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2022年の経済と東京都内不動産市況の振り返り

今年も残り僅かとなりました。
この2022年は皆様にとってはどのような年となりましたでしょうか?

今年は、コロナに翻弄されながらロシアのウクライナ侵攻などもあり、歴史的な1年となりましたね。

ということで、本日は私なりに2022年を振り帰っていき、「経済」と「不動産市況」に焦点をあてて解説していきたいと思います。

2022年の日本経済市況

2022年の経済マーケットキーワードは以下2つになると思います。

  • 高インフレ

  • 急激な円安

高インフレ

2022年は世界中が歴史的な「高インフレ」に悩まされた1年でした。

12月現在の各国の消費者物価指数は前年対比ベースで

  • 米国:7.1%

  • 英国独国:10%

  • 日本:3.7%

の上昇となりました。

年明けからコロナ明けのサプライチェーンの問題などで消費者物価指数は上昇を続け、さらに2月末のロシアのウクライナ侵攻により物価暴騰が収まらず、約40年ぶりの水準となりました。

日本は他の先進国に比べ、「高インフレ」の影響は比較的大きくありませんでした。

しかし、他国と比べ給与水準が上がらない日本の低所得層としては、ジワリジワリとボディブローのように効いてきますね。

苦肉にも、外的要因により約9年かけてやっと2013年からの日銀の物価目標2%が達成されたわけですね(笑)

社会実情データ図録「主要国における消費者物価指数の動き」

急激な円安

さらに、この「高インフレ」退治の為に各国の中央銀行(日本を除く)は政策金利を一気に引き上げました。

そして、コロナ禍の2年間、欧米各国は「ゼロ金利政策」から大きく政策転換。

しかし、先進国のうち日本の日銀だけが「超低金利政策を断固維持」という姿勢を取り、ドル円ベースにおいてピーク時は151円、年初115円と比較してマイナス30%の円安水準にまでなりました。

現在では135円近辺でトレンドを維持しています。

この円安によって輸出産業においては過去最高益決算を発表する企業も多くありましたが、これは実体経済を反映していない可笑しな状態ですよね。

SBI証券「 マーケット > 指数・為替・金利 > 米ドル/円」

2022年の東京都内住宅不動産市況

住宅不動産のトレンド変化

東京都内の住宅市場においては、「価格上昇」「成約件数減少」という不思議な市場トレンドとなっています。

本来であれば需要と供給のバランスで決定される不動産価格ですが、コロナ禍の2年間は異常な住宅需要によって在庫が極端に不足し、その余韻がまだ抜けきっていないことからこのような状況が続いているのです。

2022年12月に発表されたレインズの月例速報によると、前年比において首都圏の中古マンション成約価格は31ヶ月連続で上昇、中古戸建成約価格は25ヶ月連続上昇という結果なっており、「売れないてないのに価格は上がっている」という摩訶不思議な市場となっていることが伺えます。

しかし、一方では中古マンション・中古戸建いずれも在庫件数は徐々に増えつつある状況です。

そして、新築マンションの成約率は好調と言われる70%を5ヶ月連続で下回り続けるなど、市況の高止まりが調整局面へと向かっているようなデータも見受けられます。

東日本不動産流通機構レインズ「令和4年11月度 月例速報マーケットウオッチ(サマリー)」
東日本不動産流通機構レインズ「令和4年11月度 月例速報マーケットウオッチ(サマリー)」
株式会社不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2022年9月」

建物建築費の上昇

ここ最近の住宅関係者の悩みがこの「建築費の高騰」です。

2021年以降から続いている「ウッドショック」の影響などにより2022年も建築費上昇が収まらず、むしろ前述した「急激な円安」の影響で輸入資材の調達価格がさらに上がったことで、建築費がもう一段階値上がりしました。

私達が取り扱っている一般的な工務店さんやハウスメーカーさんでも昨年比で坪あたり7万円以上は上がっている印象です。

100㎡(30坪)換算すると約200~300万円程度の値上がりになるので、非常に大きなインパクトですよね。

この「建築費の上昇」の影響は、低価格層のお客様ほどインパクトが大きいようです。

低グロスの建売住宅は値上がり分を売値価格に転嫁したことにより、売れ行きが悪くなっている話をよく聞くようになりました。

一般財団法人建築物価調査会「資材価格が歴史的な高騰、なお注目が必要」

住宅ローン金利は比較的安定だったが…?

1年前の米国住宅ローン金利は2%台。
2022年には急激に上昇し、30年住宅ローン金利は一時7%超となりました。
今では少し落ち着いたため6%台で推移しているようです。

この1年間で同じ物件を購入しても支払いが1.5倍となってしまい、米国では住宅の販売が40%程度減少しているようです。

さて、我が国である日本はどうでしょうか?

日本の住宅ローン金利においては、前述した日銀の「超低金利政策を断固維持」という方針が継続されていました。

そのため、長期金利の若干の上昇はありましたがフラット35の金利は2022年1月に1.30%、12月には1.65%となり、1年間で0.35%上昇した程度です。

また、変動金利においては上昇どころか4月以降に各記入機関の住宅ローン争奪戦が激化し、今では0.3%台で調達できるという住宅購入者には喜ばしい1年となりました。

フラット35「民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利等)」

しかし、2022年12月20日に日銀より、「長期金利の変動許容幅0.5%へ拡大」という方針決定が報道されました。

これまで安定的だった住宅ローン金利ですが、今後は日銀の大きな政策変更によって上昇局面に向かうことになるようです。

日本経済新聞「日銀が緩和縮小、長期金利の上限0.5%に 事実上の利上げ」

日銀は19~20日に開いた金融政策決定会合で、大規模緩和を修正する方針を決めた。従来0.25%程度としてきた長期金利の変動許容幅を0.5%に拡大する。20日から適用する。長期金利は足元で変動幅の上限近くで推移しており、事実上の利上げとなる。変動幅の拡大は21年3月に0.2%から0.25%に引き上げて以来となる。

黒田東彦総裁が20日午後に記者会見を開き、決定内容を説明する。

歴史的なインフレで海外の中央銀行が利上げに動くなか、日本の国債金利にも上昇圧力が強まっていた。日銀は金融政策で長期金利を人為的に押さえつけていたが、市場機能の低下が懸念されてきた。

日本経済新聞「日銀が緩和縮小、長期金利の上限0.5%に 事実上の利上げ」

2022年の総論

2022年は東京都心部の不動産マーケットしては、「潮目」となった1年です。

この2年半のコロナ特需ともいえる強烈な住宅需要は、この業界に25年在籍している私でも経験がないぐらい凄まじいものでした。

「飛ぶように売れる」「値上げしても売れる」というコロナ住宅バブルがそろそろ終焉を迎える最後の年になったのではないかと思っています。

肌感覚的には、この2年半で約35%は値上がりしたと感じています。
(エリアにもよりますが…)

流石にここまで高くなると、一般的には安易に購入検討できるレベルではありません。

一部のパワーカップルや富裕層、外国人投資家などだけが動かせるような違和感のある市場です。

個人的には、こうした市場はそろそろ調整されて欲しいというのが正直な気持ちです。

1年前には100%定価で売れた市場が2022年10月以降は…

  • 発表時定価売却20%

  • 発表から2か月以内定価売却20%

  • 発表から4か月後値引き販売50%

  • 値引きしてもなかなか売れない10%

という市場に変化しています。

実際に2022年12月は多くの建売業者さんからも「内々での値下げ調整」をいただき、驚くほどの低価格で成約させていただいたこともあります。

いつか「2022年は売り手市場から買い手市場への転換点となる潮目の年だった」と思い返す年となることでしょう。

次回はこの2022年の東京都内不動産トレンドを読み解き、2023年がどのような年になるのかを独断と偏見で解説していきたいと思います。

それでは皆様、良いお年をお過ごしくださいませ。

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