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物語創作に役立つ書評:「PIXAR ピクサー」

ご覧いただきありがとうございます。この書評は以下のnoteで示したフォーマットで書かれています。詳しく知りたい方は是非、参考にしていただけると幸いです。

物語創作に必要な3つの要素(コンセプト・人物・テーマ)を「PIXAR ピクサー」から抜き出します。

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コンセプト→(ストーリーの土台となるアイデア。「もし~だとしたら?(what if ?)」という問いで表すとはっきりわかる。)


もし、シリコンバレーで働く最高財務責任者 (CFO) がPIXARの魔法にかかったら

本書は、かの有名なスティーブ・ジョブズが一本の電話をかけることから始まる。相手は、シリコンバレーでEFI(エレクトロニクス・フォー・イメージング)という会社で副会長かつ、最高財務責任者をしていた、ローレンス・レビーであった。相手は、シリコンバレーでEFI(エレクトロニクス・フォー・イメージング)という会社で副会長かつ、最高財務責任者をしていた、ローレンス・レビーであった。

この一本の電話をきっかけとして、ローレンスはCFOとして「PIXAR」の事業を軌道に乗せ、商業的に成功させるために奮闘する事になる。
1994年当時、赤字で今にも倒産しそうな「PIXAR」はいかにしてヒット作を連発するアニメーションスタジオへと変貌を遂げたのか。

ローレンス・レビー(CFO)、スティーブ・ジョブズ(共同創業者)、エド・キャットムル(共同創業者)、ジョン・ラセター(監督)の言葉を通して、歴史が語られていく。

本書は、クリエイティブや製作手法の面から注目されがちな「PIXAR」を最高財務責任者の視点から描いている。ストックオプションやIPOなどにどのように取り組んできたかなどが紹介されている。エンターテイメント事業の収益モデル、以外にも変化を嫌うハリウッドのリスクヘッジ方法など、非常に勉強になる。

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人物の世界観→(人の世界観は社会の価値観や政治、好み、信条などに培われ、その人の態度や習慣に表れる。)


道ー精神や創造性、人間性の発露を促しつつ、日々のニーズや責任にきちんと対処する。


中道のイメージをつかむには、自分のなかに人がふたりいると考えて見ればいい。一人は官僚、もうひとりは自由な精神のアーティストだ。官僚は、時間通りに起きる、払うべきものを払う、いい成績を取るなど、物事をきちんとやるのが仕事で、安定や規則を好み、効率や成果に価値を置く。対して自由な精神のアーティストは、深いところでつながり、生きている喜びや愛、冒険、のびのびとした活力、創造性、気持ちを大切にする。

中道は仏教哲学の教えである。本書では、官僚とアーティストという対比を例にして説明されている。2つはいずれも極端なあり方であり、どちらかを重要視してどちらかを無視するようなことでは、うまくないというのが中道の考え方である。

官僚的な手続きは会社として存続する上で導入しなければならないものである。しかし、クリエイティブな精神との相性はよくない場合が多く、アーティストはしばしば潰されてしまう。中道の考え方を会社に応用することで、事業としてなすべきことをしつつ、創造性や尊厳、人間性を育む組織を作ることができる。

本書では、「PIXAR」の成功ストーリーを通して、中道の考え方を学ぶことができます。

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人物のアーク→(ストーリーの中で体験する学びや成長。自分にとって最も厄介な問題をいかに克服するか。)


「PIXAR」はもがき苦しむ組織から世界中の人々に感動をもたらす一流のスタジオへと変わった。

収益もない、キャッシュもない、ストックオプションもない、事業ロードマップもない。そんな苦しい中でも、「PIXAR」には芸術的・想像的な魔法が息づいていた。世界初のフルCG長編アニメーション「トイ・ストーリー」である。

ローレンスは「PIXAR」で仕事をするかどうか迷っていた時「トイストーリー」が放つ魔法にかけられ、心を奪われてしまったという。
それから、右も左もわからないエンターテイメント業界に足を踏み入れ、CFOとして「PIXAR」がディズニーに買収されるまで関わることになる。

エンターテイメント事業に関する情報が不足する中、ツギハギで映画の財務モデルを作成。戦略と事業についてスティーブ・ジョブズとふたりで検討に検討を重ね、実行。投資銀行を巻きこみピクサーIPOを成功させ、映画製作資金を確保。ディズニーとな粘り強く交渉し、世界的ブランドとなる基礎の契約を締結。

本書では、著者の視点を通して「PIXAR」が世界的ブランドになるまでの十数年間の成長を体験することができます。

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人物の内面の悪魔との葛藤→(心のネガティブな側面。認識や思考、選択、行動を左右する。「知らない人と話すのが怖い」といった欠点は内面の悪魔の影響で表れる。)


何が悲しくて16年も苦労ばかりで、毎月オーナーに小切手を切ってもらわなければ給料も払えない会社に入らなければならないのか。

「PIXAR」は1994年当時、ポイントリッチモンドというへんぴな所にあった。

景色が言い訳でもない。
向かいには製油所があって高い煙突や大きな設備。
たくさんの配管。
駐車場もいまいち。
事務所はなんの変哲もない平屋建てのビル。
玄関ロビーもしょぼい。
擦り切れたカーペットに飾り気のない壁。
照明も不足。
外見はみすぼらしい。

さらには、5000万ドル使っても成果を挙げられていない。
事業もあちこちさまようばかりで、進むべき道も見えていない。
しかし、テクノロジーとクリエイティブを両立した魔法の世界がそこにはあった。

初めは「PIXAR」で働くことに前向きではなかったローレンスだが、仲間が頑張る、優しくしてくれる姿をみることで、会社にいることに誇りを持てるようになって行った。

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テーマ→(簡単に言えば、テーマとは「ストーリーが意味すること」だ。世の中や人生との関わりだ。)


ピクサーで私が学んだことと言えば、何と言ってもストーリーが一番大切ということだ。

本書では、クリエイティブ面でピクサーをリードするジョン・ラセターの言葉が紹介されている。

「きれいなグラフィックスを作れな人を数分は楽しませることができる。だが、人々を椅子から立てなくするのはストーリーなんだ」

優れたストーリーには確かに人を、会社を、世界を変える力があるようだ。

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本書は以下の本です。


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