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所属する場所を去るべきときはいつ

子どものころは、懐かしいという感情をどうして良いのかわからなかった。
何度も転校をして、環境を離れ、場所を離れ、人から離れ、その記憶にはせる思いは誰とシェアできるものではなく、だから少し寂しげな懐かしさが生まれるのだと思っていた。

わたしはいつも去る者だった。

なんてことをぼんやり思ったり思わなかったり。

先週金曜日に、7年11か月所属した会社の部署のメンバーが送別会を企画してくれた。
卒業したのは9月末だけれど、数か月のあいだ会社から離れていたので、同僚の皆さんにお会いするのは実に久しぶりだ。

けれど、久しぶりな感覚もなくいつもの通り普通に会話をし、普通にお酒を飲んだり飲まなかったりして笑い合い、色んな話をした。

人生は今の連続で、これからもこんな「今」が続くのかもしれない。

国際協力の世界でアフリカに関わる仕事がしたくて、英国の大学院から帰国して20年と少し。
開発コンサルタントとしてこの会社に8年弱だなんて、これほど長い期間おなじ組織に所属したことは初めてだ。

色んな案件に関わったな。
あんな仕事やこんな事件もあった。

そんな時間を共有し、様々なプロジェクトチームを組んだり手伝ったりしながら、同じ組織の中で働いてきたチームの信頼みたいなものがあるのだろう。

所属の安心感みたいな温かさを感じた。
よかったいつもと同じみんなで。
わたしはここに馴染んでいる。

所属の感覚を抱いたことはあまりなかったから、こんな時間を持てたことは幸せだったのだろう。
そう思うと、ああそうか、去るべき時間がきたのだなと悟った気もしている。

かえって、ここを去る気持ちの整理がつく気がした。

温かな時間と、きれいなお花と贈り物。
そして寄せ書きのカードまで。

愛が溢れているなと思うと、わたしは幸せ者なのですね。

だからこそ、先へ進みたいと思う。

エッセイ100本プロジェクト(2023年9月start)
【 6/100本】

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