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【ADDress家守インタビュー】 他のだれかを自分のことのように思えるように「vol.03:習志野A邸 家守 江藤 元彦さん」

全国にあるADDressの家には、ADDressの会員と地域の人々やお店との交流の架け橋となる『家守(やもり)』がいます。ADDressの家での暮らしがより充実したものなるために必要な『家守』という存在。バラエティ豊かに集まった会員の方々はもちろんですが、家守にもまた、さまざまな職業や経験、ライフスタイル、想いなどを持ったユニークな人たちがいます。

このコーナーでは、全国に広がるADDressの『家守』にスポットを当てて紹介していきます。

(▼ 家守についての詳細は下記の記事をご覧ください。)
「家守」について
https://note.com/address/n/nad1650b67f87?creator_urlname=address

地域と会員を繋ぐコミュニティ・マネジャー、ADDressの”家守さん”のお話
https://note.com/address/n/ncd3c3649b7b2

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今回は、フルタイムの会社員として働きながらも、習志野A邸の家守として活躍されている、江藤 元彦さんにお話を伺いました。

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(写真:習志野A邸から徒歩2分ほどのところにある、誉田八幡神社の境内。)

ーーーADDressを知ったきっかけを教えてください。

会社の仕事がリサーチ系に変わって、「暮らす」ということに関する世の中の変化を見ていたことがきっかけでADDressを知りました。2019年4月頃だったんですが、その時には会員募集のクラウドファンディングが終了していて。そのあと、10月のADDress正式オープンのときに会員としてエントリーしたら、専用ドミトリの場所が長野県と聞いて。普段は東京に通勤する会社員なので、関東の家が空くまで待ちますと伝えたんですけど、同時に家守の募集があるのを知って、おもしろそうだなと思って応募しました。

それから1ヶ月ほどして、ADDressから連絡があって、すぐに面談がありました。僕はフルタイムで働いているので、もしかしたらダメかなと思ってたんですけど、お願いしますと連絡をもらって。候補に挙がった習志野邸が、当時住んでた会社の寮から自転車で10分の距離だったので見学に行って、すぐに「ぜひやらせてください!」と伝えました。それが12月半ばの話で、オープン前の12/29には移り住みました。

ーーー家守をやろうと思った決め手はどういった部分でしたか?

習志野のオープニングイベントの時にも少し話したんですが、去年から会社の転勤で東京に来て、業務がリサーチ系になったのでたくさん本を読むことになって。その中で『超孤独死社会』という大阪芸大の菅野久美子さんが書いた本があって、いわゆる特殊清掃、孤独死したあとの部屋をきれいにする仕事について書いている本で。その本を読んだ時に、自分には家族がいて、友達もいる中で、孤独死って想像がつかなかったんだけど、身近にそういう人たちがいるということが、自分が住んでる世界とは分断された何かがあると思って。この違和感はなんだろうってずっと思ってたんですよね。

そのあと読んだのが、『日本社会のしくみ』という社会学者の小熊英二さんが書いた本で、簡単に説明すると、「会社員のための厚生年金というしくみと、地方で家族で働く場合の国民年金があって、それは分断された社会の制度でつくられてたんだけど、結局”お金”の話になると、東京の大学に行って、大企業に入るという価値観がスタンダードな構造になっていて、教育も会社に入るための大学、偏差値のための勉強になっていて、それっておかしいよね。制度を変えなきゃいけないよね。」って話で。

それで僕は、日本の大きな仕組みは変わらないだろうなと思ったんですよね。例えば、アベノミクスも、結局東京の企業だけが儲かってるし、このままではだめだなと。ADDressはどちらかというと地方に魅力をつくることでがんばっていて、それはもちろん大切なんだけど、地方から東京に出てきて、家族から離れ、地元も離れ、会社に入っても非正規雇用だと会社のつながりもあまりないって人がいる中で、家族でも会社でも地元でもないコミュニティのようなものをつくらないといけないと思ったっていうのがありますね。それが課題意識のひとつかな。

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家族でもない他のだれかを家族や自分のことのように思える豊かさ

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(写真:習志野邸にはボードゲームがたくさんあります。初めましてのメンバーともあっという間に打ち解けて笑顔に。)

そう思うようになったきっかけは、大阪にいたときにシェアハウスに住んでいて、小さい子どもたちも一緒に住んでたんですよね。今でも仲良くしていて、前回大阪に行ったときも、初夢が僕と遊ぶ夢だったって言うんですよ。「まじかー!」ってうれしくなって。帰る時も、「え!もう帰るの!」って。それで、家族でもない他人を家族のように思えるってすごくいいことだなって思ったんですよね。自分の子どもじゃないのに、彼らには希望を抱いてるし、彼らが大人になったときにいい社会だったらいいなって、自分の子どもじゃなくても思う。一緒に保育園の生活発表会にも行ったんですけど、親がビデオを撮ってる間僕が1歳児を見ていて。そしたら僕の胸で寝たんですよ。家族でもなく、友達でもなく、お兄ちゃんでもなく、彼らにとって意味のわからない存在だと思うんですけど、僕はそういう他の人を家族や自分のことのように思えるって、豊かなことだなっていうのをそこで学びました。

ーーーそんな想いや背景があったんですね。そのことが習志野邸に住む人たちの距離感を生みだしている気がします。

うん、実はね!
そうかもしれないですね。

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習志野邸は0か1かでは証明できない部分をつくる実験場

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(写真:全国のADDress会員や家守とオンラインでつながる一場面。)

ーーー実際に習志野邸に人が住むようになって、どんな風に感じましたか?

こんな人もいるし、あんな人もいるし、それぞれが楽しくすごせたらいいかなって思っていて。家守として、なになにをしなきゃ!っていう感覚はあまりなくて、好きにしたらいいよって。
関わりたかったら来てくれたらいいし、無理に干渉するのは違うかなって思うんです。

「金曜ロードショー」のある金曜日にみんなで選んだ映画を見るっていうイベントを毎週習志野邸でやってるんですけど、感動のシーンのときに、一人がYouTubeを見ながらゲラゲラ笑ってたりしてても、一緒に映画を見ろとか思わない(笑)

ーーーいろんな人がいることがおもしろい。多様な価値観があるから、また楽しいんですよね。

いやほんとに。自分の生きてる世界とはまたちがうし。習志野邸でも、一人は海外で仕事をしてきて、海外移住したいって話してたり、一人は学校に入るために会社やめたけど学校行くのもやめたり、久米さんもライターをやって会社でも働いてたり。全然住んでる世界がちがうよねって。

ーーーADDressと関わってみて、以前から変わったことってありますか?

ゲストが来るっていう状況かな。
あと前は寮のキッチンが小さかったから、料理ができるようになったっていうところかな?ゴミ出しも普通にしてたし、掃除も可能な範囲でしてたし。

ーーー物理的なところなんですね!(笑)

でも課題意識はより強くなったというか…それができる実験場が持てたっていう。そう!「実験場」!ここは実験場だって思いますね。ここなら図書館を開放してもいいし、映画も見たい人は来たらいいし、寮だったらできないけど。一言でいうと実験場ですね。

習志野邸ではイベントをたくさん発信してるけど、普通の人が見たら、イベント乱発してるやんて思うんだけど、その本質は、だれかを自分のことのように思えるかとか、時間を共有することを豊かに思えるかっていうのをつくる実験かな。

金曜日にみんなで映画を見たあとに久米さん(この記事のインタビュアー)が「みんなで映画を見るってすごくいいね」って言ったそのことばが、僕はすごいあの日はよかったなって。

ーーーそんなこと言ってたのね私!

言ってましたよ(笑)
だって普通に効率的に考えたら、映画をだれかと見る必要ってないし、一人で好きなタイミングで自分が思ったことを思えばいいんだけど、みんなで見るってことが、証明できない豊かな時間というか。

ーーーそうですね、互いの反応が見えるしね。その場で感想を共有したり。

そうそう。
社会に出ると、自分のことを評価されるし、線引きされた0か1でしか見られないから。ここまで達したら合格とか、権利をここまでもらってる人が偉いとか、会社はそうじゃないと成り立たないから仕方ないんだけど、人間の心は0か1かじゃないからそっちの価値観で判断してたらおかしくなっちゃう。ゼロイチじゃないところをいかにつくるかっていう、ことなんですよ。証明できないことをいかにつくるか

例えば食事とかも、栄養的には完全食を食べてたらいいじゃないですか0か1かの世界だと。でもそこじゃなくて。料理する時に野菜の筋を見るとか、どんな人がその野菜を作ってるのかとか、効率とかお金とかでは簡単にはかれるものじゃないところをいかにつくるかという実験場ですね。

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さまざま価値観の人が交錯する中で、あえてルールをつくらない

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(写真:会員が気持ちよく過ごせるよう共有スペースの掃除を行ってくれているのも拠点の家守さんたち。日々も掃除も楽しみながら。)

だから習志野邸ではなるべくルールをつくらないようにしてて。ルールを作ったらゼロイチになるじゃないですか。ここまではセーフ、ここからはアウトっていう。それをやると、気持ちはあったけどそれができなかったってことがあるじゃないですか。例えば、すごく急いでて最後きれいに片づけられなかったとか。ルールをつくっちゃうと、汚いまま放置しておくつもりじゃなかったとしても、結果でアウトなんですよね。最低限のことはやった方がいいけど、その過程を見ないで、これは合格、これはだめって線引きすると、その人の心が見えなくなるから。実害がない限りは、習志野の家ではルールはつくらない方がいいなって思ってます。

ーーーこの間も、不便さやたいへんさを逆に楽しむって話をしてましたよね。

白か黒かじゃない部分を楽しむっていう。不便さとか、生活におけるノイズというか。

この間もトイレの鍵が閉まらなくなって、白黒でいうと「今すぐ鍵を直す」なんですけど、トイレの鍵が閉まらないと何が困るんだっけ?と考えたときに、だれかがトイレをしてるときに開けられたら困るなってなりますよね。その時、鍵を直すことがベストかもしれないけど、鍵以外の答えもあるじゃないですか。間違えて開けない工夫を何か別のことで考えるとか。それが自分の生活をつくる、アップデートしていくっていうことをひとつテーマとしておいておくと、効率的に一番楽な方法をやるってことはクリエイティブなのかなって疑問に思って。グレーをどうアップデートしていくかっていう。それが自分の生活をつくっていくっていう行為だし、暮らしをつくることが「生活」なんだって思うんですよね。それが、効率や0か1かしか求められない会社などに毎日行っていると麻痺しちゃうのかなって思うんですよね。

ーーー黙々と仕事をしていると、忙しさもあって、不便の豊かさみたいなものに気づくきっかけすらもなかったかもしれないって感じます。

でもそれってその人のせいじゃないんですよ。社会の構造のせい、仕組みのせいだから、その仕組みにどうノイズを入れるかとか、コミュニティーを入れていくかというところが、働いていることや暮らしていることを含めての、今の自分の課題意識であって、ここが実験場ですね。

ーーー会社で働く視点と、ADDressのように多様な人が集まる場所で暮らす視点、両方の視点が入るのは強みですね。両方の感覚がわかるというか。

僕は結構重要だと思います。極端にふれないと見えてこないんですよね。会社でサラリーマンをしてるのに、会社でも何してるのってよく言われて驚かれるんですよ。でもADDressの家守の中では、逆にフルタイムの会社員ってことに驚かれて。だから自分自身が白黒の真ん中にいるっていうことに気づく上で結構大事なことかもしれない。

ーーー真ん中にいると、当たり前って何かわからなくなりますよね。社会のフィルターがかかったりして。

うんうん、そうなんですよ。当たり前とかないんですよね。自分の軸しかないはずなのに、社会から与えられた尺度で当たり前がつくられちゃうから。

ーーーこうして言葉にするとわかりやすいし、実感しますね。ADDressで暮らす人たちもそうだけど、様々な価値観の人たちの中に自分がいるってことを。

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(写真:習志野邸のオープニングイベントで、帰属の概念を図解で説明する江藤さん。)

さっきのコミュニティの話もそうなんですが、「自分自身」が真ん中にいるとしますよね。その周りにあるのが「家族」というコミュニティ、学校や会社にあたる「社会」、それから「地域や地方」とのつながり、そして「地球」とのつながりまでいったときに、地方から出てきた人って、家族とも離れ、地域との繋がりもなくなり、会社があればいいけど非正規雇用が増えている現状があって、そうするとどこにつながりや帰属意識を求めればいいのっていう。「地球」まで考えられる人ってここが全部つながってる人なんですよね。満たされてないとそこまで視点が広がらないなって。そんな時に環境の話とかがきても、考えられないと思うんですよ。考えられてる人って、これらに納得して、それで自分がつくられてるっていうことがわかっていて。だから、環境のことを本気でやろうと思ったら、その人がそこで満たされている状態をまずつくらないとダメなんじゃないかなって思うんですよね。

ーーー確かにそうですね。それに、金銭的に満たされているだけでもダメだしね。ADDressで得られるものってその尺度ではないんですよね。このコミュニティに属していることが価値になってるというか。

そうそう。
普通に暮らしてたら会えなかった人たちに会えるのも「ノイズ」ですよね。効率的に生きていこうと思ったら、本当は必要ないかもしれないものなのに。

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いつ訪れても、ここには「人」がいるという価値

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(写真:江藤さんがDIYで製作した杉の一枚板のテーブル。在宅で仕事をする会員が増えたので、ソーシャルディスタンスを保ちながら快適に仕事ができるようにと作ったそう。縁側で夕涼みしながらの晩酌にもぴったり。)

ーーーお話を聞いていると、江藤さんは東京に住んでいるけど、地方から出てきた方の目線でも考えてますね。

地方から出てきたというか…都心部にいる、つながりの意識が持てない人のことを考えてるかな。

ーーー私もずっとフリーランスで、一人でこもって作業することが多かったので、一時期その状態になってましたね。

このままそれが増えてたらやばいと思うんですよ、みんな孤独で。人とつきあうのって、全然効率的じゃないし、人とわかり合うのってややこしいじゃないですか。だれとも付き合わない方が、お金も無駄に使わないかもだし、そうするとみんな独り身になる未来だってあるわけですよね。8050問題みたいに、社会がおかしなことになると思うんですよね。

ーーーその歪みが起きてるのは感じますね。

それを自分のできる範囲でやらなきゃなって思います。

ーーー最近コミュニティやシェアハウスが一気に広がったのも、そういう意識が知らず知らず働いたのもあるかもしれないですね。

ADDressが考える地方の創出とは少し違うところに課題意識があるかもしれないけれど、都会で働いているという使命もあるし、その問題に「気づいてしまった」っていう義務感というか、気づいたからにはやらなきゃなっていう使命感がありますね。

だから、僕が家守になった場所も「習志野」という場所だったのがよかったんです。勝手に人が集まる場所じゃないし、都心から通えるけど都内ほど便利じゃないし、ハード面もリノベしたおしゃれな家には勝てない。海岸まで目の前!とか、自然が豊か!とかでもないし、だからこそ、習志野では、0か1かの尺度じゃなくて、そうじゃない価値観で勝負だ!って思います。いい実験場所だなって。

ーーー家の近くの商店街でもお店の人と気軽に話せたり、ここは人との距離感が近いのを感じました。

そう、そういう部分がすごいいいんだよね。

ーーーこの空気感をつくるのはここの住人なのかもしれないですね。習志野邸のオープンイベントの日の夜にADDressスタッフが言ってたことばが印象的で。「習志野邸はいつ訪れても住人のだれかがいるってことがいいんだよね」って。人の気配が常に感じられるのがいい。

うん、習志野邸はハードじゃなくて、究極のソフトの部分で勝負ですから!(笑)

ーーーこのインタビューもソフトの部分、「人」にフォーカスしているので、この記事を読んで、江藤さんに会いたいなって人が習志野邸に来てくれたら本望だな。

全然、便利さで来てくれてもいいんですけどね!

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地域に開かれ、人が自然と集まる家をめざして

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(写真:習志野邸の近くにある「ゆうろーど」という商店街。昔ながらの個人商店もたくさんある。)

ーーー「習志野」というこの地域でこれからやっていきたいこと、関わっていきたいことは何かありますか?

一つは少しずつやり始めてる、「ゆうろーど」っていう、家の近くの商店街にある個人商店を取り上げて、「ゆうろーど五十三次」というものをつくりたいです。利便性を追求した、チェーン店ではなくて。これって、究極のソフトの部分だと思うんです。「人商売」っていう。

それと、習志野って結構農家さんが多くて、八百屋にも習志野産の野菜が結構置いてあるんです。やっぱり食べるものに関わるっていうのは、コミュニティの帰属で言うと、「地方」と「地球」に関わることになるからすごくいいなって。自分が食べるものがどうできてるか理解するって、いいですよね。栄養だけじゃなく、どういう人が作ってるとか、この野菜を食べるためにどれだけの労力とか、人が関わってできてるのかって。

あとは、家に遊びに来る人を増やしたいですね。地域から家に来る人が増えたらうれしいなって思います。習志野邸では、会員や地域の人が本を自由に持ち出していい図書館をやってるんですけど、それもそのためだし。

ーーー家でやってみたいイベントとかもありますか?

めっちゃありますよ!
オープンイベントでいっぱいみんなで挙げて、リビングにふせんで貼ってます。季節を感じるイベントはやりたいですね。夏にやりたいのは、竹を刈ってきて流しそうめんと花火とスイカ割り!原体験に戻るというか。と言いつつ、単純に楽しいからなんですが(笑)今、竹をどこから刈ってくるか考えてます。

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(写真:習志野邸オープンイベントにて、参加者みんなで考えた企画が書かれたふせんの数々。)

ーーー習志野邸に人が集う未来が見えますね。習志野、おもしろそうだなって。

うんうん。
それと、あとはコンポスト作りをしたいんです。生ゴミを出したくないっていうのがあって。これは人に押し付けるものじゃないんだけど、ゼロ・ウェイスト習志野を目指したい。でもちょっとまだハードルが高いんですけどね。自分もまだできてないから。

ーーー私も環境や自然にこだわっていた時期があるんですけど、仕事がめちゃくちゃ忙しくて心に余裕がなくなるとできなくなるんですよね…。食べ物を買ってきて、そのパッケージを捨てる時に、無駄なゴミを増やしてるなって、心がちょっと痛んだりして。

そう、そうなんです。心に余裕がないと忘れちゃう。だって環境問題に取り組むのって効率的ではないから。でも目指したいですね。千葉の房総家守会というのがあるんですけど、環境意識が強い方がとても多くて。まずは洗剤を環境にいいものに変えました。地球に関することをやりたいな。

ーーーいつからそういう意識になったんですか?

やらなきゃって思うようになったのは最近かもしれないです。
原体験でいうと、ずっと自然が好きで、父親にいろいろ連れてもらってたのがあるかな。あとは下の世代のことを考えたら。家族じゃないけど、これからを託したい子たちがいるから、そのことを考えたら、自分の生活の仕方で彼らの未来を奪うのは限りなく少なくしたいなって思いますね本当に。

ーーー人と社会が変わらないと、一人一人の小さな努力では変わらない部分もあるので、社会の意識が変わる大きな何かがないとというのは思いますね。

やりたいことで言えばそんなところかな。大きく言えば、地域の人が遊びに来ることと、季節を感じるイベント、それと地球を感じること。

ーーー今日はいろいろな想いを聞けて…江藤さんが習志野邸の家守さんでよかったなってあらためて思います。

ただの能天気だと思ってたでしょ(笑)ここまで愛嬌で生きてきたので。

結局行き着くのは、ゼロイチではない部分を豊かにしたい。だから「ゆうろーど五十三次」も絶対に味は評価しないって決めてるんですよ。味って食べログとかの評価でゼロイチをつくってしまってるから。そこじゃなくて。なぜこの人がこれを作ってるの?なぜ食を提供しようと思ったの?なぜこの店をやってるの?という部分なんですよね。住むのも同じで、なぜこんな風に暮らしたいの?って。

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63人の「人生で一番大切なもの」をインタビューしてみえたもの

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ーーー大切なのは「人」の部分ですね。人と言えば、ライフワークで人にフォーカスしたインタビューをしてるんですよね!最後にその話を少しだけ聞かせてください。なぜそれをやろうと思ったんですか?

「宝物と夢」に関する63名のインタビューが掲載された江藤さんが運営するサイト
Applumeria's
http://applumeria.me/pastnowfutures/

卒業論文がきかっけですね。心理学を学んでいて、どんなテーマにしようかなと思ってて。
その頃就職活動をしていて、同級生が「一番稼げるところに行きたい」とか「ホワイト企業にいきたい」って言ってるのを聞いて、めっちゃひっかかったんです。稼げたらいいのか…とか、ホワイト…?とか。それってもっと「自分のやりたいこと」をとか、そっちじゃないのって。周りの学生が、一流企業とかコンサル、商社にいきますって世界の中で、なんでそれに興味もってるんだろうって疑問があって。でも結局入社して3年で会社を辞める新入社員が多いってことも話題になるし、過労死とか自殺とかのニュースもあって、これってなんだろうな…って思ったときに、自分で決めていくというか、信じるものがしっかりあればそれってブレないよなって。私はこれを大切にしたい、夢にしたいって思ってるから、これをするんだっていう。お金を稼ぐことがやりたいことをやるための手段として一連の中にあればいいと思うんだけど、そこがごちゃまぜになってしまっているってことに気づいて。どうしたらそのことに気づけるんだろうって、文献を調べていたら「アイデンティティ」の話に行きついて。その人がその人であることがどうやってつくられるのかってことと、「夢」ってつながってるよなって。自分の経験や感じたことが影響してつくられていくはずだから、それと「夢」の関係性について調べようと思ったのがスタートです。

「自分の人生で一番大切なものを写真で撮ってきてください」ってお題で、周りの人にインタビューして、なぜそう思ったとか、いつ思ったとか、なぜ大切なのかとか、いろんなことを聞いた後に「自分の夢はなんですか?」、「その大切なものって自分にとってどういう存在なんですか」って。夢じたいが大切って人もいるし、モチベーションて話もあるし、一緒に寄り添ってくれる人たちのことっていうのもあるし。

そういうことをライフワークとしてやってますね。

ーーー卒論でやり始めたことが、いつしかライフワークになっていったんですね。素敵な試みですね。私も個人で仕事をしていると、夢を叶えるためっていう目的がある人もいるけれど、お金のためっていう人も多いことに気付きます。でもそれって、心が続かないんですよね。

それって、「think」と「act」、つまり「思い」と「行動」に齟齬が生まれると辛いんですよね。「think」ってお金を稼ぐことじゃなく本当は手段の話なのに、それを置いて行動するから、おかしくなっちゃうんですよね。

ーーーそこがずれると心に歪みができていきますね。ずっともやもやして。

うん、辛いんですよね。でもそれが「大切なもの」と紐つくと良くなるはずって信じてるから、今もやり続けてます。

ーーー自分自身への影響もありましたか?

そりゃあもう、ありまくりですよ。だって63人の人生で一番大切なものを聞いたので。でも一番影響あったのは家族かな。家族の話はほんと泣きますよ。僕らのことを育てていた裏に、ある意味、大切なそれらを犠牲にしてまでも僕らに投資してくれてたんだって。

相手のことを知ると言うか、相手になりきる感覚になりますね。

ーーー江藤さんが話していた、「他のだれかを自分のことのよう思える」っていうことばに通じますね。すごくいいなって。

それが豊かだとおもうんですよね。うまく口にできないけど、喜怒哀楽って人間らしい感情だし、それを相手にも投影できるって幸せだなって…うーん、これについては説明できるようになるにはもうちょっと時間が必要かもしれない。

ーーー習志野邸でこれからたくさん実験していけるといいですね!

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江藤さんのお話はいかがだったでしょうか?

日々の暮らしを楽しみむためのイベントやDIY、庭づくり、地域とのつながりなど、活動的に取り組む江藤さん。

「他のだれかを自分のことのよう思える」ということばがとても印象的で、インタビューを通して、江藤さんが「人」や「地域」、「地球」に対して大切にしている想いが伝わりました。それらが、今の習志野邸の住人たちの暮らしや住まいづくりに生きていて、これからがますます楽しみな習志野邸です。

江藤さんが習志野邸の住民たちと企画するイベントもたくさん開催されているので、ぜひ足を運んでみてくださいね!

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それでは、次回のエピソードもお楽しみに♪

取材・記事執筆・写真:久米 恵
江藤さんポートレート撮影:岡田 浩弥
イベント写真提供:ADDress


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