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【書評】読書のススメ_『地頭力を鍛える』

今回の書評は西富が担当です。
最近大量の論文を整理しました。

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これまでは面白そうな論文を見つけて読んだらファイルに入れるというちょっとおバカなファイリングの仕方をしていたので読み返したい論文を探すのが至難の業でしたが、なんということでしょう、このようにファイリングすれば読みたい論文をすぐに発見することができます。これだけで少し賢くなったような感じで、とても満足しています。

さて、本の紹介ですが、前回は「せっかく社会人の勉強会をやってるし、それに絡めた内容にしたいなぁ」なんて考えて書き始めたら1冊目でとんでもない文字数になってしまいました。
今回はその反省を活かして、前回紹介できなかった1冊と、それに関連させてもう1冊。ちゃんと文字数を調整しながら頑張って書きたいと思います。

『地頭力を鍛える』 細谷 功

「地頭力」ブームを巻き起こしたベストセラーが待望の電子書籍化!!

「日本全国に電柱は何本あるか?」といった例題やその解答例から「フェルミ推定」のプロセスを紹介しつつ、「好奇心」「論理的思考力」「直感力」という地頭力のベースとそれらのベースの上に重なる仮説思考力、フレームワーク思考力、抽象化思考力の3つの構成要素とその鍛え方を解説。

「問題解決」を必要とする業務に携わるビジネスパーソンはもちろんのこと、本当の意味での創造的な「考える力」を身につけたいすべての人に贈る、知的能力トレーニングブック。
(Amazon商品ページより引用)

シカゴにピアノ調律師は何人いるか?

この本はフェルミ推定というものを扱った本です。
フェルミ推定とは

実際に調査することが難しいような捉えどころのない量を、いくつかの手掛かりを元に論理的に推論し、短時間で概算することである。
(Wikipediaより)

だそうです。

有名なのが
シカゴにピアノ調律師は何人いるか?

という問題。何人だと思いますか?
といってもシカゴでは馴染みがなさすぎるので、兵庫県とか日本とかに置き換えて考えてみて下さい。

この問題のポイントは「シカゴ(兵庫県・日本)にいるピアノ調律師の数など誰も知るわけがない」というところ。つまり答えを知っているから解けるという類の問題ではないということです。
ではどうするのか?
これは結果の正しさを問う問題ではなく、知らないなりに、どう推論したかという過程を問う問題です。

この「シカゴにピアノ調律師は何人いるか?」という問題はフェルミ推定の超有名問題で、Google検索窓に「フェルミ推定」と打ち込み決定ボタンを押すだけで解答例がゴマンとヒットします。

こんなのが解答例です。

ちなみに僕は「兵庫県ver」でやってみたのですが、以下のような感じです。

・そもそもピアノ調律師はフリーランスなのか?
 ⇒多分NO。ビジネスとして効率が悪そう。楽器店やピアノメーカーに勤務している方が多いのでは?

・兵庫県にピアノを作る工場(工房?)あるか?
 ⇒知らない。ないってことにしよう。

・兵庫県にピアノを扱う楽器店はどれくらいあるか?
 ⇒三宮に4つぐらいあった気がする。自分は楽器に興味がないので知らない店も多いかも。明石や姫路など、人口が多いところには一定数あると仮定して兵庫県全部で20ぐらい?

・各楽器店にピアノ調律師は何人いるか?
 ⇒1人じゃ大変そうだから、2人?

ということで兵庫県にピアノ調律師は40人ぐらいいるのではないかということになりました。
フェルミ推定というのは、だいたいこんなようなものです。

フェルミ推定×数学

僕は数学(や算数)においてフェルミ推定の力は結構大事なんじゃないかと思っています。
というか、数学力をつけていく過程で自然とフェルミ推定の力が育っていくと言いますか。
タマゴが先かニワトリが先かはわかりませんが、少なくとも数学が得意な生徒は問題を解くときに先に概算する習慣があります。

「なんとなく、これぐらいかな?」

という見積もりがあるから、自分が式を計算して出した答えがあまりにも予測とかけ離れているとビックリします。
そこでよくよく式を見返してみると、計算間違いをしていることに気づく、なんてことが頻繁にあるのです。

僕も指導時には生徒に

「いきなり計算する前に、なんとなくこれぐらいかな?って見積もりを立てるんだよ」

なんて指導したりもするのですが、このフェルミ推定の問題はクイズ感覚で楽しみながら概算の力を育てることができるので優秀です。


フェルミ推定×ビジネス

という具合に塾なので無理矢理数学に結びつけてみたんですが、この本は元々はビジネスパーソン向けに書かれていて、章立ての中にも「フェルミ推定をビジネスにどう応用するか」という章があります。

仕事というものは基本的には答え(や答えの出し方)を知らない問題にあたることであって、ロボットやAIが人間の仕事を代替していく今後は増々その色合いは濃くなってくると思います。

例えば僕が今企画している社会人向けの勉強会なんてことを考える時に、もしこれを収益化しようとすれば

・神戸を生活圏にしているビジネスパーソンでこれから学び直しをしたいと思っている人は何人いるか?

という問題を考えなければいけないワケです。
これは
・シカゴにピアノ調律師は何人いるか?
という問題と非常に似ているということがお分かり頂けるかと思います。

この本ではそういった問題に対する思考の技術として
・結論から考える力
・全体から考える力
・単純に考える力

という3つの力に焦点を当てています。
フェルミ推定の問題を通してこれらの力を鍛えていこうというのがこの本のだいたいの主旨です。

小学生・中学生ぐらいだと自力で読むのは少し難しいですが、例えばお家で親御さんと一緒に読んで、一緒に問題を考えるなんていうのも楽しいのではないかと思います。

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