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庭のささ鳴き

庭のささ鳴き

ささ鳴きがする
――ヒバリだ。
庭木と呼気を交わしあう
――一匹のヒバリ、
ふくんだソウゾウを口にする
「――――――」
胸のふくらみにささ鳴きがコダマしている

コ魂

コ魂

不自由な腕で すっくりと
盲目なかなたで 立ちつくす。

ことに冷たく、ごとに優しき
 硬質なアナタのUNhold
 樹皮下を脈うつUNcold
鼓動を静かに 重ね合い
ココロの強かを 解きあい
この星の一端ヲ――木霊する

クオリアの空

クオリアの空

ふいに、ただの道行きに
ひらけた視界の新鮮さ

旧道木陰のふちの外、
広大無辺な光のもとに
小さき粒を連ねる空と――
 のかんかく、と
  カチリ。

嵌り込んだ器。がこぼす、自然な
流れるモノの輝きを
――野のユリと
呼ばずにはいられない

アースカラー

アースカラー

潮騒に
白いTシャツのなびいた休閑期
スチルは暑いまなざしを
水平線へのグラデーションカラーにそっていく
こたえない空のした
かたむける太陽の
あいまいな長針でいれたなら
あの真っ青に白いシロのまま

大都海

大都海

水ととらえる上空を
なぞらえるコンクリート稜線
その深層で凪うつた
生ぬるい呼気のふきだまり。
なんて窮屈なのだろう
しのばずにはいられない
かた手落ち缶コーヒー
思いをはせるガラス戸がうつつより
仕様のないなぐさめに
不出来な面をしてくれる

きつねアメ

きつねアメ

晴れ日にそそぐ雨あし
さし延べうる枝の葉
朴訥と賢明に
くすぐるよじりの斉唱は――

はたはた はたはた
 はたはた ハタハタ

笑ってる

水き言

水き言

形を捉えんと曖昧なままに
知った気持ちで、さらに――あそび
ゆうらぐ真実の
不定を知った、その矛盾

口よりこぼれ、挿し入るモノは
八拾重億と膨大に、日々化かせる。
呆然の、満たしたるさまの、
――なんと水き言だろう

魂をぬかるつ

魂をぬかるつ

とっておきの晴着を纏う一家をまえに
「魂をぬかるつ」と男は激情をあげた。
もはや、当て布を着ているその様相は
とまどう写真屋の指さきに_とどかない。

一家の主は迷惑を
母は子らに安心を、
黒黒とレンズにぬかれ
いならぶ顔端に浮かんだ恥入る口を
キャメラは仔細を捕らえたむ
――男の、怒りを燈した瞳のうちの
手もと一点に朽ちゆ母の背中さへ

ネビュラのつゆ

ネビュラのつゆ

新鮮のさなか
木立わたる暁に
青青らのおこす新星

どうして――儚く
どうして――尊い

ミをときゆく朝露のうちに
どうして。
と、零しつた夢は
知るべない銀河の
――群れ、群れ、群れ

うたかたる発光

うたかたる発光

おとなしく
音もなく
燦燦と、降りそそぐ
万遍と、ひとしみ

くすぐったがりに欄干よじり
枝葉をふりふる木木はてにてを遊び
いろ深む影のまにまを空は、白く
瞬き――また白く
 おしみ
  ほころび
恩寵とかたむけんメロディ
夢うつつの彼岸ヲヤ

テンの射光

テンの射光

並木を射ぬくハハの陽や
綺羅めく星の散逸を
枝葉の陰りに深うして
穿つた點は閃光のハナタ

小鳥の詩もこだませて
千々に乱れた光線も
一対ガラスをも惹つつけぬいた

――シン、と
――シンと、こごる澱。
哀よりも昏くしずんだ液面を
あぶり
 逆巻き
  カシラを捉え、さかしまに
光りは天へと集帰せる

かざみし恋

かざみし恋

恋しいと。
私を造るアナタから
恋しいと。
私を嘆くアナタから
恋しいと。
私の造るアナタから

くる、クル、と
ヘんペンせしめたワタクシの後姿を垣間見るのは
――後のこと。

scratch

scratch

薄情を測れたら
泣き立つこともないのかな
強くなりたい
たとえ見せかけだとしても
愛したい 傷なんだ

スノーホワイト
溶けることないあなた
スノーホワイト
堆いあなた

苦しみを沸きたつ
紅い涙のかれぎわに
よじる身体より
傷に生まれたとしても
「木花」は 咲いたんだ

スノーホワイト
溶けることないあなた
スノーホワイト
堆いあなた

スノーホワイト
のぞまない雪解け
スノーホワイト
-5℃の

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I"tou

I"tou

金木犀の雨にうたれて
鈍る足先に咲く
クオリアのささめきこと

金木犀の雨に泣いてる
やわやかな幼心よ
うずくめた乳色の匂い

金木犀の雨がやむとき
愛の黄昏がとき
シューが子の芽ふき
――褪せいく、泣き結晶がスペクトラム恍よ