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森の中の子どもたち ~森や里山、海、公園など自然の中で保育をする「森のようちえん」。三重県菰野町の「森の風こども園」でその魅力を探った。

野外での自然体験を軸にした子育て・保育、乳児・幼少期教育を総称して「森のようちえん」と呼び、全国にそのネットワークが広がる。(エース2022年新春号「ある日、森のなか」より)

 「自然は忖度(そんたく)しないからいいんです」。そう話してくれたのは、三重県にある森の風こども園の嘉成頼子園長。園長は以前、四日市市内の幼稚園で園長を務めていたが、知識の切り売りのような教育ではいけないと、子どもたちを自然に委ねることを決心。園庭にあった遊具をなくして木を植え、小川を流した。「それまで外で遊びたくないと言っていた子も、年中外へ出て泥んこで遊ぶようになりました」と言う。
 その後、たまたま引っ越してきた菰野(こもの)町で今の園の前身となる「森の風ようちえん」をスタート。やぶだった森を保育者や子どもたちと切り開き、子どもが活動できる場所を作った。

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火遊び、泥んこ、野良仕事

 取材に訪れた11月上旬、年少と年中組は朝から森へ、年長組は悪天候のためずっと延期になっていた稲刈りの日だった。子どもたちは日中を主に野外で過ごす。行き先はその日によってさまざま。山、川、田んぼなど、園の周りにある自然が活動の場所となる。
「近所にある森も、子どもたちは“ウサギ森”や“へんてこ森公園”と呼んで、遊びに行っています。年長になると登山もします」と園長。
 森では、子どもたちが収穫したサツマイモを食べようと、燃料となる枝を拾い始めた。ワイワイと森で集めた枝を羽釜の下に置き、マッチで着火する。一度で点く子もいれば、何度擦ってもなかなか点かない子など、それぞれ。子どもと火。一見、危ないの一言で片づけてしまいそうなことも、ここではそうではない。保育者に見守られながら、子どもたちは慎重かつ確実に火を起こすことができた。

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 活動中、子どもたちは保育者の目の届く範囲で自由に動き回っている。カマキリを踏んづけちゃった!と教えてくれる子、松ぼっくりを並べておままごとをする子、木の実と毛糸で何かを作る子。
 「子どもが何度もやってみてできるようになっていく。そのときに、『あ、ぼくって・わたしっていいじゃん』って思えたらいいなと思うんです」と園長。いつも同じではない自然が相手だからこそ、工夫と発見の繰り返しで、やがて自分に自信を持つ子になっていく。
 森で遊び、生きる力を養う。自分が自然の一部であると想像できる。そんな確かな手応えがここにはあるようだ。

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写真=平山陽子





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