東京なんて、人の住むところだよ。
地元を出たことがなく、東京にはちょっと旅行に来たことがあるくらいか、あるいはテレビでしか東京を見たことがないヤツが言うセリフあるあるだ。
中学時代にわりと仲良くしていた同級生に久々の電話でそう言われた。聞こえないふりをして、もうこちらからは連絡しなくなった。
だって、東京は、素晴らしい。
住まなければわかるまい。
上京したのは、25才のとき。
まず驚いたのは、賑わっている街が多いこと。
渋谷、新宿、池袋、銀座。代官山、自由が丘、吉祥寺。選択肢がありすぎるほどで、手に入らないものはない。若さゆえ、そのことに熱狂した。頑張って働こうと思えるエネルギーをもらうには十分すぎた。
あとは、人種の坩堝であること。バラエティ豊かで、日本各地の人たちと一堂に会せる。そして、「自分の常識は誰かの非常識」を痛感する。ことばの違い、文化の違いをそのうち楽しむようになる。
また、同郷の人と集まると、故郷の良さを改めて確認しつつ、東京で頑張ろうと士気を高め合うこともできる。
それに、みんな程よく無関心でドライなんだけど、親切な人が多い。心をすり減らしながら乗っていた満員電車だったが、妊娠中、何度電車で席を譲ってもらっただろう。お年寄りに席を譲る人も数えきれないくらい見た。地方出身者も、肩寄せ合って暮らしているから助け合いの心があるように思うし、東京が地元の人も、気持ちに余裕のある人が多いのだろうか?優しい人が多かった。
…たまに酔っ払いのケンカを見かけたりもしたけど。
「東京なんて人の住むところじゃない」というセリフ、一体どこから生まれたんだろう。
もしかしたら、上京してみたいけど、住める自信がなくて、諦めるためにつぶやいたセリフだったのでは。
合う、合わないはあるのかもしれないけど、上京するかしないかで悩んでいる人がいるのだとしたら、いや、絶対行って!と言いたい。
もし合わなかったとしても、東京の別の街もあるし、仕事の選択肢はありすぎるほどだし、上京してよかった、と言える経験を必ず自分にプレゼントできるはず、と確信している。
「東京こそ、人の住むところだよ」
連絡を取らなくなった旧友に、今なら面白おかしく言ってあげられるほど、私も成長したような気がする。
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