Von voyage ! 主人公は自分自身
2019年夏に47歳の若さで亡くなった瀧本哲史さん。
瀧本さんが「2012年6月30日」に東大で行った伝説の講義を全文掲載した「2020年6月30日にまたここで会おう」(星海社新書)を、僕は2020年の6月29日に本屋で見つけて購入しました。
瀧本哲史さんのこと、知るのがあまりにも遅すぎた。そういえば確か去年、瀧本さんとかいう人が若いのに亡くなった⋯みたいなニュースを見たなぁという記憶はあったけれど。本当にそれくらい。
正直ぶっ飛んだ。自分が求めていた声というか、背中を押してくれる強烈な言葉の連続で、僕の中のギアがさらに限界マックスまで高まった気分でいるのです。
8年前の6月30日に「29歳まで限定」で行われたこの講義の中で、瀧本さんは、次代を変え得る若者達に向けて強烈なメッセージを投げかけている。
主人公は自分自身。誰かの正解に頼るな、と。
僕は40代だけれど、まだまだ若いと勝手に思ってる。精神年齢も相当に幼いし。だからまだ間に合う(はず)
この本を一気に読んで、胸をぐしゃぐしゃに揺さぶられました。それ以上の言葉が出てこない、自分の語彙力のなさが恨めしい。
最初から最後まで永久保存版くらいの言葉が続くのだが、僕がいくら説明しても陳腐なものになるしおそらく何も伝わらないと思うので、この講義の中で「ぐしゃっ!」と心臓を掴まれたいくつかの言葉を、ここに記しておきます。
「誰かすごい人が全てを決めてくれればうまくいく」という考えはたぶん嘘で、「皆が自分で考え自分で決めていく世界」をつくっていくのが、国家の本来の姿なんじゃないか
自ら明かりを燈せ。つまり、他の誰かがつけてくれた明かりに従って進むのではなく、自らが明かりになれ。
ジョージ・ソロスが私財をはたいてコピー機をばらまいた瞬間から、いろんな活動家が自分のビラをバラまくようになって民主化運動が盛り上がっていき、その結果、母国のハンガリーだけでなく、ポーランドとかチェコスロバキアとかの東欧の国々がソ連から独立するのに成功した。
意見をバラまくことには世の中を変える力がある。何かすごいリーダーをひとりぶち上げるより、世の中を変えそうな人をたくさんつくって、誰がうまくいくかわからないけれども、そういう人たちに武器を与え、支援するような活動をしたほうが、実際に世の中を変えられる可能性は高いんじゃないか。
武器としての教養を。
現代社会では、しっかり自分の頭で考えられない人間は「コモディティ(替えの効く人材)」として買い叩かれるだけ。
コモディティになるな。
正解に頼るな。カリスマやバイブルに頼るな。
うんちくや知識をひけらかすために教養があるのではありません。自分自身を拠り所とするためにも、真に学ぶ必要がある。
「言葉」によって正しい認識にいたり、「言葉」を磨くことでその確度を上げていく。そして「言葉」を使って相手の行動を変えていくことで仲間を増やし、世の中のルールや空気を変えていくことが可能なんです。
誰が中心かも、誰が何をしているかも、誰がメンバーかもよくわからないんだけど、何かがそのグループの周辺で確実に起きている⋯そんなゆるやかでしたたかな組織が、僕は良いと思っています。
僕はそれを「見えない結社」と呼んでいます。
いろんな人がちょこっとずつ、あちこちで変化を起こすと、いつの間にか世の中が大きく変わるということです。
いい波に乗るためには、波が来るのを見てから走り出しては遅い。波が来てなくてもずっと海辺に立っていなきゃいけなくて、その間ずっと、他の人から見たら「頭がおかしい人」である必要がある。あなた、そうなれますか?
「その人にしかないユニークさ(個性)」というのが、いちばん盗めない。
「自分しか知らない知識」っていうのもバックグラウンドの一部ですし、組み合わせていくことで大きな価値を生むんです。だからですね、本に書いてあることって誰でも1000円ちょっとさえ出せば買えますから、実はあまり価値がないんですよ。
本にならないようなニッチな情報のほうが価値があるし、自分しかしてない経験とかのほうが遥かに価値があるんです。
そういう視点で、自分には何があるか、自分の周りには誰がいるか、見渡してみてはいかがでしょうか。
そして
この講義の最後、瀧本さんから放たれた強烈なメッセージも、ここにすべて掲載しておきます。
船員になるか、船長であるか。ボンボヤージュ!とは、自立した人間たちの挨拶
はい、では最後、挨拶なんですけど、みなさん、スクリーンに書いてある「ボン・ボヤージュ(bon voyage)って言葉を聞いたことがあるかと思いますが、僕はこの挨拶がけっこう好きなんですね。
これはフランス語で「よき航海をゆけ」という意味で、見送りの際なんかに交わされるんですけど、もともとは船長同士の挨拶になります。
自分の船を持っている船長っていうのは、リスクを自ら取っている人で、意思決定者なんです。航海において意思決定をする立場にない船員は、「ボン・ボヤージュ」って挨拶はしないんですね。
で、航海中に船がすれ違って船長同士で挨拶をするときは、「あっ、あの船はあちこちネズミに食われてるなー」とか、「そっちへいくと嵐になるんじゃない?」とかってお互いに思っていても、そういうことは絶対に言わないんですよ。
「俺たちはお互いに自分の判断でリスクを取っている」ということに対する敬意があるから、余計なことは言わずに、ただ「よき航海を」なんです。
そういう、自立した人間たちの挨拶 だってことを覚えておいてほしくてですね、今日この場が何かのきっかけとなって変わる人もいるし、変わらない人もいるでしょう。それはわからないですけど、この中から少しでも自分がやれることをやって、世の中を変えてくれる人がいたらいいかなと。
結局2時間以上も話してきましたけど、「君はどうするの?」って話です。主人公は誰か他の人なんかじゃなくてあなた自身なんだよ、って話です。
以上です。あとは読んだみなさんがそれぞれ、自分自身の心に刺さる、揺さぶられ、魂に響く言葉を見つけてほしいです。きっともっとたくさん見つかるはず。
でもこの本で瀧本さんに影響され、心酔し「瀧本さんの言う通りだ!」と言うだけでは何も変わらないし、瀧本さんの話を何もわかっていないのと同じなんですよね。瀧本さんが言う、偉い人の言うことだけを信用する「人のふりした猿」と同じだし「替えが効くコモディティ」そのものになってしまう。
だから結局は「自分がどうするか、これからどう行動していくか」ということに尽きる。
瀧本さんの言う通り「主人公は自分自身」で、何かを変えようと思うなら、まずは自分が動くしかないのだから。
2012年6月30日、講義の最後に瀧本さんは参加者に「ある宿題」を出した。その答え合わせの日として「再集結しよう」と話した8年後の「2020年6月30日」はもう過ぎてしまったけれど、その宿題はまだこれから、そして誰もが、いくらでも続けられる。でも、、動き出すならなるべく早いほうがいい。
すべては自分次第だ。
自分が第二の人生を動き出したこのタイミングでこの本そして「瀧本哲史さん」に出会えたのも何かの縁だと思う。この縁は、自分の中で大事にしていきたい。
「2020年6月30日にまたここで会おう」の内容は、同著の特設noteにて、まさかの全文公開されています。太っ腹すぎる。。でも「武器としての教養をばらまく」という意味で、あえてそうしてくれたのかもしれないですね⋯!
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