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ソウル

自分が小学生か中学生の頃、たまたま朝起きるのが遅い日があった。

遅起きだ。

当時まだ実家に住んでいて、遅起きをしたときに母親に「アンタ小原庄助さんって知ってるかね?」っと言われた。

何じゃ、そりゃ?

「朝寝、朝酒、朝湯が大好きで、自分とこの家潰したんよ。習慣にならないよう気をつけなさいや~。」

何て遅起きのことを冗談っぽく揶揄された記憶がある。

何よりもその時に母親が口ずさんだ「朝寝、朝酒、朝湯が大好きで~♪」の歌が強烈に脳裏に残り、具体的な曲名を知らぬまま年月を過ごした。

まぁ、歌の節回しで古い日本歌…民謡みたいなものなんだろうなとはうっすらと思ったりはしてみたが。

その後実際に生活をしている中で、民謡を聴いたりする機会が自分には中々なかったので、いつしか小原庄助さんの事も遠い記憶になっていた。

そして…

ふと小原庄助さんの歌を思い出す機会があった。

まぁ有り体に申せばプロの方がその歌を唱っている場に巡り会えたんですよ。

今でも思い出す。

日本の原風景を覗かせながらも、ラテンのフィーリングたっぷりに小原庄助さんの節回しを聴けた偶然を。

今年の7月の終わり。

音楽好きの知人達とフジロックフェスティバルに言った時のことだ。

フジロック三日目の午前中、知人が興味のあるグループがいて見てみたいと言ってたので、んじゃあちょいと観に行ってみようかという話になった。

何でもそのグループは日本の民謡をベースにして、スカ、ラテンのリズムで、そして楽器などを用いて演奏するスタイルらしい。

へー。

普段民謡を聴く機会がないし、ラテンのリズムで…って一体どんなんやろと楽しみにして会場に向かった。

東京スカパラの演奏で民謡を歌う感じなんやろか、などと想像をしながら会場に向かう道すがら…。

こういう想像って何か楽しみが増してちょっとした幸福の瞬間でもある。

ちなみにバンドの名前は「フォーク・クルセイダーズ…」

もとい、

「民謡クルセイダーズ」という。

何かカッコイイっすよね。(^^)/

そして会場に着くとまだ始まる少し時間の前だったので後ろの方でのんびりとくつろいでいた。

しばらくして、バンドが登場して演奏が始まると…。

まあ、まさに南米やアフリカ系のリズムがそこに鳴り響くわけなんすよ。

ギターもあるし、サックス、トランペットもあり、さらにはボンゴやコンガの音も聴こえてきてここはそういうワールド・ミュージック系のライブハウスかと勘違いしてもおかしくないほどのラテンのノリの音楽が会場に鳴り響いてきたわけで…。

そして男性のヴォーカルの方一名と、女性のヴォーカルの方が二名いらっしゃって、その音に合わせて歌う唄はまさしく民謡で…。

これがバンドサウンドと抜群の相性だったんですわ。

明らかに民謡を唸っていて後ろから流れてくる演奏はワールド・ミュージックなんだけど…。

このノリと、民謡と演奏がシンクロした心地よさは一体なんなんだと感じてしまった。

何よりも民謡の節回しとトランペットなどの管楽器系の音色や、コンガなどのボコボコした音が絶妙にシンクロしてて…、南米にいながら民謡を聴いているかのような不思議な心地よさだった。

会場も鳴り響く演奏と民謡に誘われてどんどん人が増えてきて気付けば、立っている観衆の人達は演奏に合わせて、ラテンのフィーリングで体を揺らし、民謡の大和魂で手を阿波踊り風の動かし方をしていらっしゃる方もいるではないか!

こりゃあ中々見れない光景だぞと後ろから見ていると、何やら昔聴いたことあるフレーズが聴こえてくるではないか…

「小原庄助さん 朝寝朝酒朝湯が大好きで~♪
 それで身上つぶした~♪」

おぉ、めっちゃ懐かしいやんけ!!っと若干(いや、かなりの)興奮を覚えて思わずそのフレーズを一緒に口ずさんでいると、隣にいた友人が、「何で知ってんの?」っと極めて冷静に突っ込まれた事をありありと今でも覚えている。

いやー、まさか小さい頃に何となく覚えていた記憶がまさかこういう形で蘇るとは思っていなかったんで、マジで民謡クルセイダーズを見て良かったと思った。

ちなみに小原庄助さんが登場する民謡は「会津磐梯山」という唄。

磐梯山の事を誇りにというような感じで始まり、そして小原庄助さんが登場する。

調べてみるとどうやら会津の盆踊りの唄がベースで、小原庄助さんの下りは昭和初期のレコードなどが普及した時に、一般の人達にも親しみが持てるようにというニュアンスでつけたそうだ(間違っていたらごめんなさい。)

そして小原庄助さんなる人物は…

分かりません。

っにしてもだ。リズムと言い、掛け声と言い、民謡そのものなのに、このラテンのリズムと見事に融合した心地よさはなんだろう。

きっとバンドのご本人達のアレンジの努力など、専門家じゃないんで分からないけど、融合させることは大変だったんだろうなと想像してしまう。

そしてジャパニーズ・ソウルか。

やっぱり根本は日本人なんですよね。

日本人が落ち着く音階とか、節回しみたいなものがやっぱりあるんじゃないかな。

掛け声といい、ついつい日本人がのってしまうような感じとか…。

知らんけど('ω')

そしてライブは盛況のうちに終了。

改めて思うが、フェスなどで今まで聴いた事なかったバンドや、シンガーの歌に出会い、そして良い音に出会い、発見をし、みんなと共有するあの時間って最高な時間だと思う。

それはフェスだけだしか味わえない、フェスならではの醍醐味か。

楽しい時間だった。

民謡クルセイダーズ…。

そうそう、「会津磐梯山」はどうやら美空ひばりや、三橋美智也、小林旭などカヴァーしているらしく、そう考えると割とポピュラーだったのかなと思っている。

良いもんはこうやって受け継がれてゆく。

ジャパニーズ・ソウルとワールド・ソウルの融合…。

素晴らしいもんでございます。

記事を最後まで読んで頂き誠にありがとうございます!




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