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「虐待」の連鎖、「愛着」の継承(第二期:第7回①)

 これまで触れてきた、実際に脳を傷つけ、精神の発達や成長を歪め、人を部分的に殺す虐待やマルトリートメントは(ハラスメントを含めても良いかもしれませんが)、「連鎖」してしまうところにその特徴的で特筆すべき困難さがあります。それが受け継がれてしまう仕組みに迫るのが今回の内容となります。

1.虐待を受けた子は将来、虐待することになるのか?

 被虐待児が将来、我が子を虐待するかは、1/3の確率との報告があります。この報告が的確であれば、希望と疑問が1つずつ生まれます。「その1/3に介入することで虐待を無くすことができるはずであるという希望」と「だとすれば、虐待は既になくなっているか、少なくとも減っているはずだ」という疑問です。

 それでも、厚労省による「児童相談所での児童虐待相談対応件数」(これを虐待数とすることが多い)から、虐待が増え続けていることを読み取ることができます。虐待についての世間の認識が広まり、相談件数が伸びているという説明もありますが、別のアプローチから考えれば増加する理由も分かります。

2.「愛着の型」から考える

 まず、虐待と関連する「愛着の型」から考えてみます。第3回で触れたとおり、愛着の型はまず「安定型」と「不安定型」に別れ、その不安定型は「回避型」、「混乱型」、「抵抗/両価型」とさらに分けられます。なお、不安定型は3割と言われており、まずこの数字が「約1/3」であることに気づきます。

 単純に考えて10人の人がいた場合に、7人が安定型で3人が不安定型と想定できるということですが、ここであくまで試算として、この10人それぞれが他の9人のうち誰かとの間に子どもを設け、その子どもたちがさらに孫を生むという想定をして「愛着の型」がどのように受け継がれていくかを考えてみます。

 精神科医の岡田尊司は、愛着の型が親から子へ引き継がれていくことから、愛着を「第二の遺伝子」と表現しました。これは、あくまでも「遺伝子のように」伝達するという意味ですが、その「遺伝のような伝達」を「遺伝のように考える」ならば、あくまでも試算として以下のような計算ができるはずです。

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3.「遺伝のような伝達」を「遺伝のように考える」

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