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仕事だけをやっていればいい-「個の時代」に生きる個人事業主と、アドラーの言う「人生の課題」について考える-

インターネットの普及によって誰もが(タダで)情報を発信できるようになってから20年以上の月日が経った。いわゆるWeb 2.0の到来である。(今はWeb3などと呼ばれているようがだが、メタバースだとかブロックチェーンなどの話はとりあえずここでは置いておく)

ネットの普及は、個の力を増大させたとよく言われる。今や「個の時代」などと呼ばれ、組織などには属さずに個人事業主として生計を立てている人も少なくない。

彼らはよく、「好きなことをして食べていきたい」と言う。あるいは「組織のしがらみに縛られたくない」とも言う。最もなことだと思う。ネットの力をフルに活用すれば、今はそれが可能なのだ。


そんな個人事業主の人たちに当てはまると(私が)感じている特徴の一つに

独身の方がとても多い」というのがある。

あるいは結婚していたとしても子どもがいないとか。つまり家族をつくっていない人のほうが(圧倒的に)多いと思うのだ。(もし間違っていたらコメントください。少なくとも私の周りにいる人はほとんどがそうなので)

個人事業主の方は自分の好きなことで生計を立てていくために必死だ。それこそ一日中休みなく働いている人も(私の周りでは)少なくない。だから恋愛などにうつつを抜かしている時間はないのだろう。

彼らにとって結婚することは(夫婦生活に時間を取られるという意味では)リスクだし、子どもをつくることは(養育や教育に時間とお金を割かれるという意味では)大きなリスクとなるのだ。

だから結婚せず、結婚しても子どもを作らないことで、自分のこと(仕事)だけに集中できる時間を確保しようとするのは当然のことなのかもしれない。そう、彼らの多くがワーク・ホリックなのである。


アドラー心理学には、「人生の課題(ライフタスク)」という考え方がある。人生の課題とは、「仕事の課題」「交友の課題」「愛と結婚の課題」の3つである。(現代アドラー心理学ではこれにあと2つ加えることもあるが、アドラー本人が提唱したのはこの3つである)

「仕事の課題」「交友の課題」「愛と結婚の課題」はかたよりなく、バランスよくこなす必要があるとアドラーは言った。それらはどれか一つでも、おろそかにしていいものではないのだと。

いわゆる独身の、ワークホリック傾向の個人事業主が取り組んでいるのは主に「仕事の課題」だけだ。「交友の課題」でさえ、ビジネスの延長くらいに考えている人は少なくないかもしれない。


現代は、仕事で成功した人をやたらめったら褒めたたえる傾向があるが、アドラー心理学では、3つの課題のうち一つにしか取り組もうとしない人を神経症と呼ぶ。どんなにその人が成功していたとしても、ワークホリックはアドラー心理学的には良しとはされないのだ。

昔も(昭和の時代にも)ワークホリックの人は多かったように思う。昭和の猛烈サラリーマンとは、ワークホリックの男性に与えられた代名詞のようなものだ。しかし、昔の男性はみな結婚し、子どもをつくった。つまり最低限の「愛と結婚の課題」には取り組んでいたのである。


しかし、今は違う。結婚しない人が増えすぎた。結婚をしなくてはいけないという圧力もずいぶんと弱くなった。

「個の時代」はこれからもっと多くの個人事業主を生み出していくだろうし、仕事に夢中な彼らは、その多くが家族を作ろうとはしないだろう。

なぜなら、仕事だけをやっていればいいと思い込むからだ。「自分の価値を証明するのは仕事だ」という信念を、彼らはますます強めてしまうからだ。

このようにして、家族とか血縁という最小の共同体は衰退していくのだと私は思う。これからはそういう時代になっていくのだと。








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