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古くて新しい大阪長屋の暮らし ~大正・昭和初期の長屋に住む城田さん一家を訪ねました。

「木や土壁、漆喰といった自然素材も残されていて、それらに触れられるのは、子どもを育てる上でもいいことだなと思います」と住人の城田さん。大正・昭和初期に建てられた長屋の魅力とは。(エース2021年秋号特集「すまいのかたち」より)

 大阪市内には広範囲にわたって戦前長屋が数多く残る。それらはかつて「長屋建築規則」など大阪特有の法制度の下に建てられたもの。近年、その長屋の活用が進んでいる。

「阿倍野区昭和町に残る昭和7(1932)年築の『寺西家阿倍野長屋』、2003年に長屋としては初の国の登録有形文化財に指定されました。昭和町は、大正末から昭和初期にかけて開発されたベッドタウンの先駆けともい
える地区。中産階級向けの上質な都市型住宅として、和風、洋風、和洋折衷など多様な長屋が大量につくられました」

 そう教えてくれたのは、昭和町の活性化のため長屋の活用にも力を入れる丸順不動産の小山隆輝さん。小山さんの案内で、城田さん一家が暮らす賃貸の長屋を訪ねた。城田さんは夫婦と小さな子どもの3人家族。以前はマンションに住んでいたという。
「長屋に興味はあったのですが、実際住むにはハードルが高いかもと思っていました。老朽化が激しい長屋などもありますから。でも小山さんに紹介いただいたこちらの家は、水回りが新しく改修されていて生活しやすそうだと感じられ、一目で気に入りました」と妻の奈緒子さん。

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 リノベーションによって現代風の住まいに大改装され本来の良さを残していない長屋も多い中、この一棟は家主の意向で、水回り以外は昔の趣そのままだ。自身も建築士である夫の研吾さんは「そこがすごく魅力的」と言う。
「木や土壁、漆喰といった自然素材も残されていて、それらに触れられるのは、子どもを育てる上でもいいことだなと思います」。奈緒子さんも「この家に合う暮らしをしたいと思うようになりました。プラスチックではなく籐の容器を選んだり、床の間などの、マンションにはない昔ならではの空間のゆとりに、花を飾ったりしています」。

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写真=高嶋克郎

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