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小説 やわらかい生き物

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#創作大賞2023

小説 やわらかい生き物 4

小説 やわらかい生き物 4

軌道を描いて

[1]
『何かいいことないかなぁ』
『誰か好きになってくれないなぁ』

たまにではあるが、結構耳にする会話ではある。
「キミはそういう会に、参加してみたの?」
と繋がるのはよくある返しだろうが、そういう会に参加した結果、自分に合わなかったらそれはそういう「待ちたい、見つけて欲しい」と言う気持ちにもなるのは、誰でも一度は覚えがあるのではないだろうか。

学校ですら、全員仲良し、なんて

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小説 やわらかい生き物 3

小説 やわらかい生き物 3

違いは個性か?

[1]
他人が目に止めないことがある。
それは、見えているが、重要でないもの、興味のないもの、気づくことすら出来ない小さいもの。

しかし、目に留まる人には、理由もなく目に入るものだったりする。
小さな小さな花だったり、色だったり、文字や形、意味を持たないものだとしても、視界にはくっきりと映り、記憶に蓄積される。

後にそれが、発見だったりして初めて注目、評価になるのだけれど、大

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小説 やわらかい生き物 2

小説 やわらかい生き物 2

慣れない土地

[1]
「出張…と言うか出向ですか?」
 滅多にないことなので、少したじろいだ。
なにしろ、今の職種は会社という現場に来ようが、家でも出来る、他の場所に行くことは滅多にない。

まして、旅行すらあまり出ない自分に対し、そのような指示が出るとは思いもしなかった。

とはいえ、上司も先方の申し出なので当人に確認してみる、と配慮をしてくれた。

苦手としている事を理解してくれる人間だから

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小説 やわらかい生き物1

小説 やわらかい生き物1

心の在処

[1]
クラゲには心臓がないらしい。
でも生きている。
フワフワしているようで、あれはキチンと決まった動きをしている。

それが「鼓動」と同じになる。
クラゲには脳がないから目的もなく生きてるのか? 
 ちょっといいな、と、僕は思い、見つめていた、真っ直ぐな水槽を。

単純な造りをしている生き物には、余計なものがない。
生きることだけを、そして命を繋げていくことを、生まれて死ぬまで繰り

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