【イラスト+エッセイ】雨の日、突然殴られた思い出
自宅から高校まで自転車で行くと、行きは40分で行けて、帰りは1時間半かかる。
距離は約10kmだけど、自宅と高校の標高差が150mあるので、行きは下り坂で帰りは登り坂だ。
普段は列車で学校に通っているが、列車に遅れた時や、時間に余裕のある休日の部活動などは自転車で行くこともあった。
あの日の朝は晴れていたから自転車で部活に向かった。午後に練習が終わって帰る途中、雨が降ってきた。雨はすぐ土砂降りになった。傘は持っていないし雨宿りできるような場所もない。家はぽつぽつあるが、山沿いの田舎道だから、さっと飛び込めるコンビニのような店舗だってない。
もう家に帰るだけだし。濡れて困るものも持ってないし。
土砂降りの中の走行を楽しむことにした。
すぐやむかと思った雨だが、なかなかやむ様子がない。そのまま人通りのない道を走っていくと、前方に車が停まっているのが見えた。
車がすれ違うぐらいの道幅はあるが、スピードを下げて慎重に車をよけながら進む。
運転席には人が乗っているようだ。車のドアが急に開いたら危ない。なるべく車から離れて走った。
そのまま自転車を走らせていると、先ほど停車していた車が私を追い抜いて行った。私も「あ~、さっきの車だ~」……ぐらいは思ったかもしれない。でもあまり気にしなかった。
しばらく行くと、前方に「停車していて追い抜いたがまた追い抜いて行った車」がまたも停車していた。「何をやっているんだろう。運転手はやはり車に乗ったまま……」ちょっと不審に思えてきた。配達でもなさそうだし……
もう一度、同じように気をつけながら車を追い越した。
そして同じように、車は後ろからやってきて、私を追い抜いて行った。
「また停まってたらやだなあ、なんだか怖いなあ」と思いながら、ざあざあとやまない雨の降る中を自宅へと急いだ。
そして数キロ走って、あとちょっとで自宅につくというあたり。上り坂つづきの帰り道の中で、唯一の下り坂を下って、川を渡る橋に差し掛かったときである。もう予想できると思うが、同じ車が!もう一度!私の目の前に現れたのである!
しかも!追い抜こうとしたその時、中から女の人が飛び出してきて私の自転車の前に立ちはだかったのであるよ!
女性はとにかく何かを怒っているようで、私に向かって二言ほどすごい剣幕で怒鳴りつけてきた。
「!$$%#☆◎!! !P@%☆!?」
私はびっくりしたし、女性と車のドアにぶつからないようにハンドルを操作するのに精いっぱいで、何を言ってるのか聞き取れなかった……。とにかく叫びながら、彼女は自転車に乗って走行している私の腹を殴ってきたのである。
自転車に乗っていたのと速度が出ていたのが幸いして(?)パンチはたいしたダメージにならなかった。私はなんとかバランスをとって転ばないように自転車を走らせ続け、後ろを振り返りながらもとにかく逃げることにしたのである!
女性も車に乗り込み、私と同じ方向に走り出したが、私は車の入れない細い小道に入ってとにかく自転車を漕いだ。
「私、なにか悪いことしたかな? 車には邪魔にならないように走ってたつもりだったし……雨にずぶぬれだったから叱ってくれた……の……かな、イヤイヤ……飛び出して来たら危ないし殴るのはもっと危ないだろう……自転車が蹴り飛ばされてなくてよかった……
っていうかとにかく怖い怖い怖い!!!」
全速力で家に帰る。家に入るときも、近くにあの車がいないかどうかをさんざん確認してサッと入る……。
普段こういうことを親に話したりしない私。受けた暴力やいじめの話をしても、大体私が悪いことになって、怒られて終わるから。だけど、さすがに「怖かった!知らない人だった!被害にあった!」とびっくりしてしまい、母に今日の体験を伝えた。
「自転車乗ってたら、突然車から降りてきた女の人がおなかを殴ってきたんだけど……なんでだろう……」
「それはたぶん、その人はあなたの若いからだがうらやましかったのね。それで殴っちゃったんだと思う。許してあげなさいね。」
……!???
ああ~やっぱり、大したことのない話なんだ。たぶん私がなんかやらかしてたんだろう、あの人には悪いことをした。このことは忘れよう……
と、結局、その後その女性に再会したわけでもなく、親も特に問題だと思わなかったようなので、その件はそのまま。あれはなんだったのか。本当に何が原因だったのか。殴られるほどの何かが私にあったのか……今でも雨の日や、停止した車の隣を歩くときはあの日のことを思い出してしまうんだけど、
そうだ、きっとなんでもなかったのだ。
もやもやした話ですいません。
(ハッシュタグ企画「#雨の日」で思い出した昔話です。)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?