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「"バカ"って言う方が"バカ"なんだよ」の論理的正しさとその教訓

1.はじめに

こんにちは。この記事を読もうと思ってくださったということは次のような言葉を今までの人生で一度は耳にした、もしくは当事者として言ったり、言われたりしたことがあるということでしょう。

「バカって言うほうがバカなんだよ」

「バカ」と言われた人が「バカ」と言い放った人へ言い返すお決まりのセリフです。もちろんそこへすかさず次の言葉、

「ならお前もバカになるじゃん」(以降無限ループ)

ここまでがセットの様式美であり、かくいう私も例に漏れず幼少期の頃言った覚えがあります。「バカと言う方がバカ」という言葉は、幼少期に周囲にいた大人が他人を理不尽に中傷した子供を諫める際に用いることで多くの人がその存在を認識するものだと思います。しかし大半の子供はすぐにこの言葉の矛盾に気が付き、陳腐な綺麗事として処理してしまいがちです。そしてそのまま大人になっても「バカ」という言葉を他人の中傷へ用いる方は結構な割合でいらっしゃるのではないでしょうか。というのも、インターネット・SNSにおいてこの言葉は私の認識する限りにおいては軽はずみに用いられているように見受けられるからです。しかしそのような方たちにも、そうでない方にも伝えたいのですが「バカという方がバカ」は実は論理的に正しいと言えます。

2.論理的考察

ここからは具体的に何を根拠として「バカという方がバカ」が正しいかということを説明していきます。

まず他人を中傷する意味での「バカ」という言葉の使われ方を考えた際、その性質を以下のように定義することとします。

[自分と対象を相対的に比較することによりその対象への優越性を認識し、ひいてはそれを周囲に誇示すること。またそれによって対象を貶すこと。]

つまり、中傷に用いる「バカ」という言葉は相対評価によって結論付けられたものだと言えます。これ対して「いや、ある程度線引きされる絶対評価のラインがある」という方は、そもそもその絶対評価を自分自身の考えを基準に行なっているはずなので必然的に論理的な欠陥があります。この時点でほぼ証明されたも同然ですが、もう少し理論に具体性とわかりやすさを加えるため解説を続けます。

上記のように、馬鹿という言葉にはまずなんら絶対的根拠はないのです。そんなことは当然理解した上で、相対評価という認識を持ちながら他人に対しバカと言い放つ方もたくさんいらっしゃるでしょう。しかし、ここに「バカ」という言葉が跳ね返ってくる仕組みのミソがあります。

相対評価での中傷的「バカ」は発言者が属するコミュニティや認識している空間においての相対評価となるので、まず自己評価が発言対象より上回っている必要があります。ここにまず発言者が「バカ」となってしまう一つの原因があります。それは自己の能力への過信と奢りです。たとえ構成員の少ないコミュニティであっても自分が日々生活していく中でのあらゆる人間関係の中では発言者自身を含めそれぞれが得手、不得手な具体的能力や抽象的考察力があり、一概にそれらをひっくるめて人間の優劣をつけることはほぼ不可能です。つまり、誤った見積もりにより自身を過大評価していると言えます。

そして上記の理論によりおのずと見えてくるのが、中傷的「バカ」の発言者はそもそも認識している世界が狭い、もしくは恣意的であれ無意識であれ発言の瞬間に限って極端に世界を矮小化しています。これは相対評価を行う範囲を拡大することで発言者ほとんどの確率で即刻バカへと降格する事実を分かってるので恣意的に無視しようとしているのです。これらを踏まえると、バカという言葉が相対評価である以上はそれを発言した瞬間から自分へ反射されてしまうと言えます。ですから、言われた方は自信を持って中傷してきた相手へ「バカという方がバカ」と言いましょう、とはなりません。当然ここには子供でも気づくような矛盾、つまり言葉通り自分に跳ね返りループしてしまう罠があります。そうならないためにも重要なのは、「バカという方がバカ」という言葉は自己を戒めるための言葉として心の内に秘めておくということです。ある意味この言葉が浮かんでいる時点で既に相手を心の中で「バカ」呼ばわりしてしまっているとも言えますが、さながらソクラテスの「無知の知」のようにそれを認識しているという点においてはなにも恥ずべきことではありません。

3.おわりに 〜言葉から得られる教訓〜

ここまで長々と自論を展開してきたわけですが、私自身「バカ」という言葉を言わないわけではありませんし、その全てを否定するものではありません。例えば人身攻撃ではない滑稽な事象に対する「バカ」(「馬鹿らしい」や「馬鹿馬鹿しい」)や最近では甚だしさを表現する「バカ」(馬鹿みたいに〜)などその他さまざまな「バカ」の使用方法があり、それらは一概に使用を禁止すべきものでもないかもしれません。またカジュアルな人間関係の戯れ的な意味での「バカ」は必ずしもネガティブな意味合いを含んでるいるとも言えません。

しかし、ついつい口が滑ってしばしば「バカ」という言葉を使っているうちに、無意識のうちに人身攻撃を孕んだ「バカ」を言い放っている可能性もあります。ネガティブな言葉というものはそれ自体に強い作用があり、その包括範囲もおのずと広くなっています。「バカ」に限らず、他者を乱暴に自分の尺度で評価したり、もしくは一般的に中傷的な意味合いで用いられる言葉を使う際には、口に出すまえにその言葉を省みて、細心の注意を払って使うべき言葉であるとこの記事を書きながら改めて考え直しました。



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