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作詞

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言葉が溢れる、溢れて溢れてどうしようない。そんな時に書きたくなる言葉たち。それに、小説も。ちっぽけな話だから、それがいい。
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2023年9月の記事一覧

相良とその彼氏と僕

相良とその彼氏と僕

親友の相良友子には彼氏がいる。男女共に分け隔て無く大人気の陸上部のエースだ。
そして、相良友子の親友の僕はどうだ。ガリ勉でギリギリこの高校に入れた。今では下から数えた方が早い。友子くらいだ。こんな僕に優しいのは。友子とその彼氏。例えばB氏とでも名付けておくか。僕はB氏が好きだ。汗を流しているとこも、友子からの差し入れの手作り弁当を嬉しそうに頬張るとこも。友子と、人目を気にしつつ相合傘をするとこも。

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お前の屁

お前の屁

「なんだかお前の屁はいい匂いがするな」
真面目1本やりで相談にはよく乗るが、自分からはあまり口出しとかして来ない父が珍妙な顔で、俺に言う
「そうね、とても清々しい清涼な」
「そうそう。なんなら、いまの屁様よりお前の屁の方がいい匂いだ」
「お父さん、それは言い過ぎよ」
「いや、言い過ぎじゃない。」と、俺はギョッとする。も、もしかして
「次の屁様はお前で決まりだな」
「そうと決まったら、毎日さつまいも

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ドア越しの恋人たち

ドア越しの恋人たち

今日は佐藤さんが配達の日。
僕の彼女は配達員をしている。

ピンポンが鳴ると麗らかで透き通った声で小林さん、お荷物ですと。僕も配達員さん、お疲れ様と。

彼女はいつもテキパキしている。普段から休みの日は僕の家でのんびりゴロゴロしている姿をお首にも出さない。

はい、どうぞ。そっと荷物が差し出される。そこに、僕はウルトラマンのハンコで小林と押す。いつか、配達員の名前も小林になるだろう。春には赤ん坊が

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