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越境テレワーカー

以前このnote 記事でも取り上げたEOR(employer of record)サービスを使用したテレワーカーについて、日経新聞でも取り上げられていました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC281230Y2A121C2000000/
 

「大企業は導入進まず」と言う点が気になります。理由はいくつかあるのでしょうが、私が考える理由は大きく2つあります。
一つは、会社の社風や風土に合わないこと。もう一つは、法律面でのリスクに対して保守的であることです。

会社の社風や風土について


コロナ禍が収束に向かう中、オフィス勤務に回帰する流れが増加しており、face-to-faceのコミニケーションを重要視する企業が多くなっています。そのような中、完全リモートを前提としたEORを使ったサービスは馴染まないのではないかと思われます。
また、日本人に独特のカルチャーの問題もあると思います。日本人は、世界でも特に非言語コミュニケーションを重視する文化があります。そのため、どうしてもチャットやメール等による文章でのコミュニケーションや、画像や音声だけのリモート会議が中心となる完全リモートでの勤務形態になじみにくいのではないかと思います。もちろん、日本人だけでなく、他の国の人々も完全リモートでの仕事に関しては、いろいろな問題があると感じているとは思いますが、1度も対面で会ったことのない人、しかも外国人とチームを組んで仕事をすると言うのは日本人にとってはかなりハードルが高いのでしょう。仕事の内容も日本語で行わなければならない仕事が多いと言う実情もあり、必然的に外国人が多くなる越境テレワーカーの活用には積極的に乗り込めないのでしょう。従いまして、仕事が完全に英語で行われるような環境であれば別ですが、あまり完全リモートのテレワーカーを外国で採用しようと言うインセンティブが働かないのだと思います。

法律面が未整備


法律面でのリスクについてですが、まず最初に気になるのは税です。越境テレワーカーのいる国に恒久的施設があるとみなされ、法人税を課されるリスクがないのかという問題があります。この点、EORサービスを使っているのだから、問題ないのだろうと安易に考えることができないようです。課税されるか否かは各国の税務当局の事実認定によるためです。そのため、企業によってはEORサービスを使うにしても人数に上限を設定したり、使用する国を限定したりしているようです。
また、労務管理や安全管理措置についてもどのように考えたらいいのかはっきりしないところがあります。業務の指揮命令は日本の法人から行っていることになるのでしょうか。その法人の従業員がほぼEORサービスを通じて雇った人間だった場合、指揮命令系統はどのように考えたらいいのかよくわかりません。また会社の在宅勤務規程等も変更する必要が出てくるでしょう。スタートアップ企業の間ではwork from home  ではなくwork from anywhereを前提とした就業規則の作り方なども議論されています。

このような事情から、越境テレワーカーについては、スタートアップでの利用が多いのが実状のようです。これからいろんな事例が出てきて、議論が深まれば面白いと思います。

それでは、また。

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