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韓国ドラマを見るための医学知識(6)~病気になるのはバランスがくずれるから? 「ホジュン~伝説の心医~」から~

いきなりタイトルで「バランス」という可視化、数値化できない言葉をつかいました。この「バランス」という単語や概念。伝統医学ではよく使われます。

現代でも、「バランスが重要」などと言われるように、「バランス」は重視されています。なんとなく理解しており、納得もしていると思います。
しかし「そのバランスってどういうバランスなのか」「それはバランスが取れているのか」など、疑問がわいたりします。
ちょうどいいところが分かりにくい。でも重要視されているもの。

誰でも病気にはなりたくありません。その病気にならないための伝統医学的考え方について、「陰陽」を交えて解説します。

物事を二分類した「陰陽論」

「ホジュン」第12話では、名医ユ・ウィテの子供であるドジが科挙試験を受けるために勉学に励む様子が描かれています。このシーンの中で、ユ・ウィテの友人である大師がドジに、科挙試験にでる内容について質問しています。その一つが「病気になる理由」でした。

この質問のメインテーマは「陰陽論」です。

陰陽論とは中国の哲学である二元論が元となっており、自然万物を大きく二分した考え方です。
陽は「日向」、陰は「日陰」と理解できるように、様々なものを陰と陽に当てはめた考え方となっています。

下記の表は陰陽分類の一部を記載したものです。

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【解説】
6列目       動くと熱く、静かにすれば涼しくなります。
5、7、12、13列目 太陽は上(天)にあります。また、東から登ります。
         太陽が沈む(降りる)のは西で、
         地にに沈むように見えます。
14列目      南は温かく、北は冷たい場所になります。
11列目      奇数は縁起の良い数字ととらえられていました。
         3月3日(上巳節)、5月5日(端午節)
         7月7日(七夕)、9月9日(重陽節)などがあります。
         縁起の良い(明るい)ため陽に配当されています。

陰陽はきれいに二分されています。この二分類、「対立」しているようにも見えます。
一方で、例えば「上があれば下がある」ように、相互に支えあっている(依存している)ようにも見えます。
また「上」と「下」のそれぞれの存在は、互いを「抑制(牽制)」しているようにも見えます。

この「対立」「依存」「抑制」、3つはさらに見方を変えると「均衡」する関係性であることがうかがえます。

二分だけでは説明しきれない「合間」

陰陽それぞれに配当された事項ですが、そのもの(点)で考えると二分されるように見えますが、それぞれの事項を時間軸などの「線」や「面」で考えると、必ずしも二分されるとは限らないことに気づくと思います。

たとえば「天」と「地」ですが、上の方にある「天」はどの段階から「地」になるのでしょうか。「明」と「暗」。どこまでが明るく、どこからが暗いといえるのでしょうか。その反対も然りです。

このように物事には完全に二分できないものが含まれています。

例えば陽が上るとき、暗闇の中から少しずつ陽が地平線に近づき、空が明るくなりかける。しかしまだ完全に明るいとは言えず、夜が少し残っているような状態があります。また、陽が上り、昼間に近づくと太陽の光は最高値となる。そこから、徐々に陽が西に傾き始め、薄暗さがだんだん濃くなっていく状態もあります。

完全二分の陰陽は、陰(50%)+陽(50%)=100%で表すことができます。しかし、太陽の動きに伴う明るさのように、陰(50%)の中に陽の部分が影響を与えている時間帯などが存在することがあります。
これをうまく表した図が太極図になります。
白い部分が「陽」、黒い部分が「陰」を表しています。

太極図

バランスが崩れると病気になる

さて、ドラマの中にあった「病気になるのはなぜか」について。ドジは「陰陽バランスが崩れるから」と答えています。

上記でも述べたように、陰陽のバランスが取れているとは、二分された物事それぞれが50%ずつ、合計100%で均衡を保っていることになります。
しかし実際には、数学的にきれいに行くはずはありません。

実際の生活でも同じことが言えます。
ストレスがかかったり、睡眠不足の状態が続いたまま仕事や余暇で動きまわったり、食事制限をしたり、これらは伝統医学的にバランスを崩すきっかけとなり、病気につながると考えています。

身体や健康に関することについても陰陽で分けられている項目があります。伝統医学では、このような日常生活や個々人の状況に応じて陰陽バランスが崩れた状態をなるべく均衡するように持っていく治療を行っています。
薬の力を借りたり、鍼灸などの治療を行ったりすることでそのバランスを個々人にとって良い状態に持っていく手助けを行っています。実際には個々人の体力や体質などを考慮しています。

なお、「ホジュン」では、第12話以降も陰陽論の描写が多くあります。それだけ陰陽バランスが重要だということが分かると思います。

【ちょっと補足】
第29話でハマンの妊娠が分かるシーンがありました。ク・イルソがユ・ウィテの弟子であるイム・オグンに胎児の性別を尋ねるシーンで、ハマンの振り返った方向で男女を判定する方法が描写されていました。性別と左右の陰陽は、「陽=男=左」「陰=女=右」です。

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