なぜ大人になるとやりたいことができなくなるのか?小利口になるほど失われる行動力の正体
サラリーマンとして働いた会社を辞め、20代でサイドFIREとして「やりたいこと」を仕事にした結果、30代で仕事をしなくても生きていけるようになった。
ただ、自由になったものの、やりたいことがなくなり燃え尽き症候群になってしまった。
だからこそ、現状を打破するために「新しいこと」をする。新たな試行錯誤する過程をお届けするnote。
今回は『経験が増えるほど動けなくなる』話。
■ やりたいと思っても動き出せない
頭ではわかっていても、行動できないことは多い。毎日の仕事が忙しかったり、いざ休みになっても、たまっていたやらなければならないことや、ちょっとした家事や用事で一日があっという間に過ぎてしまう。
ふと気がつくと、1日が終わり、気づいたときには1週間、1カ月と時が経ってしまうことはよくある。
あれよあれよと時間が経ち、今年も残り2カ月となってしまった。年明けには「今年やりたいことリスト」をまとめたものの、実際に取り組めたことは少ない。これが人間の性なのかもしれない。
■ 20代の奔走と30代の変化
僕自身、20代の頃は「やることリスト」を徹底的に達成するようにしてきた。生産性を高めるために意思決定は即断即決したし、あらゆることは即行動するようにして「行動すること」を重視してきた。
新卒で入った会社を辞めて、独立した当初は、何が何でも結果を出すことに集中した。「サラリーマンを辞めても成功しない」「個人でビジネスをするのは失敗する」と笑われたし、「フリーランスという名のフリーターだろ」と馬鹿にされることもあった。
結果として、数多くの事業を立ち上げ、たくさんの失敗をし、少しの成果を出すことができた。20代で資産が富裕層と呼ばれる域まで積み上げられたのは、反骨心があったからこそできたことだ。
ただ、30代となった今は20代ほど行動できていない。20代で得た少しの成果による「ゆとり」と大人になったという「人生経験」が動きを鈍らせている。
と人生経験が積み重なったからこそ、あらゆることを脳内でシミュレーションできるようになってしまった。小利口になってしまったがために、行動しなくてもある程度の結果が、より明確に予測できるようになった。
■ 浅い考えの人と深い思考の人
世の中には「浅く考える人」と「深く思考する人」がいる。前者は決断力があり行動が早く、後者は深い思考ができる一方で行動に移せないことがある。どちらにもメリット・デメリットがあるが、行動が求められる場面では即断即決できる方が有利だ。
ノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者のダニエル・カーネマンは、著書「ファスト&スロー」で人間の思考に2つの異なるプロセスがあると提唱している。それが「システム1(直感的思考)」と「システム2(分析的思考)」の理論だ。
「システム1」は自転車に乗るように自動的で素早い反応を生む。特に考えずに日常の行動をこなす場面で働く。一方「システム2」は、初めての道で地図を見ながら慎重に進むように、集中力とエネルギーを要する複雑な判断に使用される。
普段の小さな意思決定はシステム1で処理されるが、重要な決定や新しい課題にはシステム2が必要となる。ただ、システム2は多くのエネルギーを消費するため、長時間の使用で疲労しミスを招きやすい。この「決断疲れ」によって、システム1に頼りすぎると、直感的な誤った判断のリスクも高まる。
20代の頃の僕は素早く思考しつつ、とにかく行動することを重視した。浅く考えることで行動力は上がったものの、数多くの失敗も経験した。
逆に30代となった今は、より深く物事を吟味して行動している。人生の経験値が積み重なり判断は速くなったが、以前より深く思考することで失敗する機会が減ってしまった。
■ 人生経験が人を小利口にさせる
人生経験が積み上げられるにつれて、人は段々と小利口になっていく。昔あれだけ「ムダ」なことに時間を使えてたにも関わらず、大人になればなるほどムダなことに時間を使いたくなくなる。
子供の頃は「ムダ」なことにたっぷり時間を使えた。何時間もゲームに没頭でき、日暮れまで遊び続け、休みが永遠に続けばいいと思えていた。
ただ、大人になるとゲームをしていても、ふと我に返り「なぜこんなことに時間を使ってしまったのか」と自己嫌悪に陥ることがある。
人生経験が増えた結果、ムダな時間の使い方を自ら制限してしまう。子供の頃のような無邪気さや、システム1のような即興的な行動力は薄れていく。
経験を重ねるほど、人は小利口になり、システム2の深い思考をとるようになってしまう。要するに、思い切った行動を起こしにくくなるのだ。
■ あえて拒絶されにいくムーブメント
だからこそ、自分自身の人生を俯瞰しながら、熟考した上で行動を起こすのがいい。行動量が減ったことを認識しつつ、あえて大胆な行動を選択する。
アメリカでは、最近 "Rejection Therapy"(リジェクション・セラピー)と呼ばれるムーブメントが起きている。これは自己成長のために、あえて拒絶されることに挑戦し、恐怖を克服する方法だ。
カナダの起業家ジェイソン・コメリーが考案したこのムーブメントの基本的な考え方は、拒絶される経験を重ねることで、拒絶に対する耐性を養うことにある。
例えば、知らない人に話しかけたり、通りすがりの人に声をかけて手助けをお願いしたり、レストランで特別メニューを頼んだりと、普段ならやらないちょっとした行動を起こす。
あえて普段と違う拒絶される状況を作り出すことで、拒絶への恐怖心を徐々に減らし、失敗や批判に対する心理的な抵抗感を減らすのだ。
このムーブメントはTikTokを中心に広がり、多くの人々が成果を共有し挑戦の過程を公開することで、他者と共感し合い、拒絶を恐れずに新しい経験に挑戦する姿勢が広く支持されている。個人が心理的な壁を乗り越え、自分の限界を超えるための有効な手法として注目を集めているのだ。
だからこそ、ムダだと思うことにあえてトライしてみよう。結局、人生経験を積めば積むほど、行動力は鈍くなる。「やらなくても分かる」ようになるからこそ、あえて拒絶される行動を選択する意味がある。
リジェクション・セラピーのムーブメントのように、あえて行動することで見えてくるモノがある。小利口になり、深く思考するシステム2が優位になるからこそ、意識的に思考を切り上げ、行動に移すことが重要なのだ。
■ 何もしない人生は退屈でしかない
歳を重ねるほど、動きが鈍くなっている。頭で正解を導き出せたとしても、それが頭の中だけで完結するのでは退屈でしかない。
厄介なのは、経験せずとも精度の高い予測ができてしまうことだ。実際に行動に移したとき、想定通りの結果になって退屈さを感じるようになってしまった。
20代の頃は即断即決で行動できいたのが、30代になると経験により賢さがむしろ行動を妨げるようになった。深く思考できるようになった分、行動が鈍くなった。
ただ、このまま退屈な人生を送るのは味気ない。ましてリタイアすれば何もすることがない状態になり、ますます退屈に陥る。
だからこそ、リジェクション・セラピーにもあるように、「普段やらないこと」をしよう。失敗を積み上げる行動をすることで、拒絶への恐怖心を徐々に減らし、失敗や批判に対する心理的な抵抗感を減らす。
■ 行動できるマインドセットをする
最近心がけているのは「守ったら負け」という極端な思考だ。守りに入った人間は行動が遅くなる。
「コロナが落ち着いたら海外移住を」「円安が改善したら日本を出よう」と思いはあっても、デメリットばかりを考えて行動に移せないことが多い。
自分に負けないよう、積極的に「新しい道」を選ぶためにも行動できるように思考を変えている。
人は年齢を重ねるほど、経験値が上がり小利口になっていく。システム2の分析的思考が深くなり、結果として行動力が落ちてしまう。だからこそ、自ら行動を選択することが重要だ。
現在計画しているのは、海外移住だ。これまで、アメリカやフィリピンに中長期滞在し、ヨーロッパ方面ではスペイン、ポルトガル、オランダ、マルタ、ドバイ、ポーランド、チェコ、ウクライナ、ジョージアなど40カ国程度を見て回った。
守りの選択をするなら、日本に定住して「ゆとりのある生活」を送ればいい。ただ、システム2の深い思考を活かしつつ「守らない選択」をするのであれば、未知の選択をした方がいい。
近々、まずはマレーシアに短期移住する予定。治安や円安による費用など、デメリットを考えればきりがないが、「やりたいことをする」という率直な感覚を大切にしたい。
経験値を積めば積むほど、むしろ直感に従うことが人生を面白くする。深い思考と豊富な経験を持ちながらも、時には「ムダ」と思えることを試すのもいい。
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人生をより面白くするための試行錯誤の様子をまとめていきます。20代で経済的独立をした背景や30代の自由な暮らしのリアルを表と裏も含めて赤裸々に紹介します。面白さを追求して日々奔走する姿をお伝えします。