父が娘に語る美しく_深く壮大で_とんでもなくわかりやすい経済の話

物語創作に役立つ書評:「父が娘に語る美しく、深く壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話」

ご覧いただきありがとうございます。この書評は以下のnoteで示したフォーマットで書かれています。詳しく知りたい方は是非、参考にしていただけると幸いです。

物語創作に必要な3つの要素(コンセプト・人物・テーマ)を「父が娘に語る美しく、深く壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話」から抜き出します。

----------------------------------------------------

コンセプト→(ストーリーの土台となるアイデア。「もし~だとしたら?(what if ?)」という問いで表すとはっきりわかる。)

もし、市場社会の参加者の多くが、今後の経済活動が低調になったり、不況が長く続いていくに違いないと思ってしまったら?

メディアから情報収集していると、賃金や金利が引き下がっているとのニュースがあった。会社の経営者にとって、もっと資金を借り入れて、もっと従業員を雇い入れるチャンスのように見える。

しかし、「悲観主義の悪魔的な引力」が邪魔をする。

経営者の多くは「市場社会の参加者全員が経済活動の低調や不況が続くと思っているに違いない」と考えてしまう。

その結果、多くの経営者はなるべく従業員を雇うのを止め、お金も借りなくなる。賃金と金利は上がらず、さらに景気が悪くなる。景気が悪くなってモノが売れなくなった時、借金を返すことが難しくなってくる。

数多くの企業が破綻し、失業者が溢れているなか、さらにモノが売れなくなり、銀行は返済不能のローンをますます抱え込む。銀行が苦しいという噂が流れ、預金者は現金を引き出そうとするが、そんなお金は銀行にはない。

預金者はお金を失う。失業者は生き残っている企業からモノが買えなくなり、本来、人手が足りない企業も倒産への恐れから人を雇うのに二の足を踏んでしまう。大量失業、大量倒産の未来が実現してしまう。

本書では、世界に格差が存在するのはなぜかという問いから、経済の成り立ちとその様子を古代メソポタミア文明から遡って、わかりやすく具体例を挙げて説明されている。経済のイメージがすっと頭に入ってきて理解しやすく、大変勉強になった。

----------------------------------------------------

人物の世界観→(人の世界観は社会の価値観や政治、好み、信条などに培われ、その人の態度や習慣に表れる。)

世界は、少数の支配者と庶民に分かれている。

古代メソポタミアでも今の時代でも同じことが言え、支配者は富を独占している。庶民の反乱を防ぐためには支配を正当化するイデオロギーが必要になる。昔は宗教がその役割を担っていた。

今の時代は経済学が宗教と同じ役割を果たしている。庶民は「神の見えざる手」を信じ、市場社会が究極の自然秩序であると信じている。

人々は、支配者にとって都合のいい、市場社会というゲームの上のプレイヤーである。

----------------------------------------------------

人物のアーク→(ストーリーの中で体験する学びや成長。自分にとって最も厄介な問題をいかに克服するか。)

圧倒的な格差と有り余るほどの富を生み出した、「市場社会」について勉強し、理解することで、人は、市場社会という仕組みの上でゲームを行う、プレイヤーであることを理解できる。

参加するプレイヤーの多くが、「市場社会というゲームのルール」に対して意見を言えるようになることで、格差を生み出した不完全なゲームである市場社会をもっと上手く運営できるようになるかもしれない。

----------------------------------------------------

人物の内面の悪魔との葛藤→(心のネガティブな側面。認識や思考、選択、行動を左右する。「知らない人と話すのが怖い」といった欠点は内面の悪魔の影響で表れる。)

市場社会に影響を与える人の内面の悪魔は、いわゆる「囚人のジレンマ」にも通ずるところがある。

人間は自分を守りたいという短期的な衝動に抗うことができず、集団として悲観的な予想をしてしまう。

例えば、「他の人が裏切るんじゃないか」、「他の経営者が採用を控え、ものが売れなくなるんじゃないか」などと考える人が増えれば増えるほど、悲観的な予想は実現してしまう。

本書では、経済についてあまり知らない人でも、自分の考えを持てるように工夫されている。今後、機械に仕事を奪われるんじゃないかなど、漠然とした不安を抱えている人にもオススメしたい。

----------------------------------------------------

テーマ→(簡単に言えば、テーマとは「ストーリーが意味すること」だ。世の中や人生との関わりだ。)

専門家に経済を委ねることは、自分にとって大切な判断を全て他人任せにしてしまうことと同じ。誰もが経済についてしっかりと意見を言えることが真の民主主義の前提となる。

テクノロジーの可能性をあますところなく利用する一方で、人生や人間らしさを破壊せず、一握りの人たちの奴隷になることもない世界を目指すべきである。

社会の規範や決まり事から一歩外に出て考えることができれば、幻想に気づき、世界のありのままの姿を捉えることができる。

----------------------------------------------------

本書は以下の本です。


この記事が参加している募集

脚本・設定・台本製作に役立つアプリケーション「Admicrea」を開発しています。 本を読んで学んだことを忘れないため,本で得た知識を脚本(シナリオ)制作に役立てるためnoteを始めました。 よい小説・脚本を書きたいと思い勉強中です。ユーザーさんの物語の一部になれたら幸いです。