何度でも、「好き」に会いたくて。
「趣味はなんですか」と尋ねられた時、私はたいてい「本を読むことです」と答えます。本当はもっと多趣味で、絵を描くことやピアノを弾くことや、ほかにもいろいろと好きなことはあるのですが、この問いかけに対して自然と出てくる言葉はなぜだか決まって「本を読むこと」。
幼い頃から絵本が好きで、お気に入りの本は暗唱できるほどだった私。小学校にあがると、図書室はもちろんいちばんのお気に入りスポットになりました。お昼休みは毎日のように本を読みに行き、夏休み前には借りられるだけの本を借り、それはそれは熱心に読んだものでした。
……と、こう書くと、この人は小さい頃からすごくたくさん本を読んでいたんだなあと思われるかもしれませんが、実は。案外、読んだ本の数はそれほど多くはないんじゃないかと思います。
なぜなら私は、同じ本を何度も読むことが好きだから。一度読んで気に入った本は、半月ほどするとまた無性に読みたくなって、もう一度借りてきてしまうのです。
なかでも特に気に入った本は、その後何度も何度も私のもとに貸し出されることになり、最終的にはお小遣いと相談の上、めでたく手元の本棚に迎え入れられることになります。
(これが、当時の私の「本を買う」物差しでした。そして、この物差しによってお迎えすることになった本たちは、今もなお自室の本棚に仲良く並んでいます)
しかし当時、私の周りには、「同じ本を何度も読む」楽しさを心から理解してくれる人がいませんでした。そんなに何度も読んで飽きない?またそれ借りるの?と言われることがほとんど。仕方なく、「好きだからいいの」と受け流していました。ひそかな寂しさに気がつかないふりをしながら。
その複雑な気持ちを心の奥に隠したまま私は中学生になり、お約束のように図書室の常連になったわけですが、なんとそこで思いもよらない出来事が。
例によって同じ本を二週続けて借りようとしていた私は、つい弁解のように「また借りるなんて、借りすぎですよね、おかしいですかね……」とぽつりと呟いていました。すると、司書の先生がカウンター越しににっこり笑って、こう言ってくれたのです。
「あら、だってあなたはこの本が好きなんでしょう?何度もくり返し好きな言葉に触れるっていう読み方も、とっても素敵だと思いますよ。」
これを聞いた時の、薄曇りの空の中に突然光がさしてぱっといちめん晴れわたったような、清々しい気持ち。今でも鮮明に覚えています。先生のこの言葉のおかげで、私は自分の本の読み方を、心から好きになれたのです。その後の私の読書の時間がますます楽しく尊いものになったことは、言うまでもありません。
* * *
あれからもう15年ほど経つでしょうか。すっかり大人になった今ももちろん、同じ本を読み返す習性はしっかり健在ですが、一方で、新しい本との出逢いもより意識的に求めるようになりました。
ちょうど今日、地域の図書館で借りてきた本たちも、どれも今までに読んだことがないものばかり。さあ、また何度でも出会いたくなる「好き」が増えるかな。
寝る前の読書タイムが、今からとても楽しみです。
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