプロットを出し合い、そこから選んで創作します。
形式は自由、詩、散文、小説(いちおう文字ベースの作品)

私、ほこbはタケノコさんのものから(本編の後にプロットあり)


戦争を知っているか   【1057字】

「いやだよ」と私は言った。
いくらかわいい孫の頼みでも、それだけは安請け合いできない。戦争のことを思い出すのは吐き気がするくらいイヤなこと。
それでも染み出してしまう。「戦争」という言葉が脳の奥から気が狂ったように悪夢を引っ張り出し、嫌悪を絞り出した。
 
先の戦争は誰と戦っているのかさえ私たち庶民にはわからなかった。戦争から帰還した人さえ知らなかった。ただ空が燃え、街が崩れ去った。私はただただ震えて子どもたちを抱きしめるしかなかった。それでも恐怖に慄くだけの戦争中はまだ良かった。
 
戦争が終わると、私たちが部隊と呼んでいた兵士たちに翻弄された。戦争中から、もう蛇口から水は出なくなっていたが配給はあった。
それが縮小され、私たちは水の大切さを思い知ることになる。
辻ごとに、ある一定量が決められた配給は、それが尽きると否応なく終わった。ありつけなかったら干上がるに任せるしかなかった。
でも子どもたちに我慢は難しい。部隊が通り過ぎた後の轍の水を飲もうとするのを、抑えなければならなかった。干からびた体はいくらでも吸い込んでしまう。それが良い水であろうと、悪い水であろうと。
だから私は、水を必死で奪った。夜の間に盗みもした。それでも孫の母の弟を悪い水に奪われた。
 
そんな日々がどれだけ続いただろう。飢えた野犬が目の前にある食べ物のためなら、隣人がどうなろうとそれを奪うように、私には自分をそして子どもを守る本能しかなかった。
 
部隊はいつの間にか去っていた。それでも平和は戻らなかった。今度は住人同士のいがみ合い、奪い合い。心を蝕まれ続けて、誰もが一欠片の思いやりさえ持ち得ない鬼畜と化していた。私はそこに戦争があぶり出した人間の、自分の本性を見ていた。
そのいやらしさ、醜さをどうして孫に伝えられよう。私はもちろん、誰も彼もが自分を守るだけの欲望と貧困の奴隷だった。それが戦争だと。それが真実だと。伝える自信は私にはなかった。
 
孫は学校から帰ってきて、また戦争の話を聞かせてほしいとせがんだ。聞いてこないと責められるのだと。
伝えるのならば、全てを包み隠さず伝えるべきだと思う。それを果たして学校が求めているのかどうかはわからない。しかしたとえどれだけ嫌われようと、蔑まれようと、それが私に与えられた使命ならば。
あの戦争を当たり障りのない戦争にはできない。

 
話し終わると、目にいっぱいの涙を溜めた孫は、私の胸で泣き始めた。
「おばあちゃん、ごめんなさい。ごめんなさい」と何度も何度も繰り返す孫を、私はあの頃の我が子のようにしっかりと抱きしめた。
      了

*本編は架空の物語です。


戦争を知らない孫。
戦争の話をしたくない私。
戦争は私の中で既に遠い過去にあった。
ある日突然孫が戦争の話を聞きたいと言い出した。
学校の宿題だという。
私は嫌だと言って断った。
数日後孫が怒ってきてこう言った。
「おばあちゃんが話してくれないから学校でバカにされたよ」
私は嫌だと言った自分を恥じた。
でもやっぱり言いたくない。
どうしようか。
あのひもじかった、あの寂しかった、あの死にかけた恐ろしく思い出すのも吐き気がする話をしなければいけないのだろうか。
話すことで私はどうなってしまうのだろうか。
孫は私のことをどこまでわかってくれるのだろうか?

タケノコさんのプロット


  

以上、お2人の作品もお楽しみください♫


タケノコさんってどんな人?

タケノコさんとはこのころ仲良くなりました

普段は詩を書いていらっしゃいます

そして読書家でもあります。
また映画に造詣が深い!

よろしければ部屋をノックしてみてくださいね
気さくな方です。食べられたりはしません

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