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ADWAYSデザイナーがデザインカンファレンスに参加して考えたこと

こんにちは!ADWAYS(アドウェイズ)のホリケです。
私は先日、渋谷ヒカリエで開催された「Designship -広がりすぎたデザインを接続する 年に一度のデザインカンファレンス-」に行ってきました。

「広がりすぎたデザインを接続する」という今年のテーマについて、公式Webサイトには以下のようなメッセージが掲げられていました。

産業革命によって誕生した「デザイン」は、
現代にいたるまでその意味と対象を広げ続けてきました。

いまやデザイナーがすべてのデザインを司るのは実質不可能。我々は数多ある星の中から星座を見出すがごとく、
氾濫したデザインに意味づけをおこなう必要があります。

Designshipはデザインが広がりすぎたそんな時代の中で、
デザイナーひとりひとりの物語に沿って、
デザイン同士を接続する機会を提供します。

最前線のデザインを学び、第一線のデザイナーと語り合う、年に一度のデザインの祭典をお楽しみください。


最近では、印刷物や画面やプロダクトだけでなく、キャリアや組織までが「デザイン」の対象になっており、本屋に行けば「デザイン思考」という言葉がクリエイティブコーナーだけではなくビジネス書コーナーにまで侵食していますよね。
周りから「お仕事何してるの?」と聞かれた時、「デザイナーだよ」と答えている私ではありますが、今はもうなんだか「デザイナー/デザイン」の意味合いが広く多様になっていて、言葉一つで自分がやっていることを正確に表現しきれていないと感じていました。
RPGのようにジョブアイコンがあったとして、自分に「DESIGNER」のアイコンをつけて良いものか、というような感覚です。
(デザイナーという言葉を聞いて「服作ってるの?」という反応をされがちなのもあります)

デザインが好き!でデザイナーになった私ですが、入社歴3年目になり、ちょっとだけデザインのことがわかってきたところで、好き!と言い切るにはデザインのことを本当に全然知らないなという自分の浅薄さと、対照的に奥深いデザインの世界(深淵)に足がすくむような思いで日々働いていたところでした。ダニング・グルーガー効果の曲線を地で行っていたわけですね。
なので、こちらのイベントにお誘いいただいた際には運命かも!と思って即参加を決めました。

こちらのnoteでは、Design Shipにて行われた、グラフィック・プロダクト・インタラクション・システム等々、各業界の第一線で活躍されるデザイナーの皆さんのセッション内容を引用しながら、考えたことをまとめていければと思います。




セッション①デザインマネジメントの実践


一つ目に拝聴したセッションのテーマは「デザインマネジメントの実践」。デザイナーでありながらマネジメント層として組織作りをされている4名の方による、デザインマネジメントの現状・課題や、ビジネスの中心にデザインを据えるためのアプローチ法などについてのお話でした。

【登壇者】

エムスリー株式会社 CDO / プロダクトデザイナー
古結 隆介さん

株式会社LayerX Design Manager / Product Designer
野﨑 駿さん

Visionalグループ 株式会社ビズリーチ CDO
田中 裕一さん

株式会社ルート CEO
西村 和則さん

前半では「マネージャーになるという選択について」という部分から話が展開していきます。
初めからマネージャーになることを目指していたという方は少なく、プロダクト作りの延長線上でチームリーダーからマネージャーになった方や、会社にとっての最適解を考えた際に手段としてマネージャーになったという方が多かったように思います。

心に残っているのが、株式会社LayerXの野﨑さんのお話です。
「自分がデザイナーになった際の原体験を思い出していた。
いいものを作ってユーザーに喜んでもらえればなんでも良くて、そのゴールに最速で辿り着く方法を考えた時に、自分が採用をしたりマネジメントをしたりすることで組織を作っていく方が良いと思った」と仰っていました。
原点に立ち返り、自分が目指すゴールを洗い直す作業を行ったことで「マネージャーになる」という選択をしたというのが非常に本質的だと感じました。

他の方が別の場面で仰っていたのは、クリエイティブ業界は「制作の現場から距離を取ることになるため、マネージャーになるのに抵抗がある」という方が多い業界だということです。私もその気持ちはわかります。
その中でも、結果を出すために制作の第一線ではなく現場の土台作りに回ることにしたというところで、ハッとさせられました。これは「自分一人がクリエイターとして150%の成長をするよりも、チームメンバーが全員110%ずつ成長したほうが組織としては伸びる」というような、全体最適を考える俯瞰力がないとできない選択なのではないか……。すごい。
日々、自分一人を前進させることで精いっぱいの私としては、もっともっと高い視点からのお話を伺うことができて大変勉強になりました。

後半では、「ビジネスに寄与するマネジメントのあり方について」というテーマです。
わかりやすく目標数値を掲げて売上を作っている事業側に対して、クリエイター側やデザインはどう貢献しているのか?また、意識のすり合わせをどのように行っていけばいいのか?というお話でした。

その中で、エムスリー株式会社の古結さんが「デザイナーがいないとプロダクトサービスはユーザーに届かない」という発言をされる場面がありました。社会において見るもの触れるもの、全てデザイナーが居てこそだ、というお話です。
そう考えると、事業目標の達成に対してデザインが貢献できる部分はどこなのか?というのがとてもイメージしやすいな、と感じました。
サービスとユーザーのタッチポイント的な役割をするのがデザインなのであれば、共感してもらえるようなストーリーや、「このサービスを選ぶ理由の一つ」になるような心地よさなどをデザインによって届けることができれば、自ずとビジネスにおけるデザインの存在意義が明確になってきそうです。

その後、一人一人のクリエイターが会社が目指す世界を作るためのどこの部分を今手掛けているのかという意識を持って働くのに大きな意味がある……という話題が出て、このセッションは終了しました。
月曜日から金曜日まで、あてがわれる自分のタスクを細切れに消化する毎日〜という感覚で働くのと、自分のこの仕事が何に繋がっていて、それが会社にとってどのような意味を持ち、どうやって社会を変えていくのかというところまで想像しながら働くのでは、面白さが全然違ってきそうですよね。

デザイン組織のマネジメントを一言で表すのは難しいのですが、そういった一つ一つのクリエイティブの意味づけを丁寧に行い、皆のモチベーションの源泉を、目の前の小さな仕事に対するものから大きく社会を動かすことへとフォーカスしていくお手伝いをする、ということだと思いました。改めて自分の未熟さを痛感しました。

ペーペーのデザイナーがいきなりマネジメント思考について触れたので、ここの時点ですでに頭がパンパンに膨らんでいて、熱が出そうでした。
立ち見の列が5重くらいになっている会場の熱気もとんでもないもので、就活の時に行った企業合同説明会でもぶっ倒れそうになったことを思い出しながら「運動靴で来れば良かった」ということを考えていました。



セッション②新規事業・サービスの構想におけるデザイン


二つ目に拝聴したセッションのテーマは「新規事業・サービスの構想におけるデザイン」。事業立ち上げのシーンにおいてデザイナーがどのような役割を担えるかについて、実務経験なども交えながら4名のデザイナーさんが語ってくださいました。

【登壇者】

株式会社助太刀 開発グループ デザインチーム チームリーダー
杉山 弥優さん

株式会社電通デジタル サービスデザイナー
佐々木 星児さん

株式会社ビットキー プロダクトデザイナー
吉岡 陽香里さん

株式会社リブセンス
阿部 洋平さん

モデレーター:株式会社マネーフォワード プロダクトデザイナー
中根 なつはさん

まず、新規事業立ち上げにおけるデザイナーの役割についてです。
「デザイナーの役割は共通認識をとることです」と明言されていたのが、株式会社ビットキーの吉岡さんでした。

新規事業立ち上げにおいて、デザイナーやエンジニア、ビジネスサイドの方々etc……の間に、まだ共通言語もないような段階で、何をなんのために作るのかをデザインの力で翻訳するというのがデザイナーの役割だということ。また、作り上げることの先にある「どうやったらユーザーが使いやすいか」の議論を早く始めたい、と仰っていました。

確かに、デザイナーは何かを「可視化する」という大きな武器を持っているように思います。それがビジョンやミッション、あるいは具体的なプロダクトのイメージそのものだったりするのですが、全員が目指す方向を「それってこういうことじゃないですか?」と咀嚼してみんなが見えるようにするのがデザイナーの役割だと仰っており、とても納得感がありました。
まず一つ、メンバーの前にイメージが上がってくることで、それが最初から完成されていないものだったとしても「ここはちょっと違うかな」とか、「もう少しこうかも」という風にゴールとの差異が見えてくるはずです。
それにより、効率的に議論を進めることができ、時間を有意義に使うことができます。それこそがデザイナーがプロジェクトに参加する付加価値なのだと学びました。

後半は、「新規事業立ち上げの際にデザイナーとしての役割を果たすためにやっていること」について、皆さんで議論を深めていました。
一番心に残っているのは、株式会社電通デジタルの佐々木さんの「曖昧さを受け入れて、曖昧さを面白がる人が新規事業開発に向いてるのかなと思う」という言葉です。

生まれたての赤ちゃんのような状態の新規プロダクトやサービスを世の中に出せる状態に持っていくためには、ある種考えながら走ることが求められるのもわかるような気がします。「この部分はA」「これはB」と決め切らずに、「AかもしれないしBかもしれない、まだ答えは出ていないけど、どうなっても良いようにしつつ一旦進めてみますか!」と明るく言い放った方が良いシーンというのも発生しそうです。
そしてやってみた結果、Cがよかったね(笑)ということも、おそらく往々にしてあるのだと思います。そのライブ感を面白がれる存在というのが結構大事で、最終的にアウトプットを出すデザイナーが懐深くドンと構えることができるかどうか、が肝なんだろうな〜と……。

それでまたその「懐の深さ」みたいなものを作り出すためにこちらの手数も相当用意する必要がありそうで、現場全体をコントロールしながら物事を進めていくことができるデザイナーになるためには、もっと視野を広げないといけないのだ、と思いました。

ここで一旦休憩を挟みました。
改めて会場を見渡してみると、クリエイターの皆さんが集まっているからなのか、会場全体に「イケてる」空気感があって若干気圧され気味でした。
「それじゃドライブできないから…」とか「スペシャリストの脳みそにダイブする」とか、飛び交うワードもカッコ良い感じで、ただただ圧倒されながら一息つきました。


セッション③ブランド構築におけるデザインの力


最後に拝聴したのは、「ブランド構築におけるデザインの力について」のセッションです。ユーザーや顧客と絆を築くために大きな役割を果たすデザインのアイデアについて、社内で統括をされているような立場の方々によるセッションが行われました。

株式会社マネーフォワード 執行役員 CDO
伊藤 セルジオ 大輔さん

株式会社ウエディングパーク ブランドクリエイティブ本部 本部長
菊地 亜希さん

株式会社ゆめみ CCO / デザインストラテジスト
栄前田 勝太郎さん

モデレーター:株式会社MIMIGURI プロダクトデザイナー / CULTIBASE Lab事業長
田島 佳穂さん

前半は「らしさの言語化」についてです。

その会社らしさ、その会社が作るプロダクトらしさ、というのを定義しつつも言葉を増やしすぎず、それよりも理念やビジョンを起点にした会社のカルチャーを大事にすることが重要だとお話しされていたのが、株式会社ウエディングパークの菊地さんでした。
「人によって捉え方が違うから、言葉があるだけでは浸透しない部分があるため、理念・ビジョン・行動規範(Truth)を体感する取り組みを行うようにしています」とのことでした。

毎月の締め会でTruthを体現した方の表彰を行ったり、評価制度に組み込んだりするのはもちろん、社内にカルチャーを広めるための推進室があり、カルチャーデザイナーまでいらっしゃるそうで、その徹底っぷりに驚きました。
社内クリエイターの表現の幅を狭めてしまわないよう、ブランドガイドラインも必要最低限のものにしているというお話もありました。

カルチャー作りを大切にしているからこそ、最低限のガイドラインを敷くだけでも個々のアウトプットに大きな逸脱がないのだそうです。規則や規定を作って上から押さえつけるのではなく、土壌作りに力を入れてみんなが自然と同じ方を向けるようにしていくブランドマネジメント法が印象的でした。

一方でゆめみの勝太郎さんは、「デザイン」という言葉の意味が人によって違うことに着目し、「みんなにとってのデザインって何?」という問いに対して言語化をやめ、絵を描いたというエピソードを紹介されていました。
これまでにやってきたデザイン、自分の中にあるデザインを絵にして、お互いに見せ合いながら会話をする。みんなが「デザイン」を囲んで話をしていくプロセス自体に意味がある、というお話でした。

個人的には、「言葉って不便だなと思う」というワードが忘れられません。
確かに、言葉にするとまとまりすぎてしまう感があるような……いろんなニュアンスや気持ちの平均値、あるいはベン図の重なりの部分を抽出したようになってしまいがちだなと思います。
だからこそ私は、非言語分野であり、国・年齢・時を超えていけるデザイン表現に魅力を感じているのですが、あえて言語化せずに表現し合うというワークは、そういったデザイナーたちのインサイトにものすごく寄り添える施策なのではないか、と思って鳥肌が立ちました。

フルリモートの会社というカルチャーを作りづらい環境下においては、「これが私たちのカルチャーだよね!」と規定をするのではなく、今の自分たちの状態を認めてその中から「らしさ」を見出していくと良いというお話もあり、自分らしさってなんだ!?とジタバタして、一生モラトリアム状態であった私に非常に沁みました。定義するものではない、そこにあるものなのだ!!


後半は、外に向けてにじみ出る「らしさ」のマネジメントについての話題です。
数多あるアウトプットの全てをチェックするのは難しい状況の中、どう「らしさ」をコントロールしていくのか?という問いに対し、株式会社マネーフォワードの伊藤さんが「マーケターの方とデザイナーの間ですれ違ってしまいそうな時の伴走のコツ」についてお答えされていました。

例えば、マーケターの方は奇抜なクリエイティブを出して効果をあげたい。
一方で、デザイナーは「それってうちらしくないよね」というところで合意形成が難しい。そういった場面において、双方にとって見ている時間軸が違うことを念頭に置いてコミュニケーションをとるのが大切だと仰っていました。
「パッと目を引く奇抜なクリエイティブは、確かに初速はいいけれども『自分たちらしさ』というのは貯まらない。でも、らしさが貯まっていくと、初速は遅くとも確実に指名購買が増えていき、ファンがつく。そういった長期の時間軸にアプローチしたコミュニケーションを取るのがコツです」

「今・ここで」目にみえる効果ではなくて、未来の姿をビジョンとしてイメージさせられるかどうかというのも一つデザイナーの手腕であり、ブランド全体をうまくハンドリングする力に繋がっていくのだろうなと思いました。
目の前の利益や保身に走ってしまわずに、長期的な目線を持てるか?という視点もそうですが、同じ目線を仕事相手と共有できるか?という視点を持つことが重要だと感じました。

自分たちが目指すところに近づく手段として何がベストかという本質を見失わないように場を作っていきながら、メンバーみんなの視座を揃えるという点で、マネジメントとも共通する部分がありそうですね。
デザイナーとして、誰よりもブランドに対して誠実であることの重要性と難しさを学んだ会でした。

3つのデザインカンファレンスを視聴して、この日は終了となりました。
そのあとは各企業のブースにお邪魔したり、人生で初めて(!)名刺交換をしたりと濃い時間を過ごしました。



今回は、Design Shipに参加して考えたことを、パネリストの方々の言葉を引用しながらまとめさせていただきました。
ハッとするような発見や、自分を見つめ直す反省もあり、たった1日とは思えないほどの膨大な情報を浴びて、デザイナーとして一旦フリーズしたのちに再起動するような体験でした。

どのデザイナーさんも、何が本質なのか?を大切にしながら課題を解決するための最適解を出すことを重要視している点が共通しており、「アートは問であり、デザインは解である」という有名な一文を思い出しました。
「デザイン」という言葉の意味がどんどん多様化して、デザイナーが活躍する分野が多岐に渡っていても、根っこは変わらないのかもしれませんね。

「広がりすぎたデザインを接続する」というテーマの通り、とっ散らかっていたデザインへの印象に対して一本の軸ができた……というのは少し大袈裟かもしれませんが、「自分たちは何を目指して何を作っているんだっけ?」という部分を問い直す姿勢を持ち続けながらデザイナーを続けていくイメージが少しだけつきました。自分にとって大きな収穫だったように思います。

あとは、一周回ってとんでもなくシンプルな感想になってしまうのですが(言葉って不自由だ)、デザイナーってめちゃくちゃ面白い職業だなと改めて思いました。自分たちデザイナーの手で、一個ずつ世の中をより良く、より面白くしていけそうだ〜!というみんなのワクワクと、大きく渦巻く熱気が最高でした。

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