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母のために選ぶ、児童書。

 90歳を超えて、さすがに母も小さい文字が読みづらい、眼鏡をかけても本が読めないというのです。

 結構読書家で、若い頃に読んだ単行本や文庫を本棚に並べていて、少しずつ再読もしていたのですが……

 電子書籍なら、文字を大きくして読むこともできますが、母には使いこなせません。私には便利なルーペ眼鏡も、母には使いにくいようです。

 そこで、母の代わりに私は書店へ行き、活字の大きな本を探しましたが適当なものがなかなか見つかりません。

 ならばと、視点を変えて、子供向けの本なら文字が大きいからと思い、児童書のコーナーにアプローチしてみました。

 疑問もわきました。大きい活字を読めても、母は児童書を楽しめるのだろうかと。

 でも、森絵都(『カラフル』よかったです)さんの出発点は児童文学からだった、とどこかで聞いたのを思い出しました。これは、いけるかも!

 寄る年波につれ、ひとは子どもに還るとも言います。

 現に、私も童謡の一節に思いもかけず、涙することがあります。この歳になって、童謡に目覚めるとは。
 
 書店でざっと見て、母の気に入りそうなものを3冊購入しました。

  • 『きまぐれロボット』 星 新一著/和田 誠絵 理論社刊

  • 『こずえと申す』 吉田 道子著/宮尾 和孝絵 ポプラ社刊

  • 『へんくつさんのお茶会』 楠 章子著/井田 千秋絵 学研プラス刊

 せっかくなので、どんな内容か興味もあったし、母の気に入りそうか確認のために渡す前に自分で読んでみました。

 挿絵があったり字が大きい分、ボリュームは少な気味で時間はかかりません。

『きまぐれロボット』は、昔読んだ、私の経験値で選びました。文庫本などで読んだという方も多いと思います。

 難しい言葉や、言い回しはありませんが、考えさせられたり、なるほどと教えられる。いいものは残って行くものだなあと改めて思いました。

 これなら大人、子供にかかわらず楽しめる。もちろん母も。確信しました。

『こずえと申す』は、題名と表紙絵が特に気に入り選びました。

 こずえは少女ですが、敬愛する祖父の影響で剣道が得意で言葉遣いが古風です。

 こずえと、とあるきっかけで知り合いになった少年が、一緒に問題に挑戦していく、そんな内容です。

 環境問題を、謎解きの要素や、協力し合うことの大切さなどをからめながら物語は進みます。教育臭を感じないこともよかったです。

『へんくつさんのお茶会』は、森に住むおばあさんが開いているパン屋さんの物語です。カフェの好きな母なら気に入るかも。

 お客さんは、にんげんと森のどうぶつ。ありえないどうぶつとのおしゃべりも、童話と見れば、おもしろく楽しく読めるものです。

 おばあさんは「へんくつ」つまり、気むずかしくて、へりくつばかり。その理由がやがてわかります。

 先日聞いたところ、母は「3冊とも読んだよ」とこたえ、感想を聞いたところ「面白かった」そうです。

 選びがいがあったし、私の選択眼に自信もできました。

 老人に、また読書の楽しみを与えてくださった、著者・画家・出版社のみなさんに感謝したいと思います。

 母の読書のために、次に買った3冊はこれです。

  • 『チョコレート戦争』 大石 真著/北田 卓史絵 理論社刊

  • 『椋 鳩十の名犬物語』 椋 鳩十著/中川 大輔絵 理論社刊

  • 『なぞなぞライオン』 佐々木 マキ著 理論社刊

 今回は、私は読まず、先に母に渡しました。

 母が今度はどんな印象や感想を持つか聞くのが楽しみです。

 私も母のあとで読みましょうか、それとも、自分の未来の読書のためにもっと後にとっておきましょうか、悩ましいところです。(笑)


※てまり*さんの画像をお借りしました。


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