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INSPIRATIONS: 自然とデザインをつないで考えるためのヒント 2月

自然とデザインをつないで考えるためのヒントをピックアップする「NEWS PICKUP」改め「INSPIRATIONS」。新旧問わずに、デザイン、アート、ビジネス、環境活動、サイエンス等の領域を横断し、ACTANT FORESTメンバーそれぞれのリサーチに役立った、みなさんにお勧めしたい情報をご紹介します。

今回は、イギリスの都市栽培の事例や、エチオピア版鎮守の森である「チャーチフォレスト」、ランドスケープ研究の書籍などの情報をお伝えします。


01:都市の農園は元防空壕? ロンドンに広がる地下栽培

近年、ロンドンの地下空間を農園に変える動きが出てきている。郊外に比べて人口が多い都市部に毎日大量の食料を運ぶことは、より多くのフードマイレージと高い二酸化炭素排出につながる。地下空間を活用して都市の中心部で生鮮食品を生産することは、こういった課題の対処に役立つとされ、ロンドンの地下深さ33メートルには、第二次世界大戦時につくられた元防空壕を活用した広大な農園空間が広がっている。豆苗、バジル、コリアンダー、ピンク大根、サラダロケットなどのマイクロサラダを、LED照明を使って水耕法で栽培。収穫された野菜は、近隣のスーパーやレストランに出荷される。テクノロジーを活用した新しい地産地消のかたちが広がりつつある。


02:植物と接しながら暮らすこと。絵本『庭をつくろう!』

1989年に出版され絶版となっていたゲルダ・ミュラー作『ぼくの庭ができたよ』が、作者による改訂を経て復刊。庭付きの平家に引っ越してきたバンジャマンたち兄妹が、荒れ放題だった庭に手を入れ、草木を育て始める物語だ。草木や鳥たち、近隣住民との交流を通して、庭木の育て方を学ぶとともに、庭で過ごす喜びを享受する1年を描いた一冊。四季の変化を感じながら、庭を楽しんでいる様子がイラストとストーリーから生き生きと伝わってくる。庭づくりのちょっとした豆知識も得られる。植物と接しながら暮らすことってどういうことなんだろう。子どもはもちろん、大人にもおすすめの絵本。

03:エチオピアの教会が守ってきた鎮守の森

写真家のキエラン・ドッド氏の最新作は、エチオピアの教会が長年守ってきた「チャーチ・フォレスト」、いわば鎮守の森がテーマだ。急速に経済発展が進むエチオピアも環境問題が大きな課題となっており、過去100年で原生林の90%が失われたという。しかし、写真集に捉えられている教会を取り囲む森は、美しく生い茂っている。何世紀にも渡って保護されてきた原生林だ。写真家による、この教会の森についてのフォトエッセイは、「Nature」、「Geo France」、「National Geographic」などに掲載されたほか、ソニー・ワールド・フォトグラフィー・アワードのランドスケープ部門を受賞。WEBサイトでは、写真集から抜粋された各地の森の姿を見ることができる。

04:有機農業や自然環境をテーマにした映画祭

内外の一次産業に関する映画を上映する「国際有機農業映画祭」が2月18日からオンライン開催される。ドキュメンタリー映画「壊れゆく森から、持続する森へ」ほか、農薬禍に困惑するパリの穀倉地帯の農家に関する映画、昆虫ブームの裏事情をインドネシアの山間部に追った「貧困と昆虫」など、有機農業というテーマだけではない、自然と人との関係の在り方やそれを支える価値観、社会のつくり方といったところまで視野の広がるラインナップだ。


05:『Paradoxes of Green』 都市の「緑」を再考する 

ハーバード大学デザイン大学院准教授、ガレス・ドハーティによるランドスケープアーキテキチャとエコロジー研究の実践を探求した本書。「ランドスケープ・フィールドワーク」と呼ばれるエスノグラフィー手法を通じて、都市における自然と文化、社会規範の関係性を読み解く。その主な研究対象は砂漠地帯に位置する中東のバーレーン王国。同国の乾燥した都市環境における「緑(Green)」という色の発現は、環境保護の観点から見た「緑」の実践としばしば真っ向から対立しているという逆説(Paradox)にあるという。色彩のもつ文化的・社会的意味を読み解き、固定化された「緑=自然・環境」という概念を批判的に捉えて、都市における色彩の意味を再考することが、ランドスケープデザインにおいて重要な議論になると主張する。その独自のフィールドワークの実践と併せて、ドハーティ准教授による前著『Ecological Urbanism』も気になるところだ。


06:都市でミミズを育てる、英国発のワームファーミング運動

分解者として、土壌の物理的・化学的機能を高めてくれるミミズ。その生態を活かして都市で排出される生ゴミを有機肥料に転換しようと、国営宝くじからの支援を受けたノッティンガムのUrban Worm Community Interest Company(UWC)が、ミミズ100gを希望者1,000人に配布する活動を行っている。飼育箱はバケツなど身近なもので自作でき、食品廃棄物や紙などを投入してミミズを育てることで、温室効果ガスの削減や有機農業の促進に貢献することができる。家庭だけでなく、学校や刑務所などのコミュニティでも活用されており、ワームファーミング導入や教育のためのワークショップも用意されている。人口の84%が都市に住む英国で、誰もが自らの廃棄物に責任を持ち、より良い土づくりに携わることのできる活動だ。


07:空気中を漂うDNAから、生物多様性を観測する

生物の断片や排出物などから環境中に放出される遺伝物質「eDNA(環境DNA)」。主に水中での生物調査などに活用され研究が進んできたが、これまで採取が難しいとされてきた空気中からeDNAを集め、近隣のエリアに存在する動物や植物の多様性を解析しようとする実験が出てきている。カナダのヨーク大学とデンマークのコペンハーゲン大学ではそれぞれ動物を対象に、テキサス工科大学のでは植物を対象に、採取したeDNAを既知の種と照合した結果を発表。まだ本格的な普及には至っていないものの、これまで実地調査で見逃されてきた種の把握や、絶滅危惧種の保護、外来種の侵入対策など、生物多様性の新たなモニタリング手法として期待が寄せられている。


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