【小説】「共性する私たち」第4章
第4章享が乗って閉まったばかりのエレベータをうっかり開けてしまった千弥子は、たった数秒前の、慎重さを欠いた自分の行動を心底悔いた。
2人が働くオフィスは、25階建てのビルの10階にある。
ドアが閉まり、エレベーターの上昇とともに、後ろから、享の刺すような視線を感じたが、それは千弥子の思い込みかもしれなかった。3階…4階…5階…「早く着いて」とひたすら心の中で祈りながら、わずか10秒ほどの時間がその何倍にも感じられた。10階に着くなり千弥子は、まるで、まずくてこらえきれずに吐