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幸せなアナログレコードとの再会(聴きました編6) 『モーツァルト:「クラリネット協奏曲」「ファゴット協奏曲」』

一度は売却して「ゼロ枚」になったアナログレコード。でも、また欲しくなって取り急ぎ30枚ほど中古で購入。聴くと楽しかったりほろ苦かったり。レコードの一枚一枚は、青春の一コマ一コマだったんですね。新しい発見もあるでしょうか。そんな再会のお話、よかったらどうぞ。

アーティスト

 A.プリンツ(Cl)D.ツェーマン(Fg)他
 カール・ベーム指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

録音と演奏

 YouTubeにこのレコードのジャケット画像と音源があります。ここではクラリネット協奏曲のみとなります。

第2楽章は13’02”、第3楽章は21’09”からです。
 
『聴きました編1』の「13管楽器のためのセレナード」と共通していますが絶妙のテンポとアンサンブルの精妙さ漂う素晴らしい演奏です。音質もウィーンフィルの演奏という事でさらに柔らかな音に聞こえます。

ジャケットの絵はモーツァルトの部屋?

 ジャケットの絵を見ると、クロスが掛かったテーブル、五線譜や総譜の上にクラリネットが横たわっています。ファゴットは左側に立てかけてあり、燭台と羽ペンが刺さったインク壺がテーブルに置いてあります。

 これはモーツアルトの部屋を模したのでしょうか。クラリネット協奏曲はまだ完成に至らず白紙の五線譜には今から音符が書き込まれるのでしょうか。でも、残された時間はあまりありません……モーツァルトを愛おしむ気持ちが湧いてきます。

カール・ベームとウィーン・フィルの関係

 ジャケット裏面の解説の冒頭の見出しは「カール・ベームとウィーン・フィルの人たち」と題して述べています。

当時ウィーンの人たちから誰よりも慕われ、尊敬される指揮者であったことや、難癖をつけることで有名なウィーンフィルですらが無条件で言うことを聞くのは、ほとんどベームだけである

レコードの解説より

楽曲について

クラリネット協奏曲 イ長調 K.622
 モーツァルトの死も間近い、1791年10月7日に完成します。モーツァルト35歳。アントン・シュタットラーというクラリネット奏者からの作曲依頼でした。「クラリネット五重奏曲」などいくつかの作品も彼からの依頼でした。モーツァルト晩年の苦しい生活を支えた恩人ですね。

ファゴット(バスーン)協奏曲 変ロ長調 K.191
 モーツァルト18歳1774年6月4日の作品です。作曲の経緯などははっきりしないようです。管楽器の協奏曲の中でも一番早い作品で、精気あふれる一方で陰影もある作品です。

 改めて思いを深くしたのが、第2楽章アンダンテ~アダージョの精妙なニュアンスと陰影のグラデーションの美しさです。

独奏者について

 レコードの独奏者がジャケットに記載されています。
アルフレート・プリンツ(クラリネット)
ディートマール・ツェーマン(ファゴット)
というウィーンフィルの精鋭です。

プリンツはすでにこの曲を一度ミュンヒンガーと録音しており、今回が2回目であるが、ウラッハなどのいわゆるウィーン風のやわらかいイントネーションに特徴のあるクラリネットである。

ジャケットの解説から

 実は、今回ミュンヒンガー盤も再入手しました。「フルートとハープのための協奏曲」とのカップリングです。こちらの盤も大好きでよく聴いてきました。そのお話はまた後日にでも。

このレコードの思い出

「クラリネット協奏曲」は名曲の誉れもひときわ高く、FM放送の音楽番組などでもよく掛かっていましたので、私も早くからなじんできました。まだ人生が永遠に続くように感じていた青年期に。
 この曲についてよくたとえられる人生の夕暮れ、枯淡の境地とはこんなものなのかという思いはあくまでも想像の上の概念でしたが、年を経る従って現実感を伴ってくるのです。
 
「ファゴット協奏曲」は青春の音楽。大空に向かってひと刷毛で描いた絵のような清新で見事な筆致が好きで折に触れて聴いてきました。
 こちらは、ピリオド楽器を使用した全曲版です。第1ヴァイオリンは気鋭の佐藤俊介さんです。

 第2楽章は6’48”、第3楽章は12’30”からです。

データ


レコード番号

 グラモフォン MG 2437
 発売元:ポリドール株式会社

録音年月/場所

 1972年9月7日/ウィーン、ムジークフェライン大ホール

演奏時間

 A面 クラリネット協奏曲 イ長調 K.622 12’57” 8’02” 9’26” 
 B面 ファゴット協奏曲 変ロ長調 K.191   7’04” 7’34” 4’18”



※hoho さんの画像をお借りしました。


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