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#36 雪隠と留学 [第3部 スペイン編] ep.XX「まずくて最高のピザ」

 インスタグラム、十二月十二日の投稿。
「(前略)このピザ一番おいしくないけど一番好き。」

 十二月にもなればある程度マドリードでのお酒の飲み方にも慣れてきた。バスが二十四時間走っているおかげで何時でも帰れる。丑三つ時を過ぎると開いているお店はバルやチュロス屋、ケバブ屋以外はほとんど閉まってしまう。二十四時間営業のコンビニなど夢物語だ。

 チュロスやケバブ、そしてピザは飲酒後のいわゆる〆としてスペインやヨーロッパでは格式高い。札幌ではラーメンをすするが、マドリードではピザをよくかじった。

一切れ一ユーロで売っているお店がよくある。この頃よく一緒につるんでいたチェコ人がヴィーガンなので彼女の行く店にはヴィーガンメニューが豊富だ。

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 このピザもそのうちの一つで今までの人生で食べたピザの中でもとびきりまずい。とてもしらふでは食えた代物ではない。

生地がかなり粉っぽい。そのわりに上に載っている野菜からは水分がたっぷり出ているために表面は油と弾き合ってびちゃびちゃだ。健康志向のせいなのか味付けのためのソースの類はほとんど感じられない。

だがこれが一番好きなピザだ。

このピザに辿り着く思考が働いている時点で最早味覚など二の次なのだ。隣にいる友達と笑顔で話せているからこれでいいのだ。

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次回予告『雪隠と留学 [第3部 スペイン編] ep.XXI「英語の逆襲」』

現在、海外の大学院に通っています。是非、よろしくお願いします。