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翻訳修行

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趣味ではじめた、チャンドラーの長篇小説比べ読み。それが高じて、自分でも訳してみようと思い立ちました。既約の三冊を参考に、できるだけ原文に忠実に訳したいと考えています。
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#翻訳ミステリ

香水についても詳しくないと、私立探偵はつとまらない。

香水についても詳しくないと、私立探偵はつとまらない。

チャンドラー『湖中の女を訳す』第十七章(2)【訳文】

「ろくでなしめ」彼は声を低くした。「あいつはあれを見限ったんだろう」
「そいつはどうかな」私は言った。「あなたにとっては動機が不充分だったんじゃ、文明人だからという理由でね。でも、彼女にとってはそれが充分な動機になるんですか」
「同じ動機という訳じゃない」彼は噛みつくように言った。「それに、女は男より衝動的だ」
「猫が犬より衝動的なのと同じよ

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< in a nice way>は「いい意味で」

チャンドラー『湖中の女を訳す』第十七章(1)【訳文】

 アスレティック・クラブのベルボーイは三分後に戻ってきて、一緒に来るようにうなずいた。四階まで上がり、角を曲がったところで半開きのドアを私に示した。
「左に折れたところです。できるだけお静かに。何人か、お休み中の会員がおられます」
 私はクラブの図書室に入った。硝子戸の向こうに本が、長い中央テーブルの上には雑誌が置かれ、クラブの創立者の肖像画

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<ingenuous>は「純真な」という意味。まさか<genius>と誤読したのか?

<ingenuous>は「純真な」という意味。まさか<genius>と誤読したのか?

チャンドラー『湖中の女を訳す』第十六章【訳文】

 階下の廊下は両端にドアがあり、中ほどにもドアが二つ並んでいた。一つはリネン・クローゼットで、もう一つには鍵がかかっていた。突き当たりまで行って予備の寝室を覗いてみると、ブラインドが引かれ、使われている様子はなかった。もう一方の突き当りまで引き返し、二つ目の寝室に足を踏み入れた。幅の広いベッド、カフェオレ色の絨毯、軽い木で作られた角張った家具、ドレ

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<knee crack>は膝の立てる間接音のこと

<knee crack>は膝の立てる間接音のこと

チャンドラー『湖中の女を訳す』第十五章(2)【訳文】

 銃を取ろうと手を伸ばしたが、私の手は卵の殻のようにこわばって、今にも壊れてしまいそうだった。私は銃を受け取った。女はさも嫌そうに銃把に巻きついていた手袋の臭いを嗅いだ。そして、それまでと同じように、変に理屈が通っているような調子で話し続けた。私の膝がぽきっと音を立て、緊張がほぐれた。
 「ええ、もちろん、あなたの方が簡単」彼女は言った。「車

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<the dickens>は<the devil>と同じで「一体全体、どうして」という言い方

<the dickens>は<the devil>と同じで「一体全体、どうして」という言い方

チャンドラー『湖中の女を訳す』第十五章(1)【訳文】

 アルテア・ストリートの交差点を過ぎて交差道路に入り、渓谷の端で行き止まりになっている、歩道と白い木の柵に囲まれた半円形の駐車場に行き着いた。しばらくの間、車の中に座り、考え事に耽りながら海を眺め、海に向かって落ちていく青灰色の山裾に見とれていた。レイヴァリーをどう扱うか考えあぐねていたのだ。下手に出るか、それとも問答無用で容赦なく問い詰める

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<sit across the room from someone>は「向かい合って座る」とは限らない

<sit across the room from someone>は「向かい合って座る」とは限らない

チャンドラー『湖中の女を訳す』第十四章

【訳文】

 冷え冷えとした緑色の水底で腕に死体を抱いている夢を見た。死体の長い金髪が私の目の前を漂い続けている。目が飛び出し、体が膨れ、腐った鱗がぬらぬら光る巨大な魚が、老いた放蕩者のように流し目をくれながら周りを泳いでいる。息が続かず、胸が張り裂けそうになったちょうどその時、死体が息を吹き返し、腕の中から逃げて行った。私が魚と死闘を繰り広げるあいだ、死

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<tight>も<mean>も、金がからむと、少々意味が下卑る

<tight>も<mean>も、金がからむと、少々意味が下卑る

チャンドラー『湖中の女』を訳す 第十三章(2)【訳文】

男はほとんど踊るように入ってきて、かすかに薄笑いを浮かべながら私を見て立っていた。
「飲むかい?」
「ああ」彼は冷ややかに言った。自分でたっぷりとウィスキーを注ぎ、ちょっぴりジンジャーエールを垂らし、ひと息にごくりと飲んで、すべすべした小さな唇に煙草をくわえ、ポケットから取り出しざまにパチンと鳴らしてマッチに火をつけた。そして煙を吐き出しな

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<drink of water>は「飲料水」ではなく「長身で痩せた男」

<drink of water>は「飲料水」ではなく「長身で痩せた男」

チャンドラー『湖中の女を訳す』第十三章(1)【訳文】

 十一時頃、平地に降りてきて、サン・バーナーディーノのプレスコットホテルの脇にある斜めに区切られた駐車場の一つに車を停めた。トランクからオーバーナイトバッグを取り出し、三歩ほど歩いたところで、金モール編みの側章のついたズボンに白いシャツと黒いボウタイを身につけたベルボーイが、私の手からバッグをもぎとった。
 夜勤のフロントはインテリぶった男で

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<ponderous>は「大きくて重い、動作がのっそりしている」

<ponderous>は「大きくて重い、動作がのっそりしている」

チャンドラー『湖中の女を訳す』第十二章(2)【訳文】

 オフィスにたどり着いたら パットンは電話中で、ドアには錠が下りていた。話しが済むまで待たなければならなかった。しばらくすると電話を切り、錠を開けてくれた。
 私は彼の脇を通り過ぎて中に入り、ティッシュペーパーの包みをカウンターの上に置いて開いた。
「粉砂糖の探り方が足りなかったな」私は言った。
 彼は小さな金のハートを見て、私を見、カウンタ

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<tissue paper>は「薄葉紙」。「ティッシュペーパー」ではない。

チャンドラー『湖中の女を訳す』第十二章(2)【訳文】

ゲートから三百ヤードほどのところで、去年の秋に落ちたオークの枯れ葉に覆われた細い小径が、大きな花崗岩の丸石の周りを回って消えていた。その道をたどって、露頭の石に沿って五十フィートか六十フィート、がたごと揺れながら走り、一本の木の周りを回って、もと来た方向に車の向きを変えた。ライトを消し、エンジンを切って、座って待った。
 半時間が過ぎた。煙草

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