【R16 訪問販売編 最終話 カリスマ詐欺師の逮捕】
浜田さんとの溝は日に日に深くなって行く。
元々自分たちはクリーンな詐欺師だと教えられて来たので常日頃から
相手の空気を読んだり
『相手が通常会話している時から、少しの表情の変化や声のトーンを違いから相手が今どう思っているのか、違和感を瞬時にキャッチし分析できるように常に意識しろ!人と話す時はそれを無意識にしてるよう、分析しながら話す事を当たり前にしろ!』
と教わり
『相手の違和感を感じとってもそれを顔には絶対に出すな。空気感も変えるな。騙されているフリして気づいてないフリをして、時にはアホなフリをして相手を誘導していけ!自分の感情をコントロールしろ!それがポーカーフェイスだ!』
と日々言われていたのでオレは浜田さんの違和感にも気づく。
もちろん師匠の浜田さんもオレの違和感に気付いている。
がお互いポーカーフェイスだ。
仲良いフリをお互いにしているが心ここにあらず。
そんな2人の偽りの関係が苦しいので浜田さんは毎日永井さんチームと合流していたと思う。
それはオレ自身も永井さんがいた方が気が楽だった。
そんな空気感だったので散々行った出張も全然行かなかった。
(永井さんチームはK社長の管理下にあったので勝手に泊まりで出張へは行けないから)
そんな感じでも浜田さんはスロットを辞めなかった。
永井さんもAもTも、もちろんオレも疲れてて仕事にもならなかった。
毎日浜田さんをスロット屋に送迎して浜田さんのスロット代を稼ぐ為に布団を売る。
そんな事を考えていると、顔が死んでてさすがにもうポーカーフェイスは出来なくて客とも仲良く話せない。
うっとうしい奴や居留守されるとインタホーンを殴って壊したり、下手に出てたらオラオラして来る奴が居たら掴み合いになり警察を呼ばれたりもした。
もう無理だと思い仕事が終わってから浜田さんを自宅まで送った後にマンションの下で
『話があります。辞めます。』と言った。
すると
『何言ってんの?無理だよそんなの。無理に決まってんじゃん!明日もちゃんと迎えに来いよ』
と言われ全く話にならないので翌日ブチった。
永井さんには事情を説明して
『すいません迷惑かけるかもしれませんブチります』と言ったが
『全然いいよ。こっちはうまくやっとくから気にしないで。』と言われた。
すごくいい人だ。
”翌日も翌翌日も浜田さんからの電話は何十件も鳴り止まなかった”
電話に出て
『もうホンマに無理です。毎日スロット行って何しに働いてるか分からんし売っても売っても金も無いしもうホンマに辞めます』
と言うと
『待ってよ!お金はあげてるじゃん!それにごめんね今まで。ちょっと甘えすぎたね。これからもう一回引き締めてやっていこうよ。金持ちになろうよ!俺たちなら絶対いけるよ!』
と何回も電話で言われたが、いつもそんな感じなのでその後もブチった。
そうするとそれからはどうやって調べたか分からないが実家に電話がかかって来た。
『あんた浜田さんって方にお金借りてるの?電話あったよ』
と言われオレが金を借りている事にして詰めて来た。
それでも『一切借りてないし無視していいよ』と言って無視していると
浜田さんはK社長にも頼んだらしく
ヤクザ風の人から何回も何回も実家に『金を返せ!』と電話で嫌がらせされた。
内訳は車代・スロットで渡した金・出張代・全て(貸しただけ)で明細書もあると言って300万請求して来た。
なんやねん明細書って、と思ってどうせ偽造するだけやろと思って両親に事情を説明して
『全部ウソやから拒否してて。電話もとらんでいいよ』と言ったが
両親はあまりにしつこく電話で金請求して来るので弁護士に相談したらしく
その内容を相手に言って裁判する事になった所
浜田さんから泣きながら留守電入ってて
『ごめんね。本当にもう一度やり直したい。お金はもういいから裁判もしなくていいよ。もう一度一緒にやろうよ。』
と電話があったが『お金はもういい』ってそもそも金借りて無いし逆にオレで結構稼いだはずやのに毎日スロットするからやろと思って無視した。
それ以降はもうオレにも実家にも連絡は無くなった。
”この日以来、浜田さんとは一切関わりが無い”
永井さんとは連絡を取っていたので聞いた話によると
オレが辞めてから浜田さんは一人で、以前売ったお客さんの所をアフターフォローで訪問して全て現金取引きで、後日納品と言う形で存在しない商品を売ってて通報され詐欺で捕まったと聞いた。
”本当の詐欺師になってしまった・・・”
学生編の1話で話した通り、元々人見知りであがり症で女の子と話すだけで緊張して汗だくになるオレに
人との話し方や物の売り方や営業を教えてくれて成長させてくれたのは後にも先にも浜田さんしかいない。
オレの接客業の師匠は浜田さん。カリスマ詐欺師。出会えて良かったです。
18歳から20歳までやった訪問販売で約2年間の出来事はここで書けていない事もいっぱいあるし、ポンコツのオレはかなり人として成長出来ました。
浜田さんも永井さんもあの時に出会えた事に感謝しています。
あれから10数年経ち色んな経験をして、今まで俺には何人も上司が付き
営業や接客を教えてくれた人はいるけど
俺の師匠は今でも浜田さんだけだと思っています。
変な終わり方していっさい感謝の気持ちは伝えれてないけど
心からありがとうございました。
その後オレは数年間は永井さんとは連絡を取っていたが、いつしか連絡しなくなり連絡先が分からなくなって今はもう分からない。
なぜ浜田さんと永井さんだけは実名で他の人はイニシャルなのかと言うと
SNSやネット社会の現代なので何かの縁で、もしかしたら。
確率はかなり低いと言うか、
ほぼ無いかも知らんけどまた出会えるかもしれないと思って実名で書いている。
#訪問販売 のタグで万が一の万が一で引っかかれへんかなって。
読んでくれたら絶対に俺だと気付いてくれるくらい結構忠実に書けてるんじゃ無いかと思う。
まぁそんな事があって自分の接客スキルに自信をつけ、人見知りを改善できて来た俺はミナミで仕事しようと思う。
そこで見つけたのが
南海難波のパークスの入り口付近に当時あった賃貸不動産だ。
元々、人見知りであがり症の俺は浜田さんから仕込まれた営業力をひっさげて
ミナミという場に移して挑戦する。
訪問販売編END
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