添乗員のお気に入り(26)【10年前の日記】
2011年10月24日
ツアー3日目にスーツケースの鍵をなくしてしまった女性
すごく美しく年齢を重ねて76歳になった少女
今までたっくさん海外旅行してきて
『こんなヘマしたことないのよ!』
もう、海外旅行はこれが最後なのかな、、、、、
その肩が美しさと惨めさと悔しさを語っていて
大丈夫ですよ!絶対出てきますから!って言った。
9月1日に妹が結婚式を挙げた。
私よりあとに生まれた人間
何かにつけて私のほうが姉なんだからって思ってた
けどそうじゃないと気づいたのはわりと昔
妹を尊敬している
妹として生まれた人間じゃなくて
一人の立派な人間
式の最中に泣いている母の姿は少女に見えた
今年60になった少女
自分の人生をいつも振り返っている彼女は
もっと、楽な考え方ができないのかな
結婚して 子供生んで 育てて とうとう一人嫁いで
そこまで大変だっただろう とっても
自分 っていうのはみんな一人じゃないから
これも自分 あれも自分 ってある中で
今を迎えた彼女はたくさんの自分を犠牲にしたんだろう
もっと自分を満たしてあげたかったんだろう
いつも、こんなんじゃない って言ってて、
みていてつらい。
母の父が施設に入っていて
先日会いに行った
おじいちゃんはハッキリいってイケメンで
現役時代は都営線で働いていて
若いころの写真をみたときは 普通に惚れるなって思った。
あの時代で、あの顔はもてたのかな
おばあちゃんはどんなだったんだろう
もし おばあちゃんのほうが惚れこんでたなら 相当やきもち焼いてそうだな
おばあちゃんは寂しがりやの気が強い人だったからさ、多分ね。
施設に入った彼は それでもまだかっこよかった
お母さんが、孫がきたよ って言ったらかすかに反応して
それみたお母さんはすごく嬉しそうだった
おじいちゃんとお母さんの昔を思うと
お母さんがまた少女に見えた
おじいちゃんは今、言葉を発せないけど、
おかあさんの顔をじっと見た そしたらお母さんの顔が可愛くなって
そのあと目が赤くなって そうやって見てくれると嬉しいよ、って言って涙をこぼした
ツアー中に60歳を迎えた女性のお客さんがいた
サプライズでケーキを用意してお祝いした
20名のお客さんの前でその方は涙をこぼした
嬉しいです と。
今健康で元気で自信があっても
いつか、変わっていく。それはそんな遠くない。
自分を信じてて、ある日ふとショックが襲ってきてどんどん不安になる
不安をかき消すために自分に強い言葉かける
年齢重ねることは自然で
今31歳に中身はなれてないけど
でもこういうことを考えるようになった
母として生まれたんじゃなくて一人の人間、その人の生きる場所
わたしにとっては父、母、妹だけど
それぞれが独立した存在で
その枠をちょっとはずして相手を見てみると
ひとりひとり 人間ってオンリーワンなんだなって思う
本当に誰かと比べるものじゃない
いつも行くセブンイレブンの店員さんはセブンイレブンの店員さんでしかないし
駅の改札員は改札員でしかなくて
もし私服で目の前に立てれても気づかない
私たちの世界って狭い
狭い中で必死
狭い世界の中で なくし物したって別にいいじゃんって思ってた
物にこだわることに興味がなくて
なくなったらなくなったで、いいよって思ってた
だけど どうせ狭いとこで生きてるなら
どうせ今が今しかないなら
少し冒険してもいいと思った
スーツケースの鍵は出てきた
お客さんは本当に嬉しそうに報告してきた
誰かが嬉しそうだと嬉しい
そうやって自分を大切にしたい
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