『最善のリサーチ』翻訳者まえがき
2024年5月発売の『最善のリサーチ』の「翻訳者序文」を全文公開します。本書の内容や価値、特長について書かれています。ぜひ、本書が気になっている方はお読みください。
翻訳者序文
本書「最善のリサーチ」は、リサーチをしているもののユーザーのインサイ
トが得られていない、あるいは形式的にリサーチを実施しているが実務に役立てられていないプロダクトチームのための書籍です。
リサーチは、新たな知識の獲得、問題解決、プロダクト開発やソリューションに不可欠な手段です。しかし、リサーチの本質的な理解がないまま形式的に行われているケースが多くあります。
新たな計画を立てる際に楽観的な予測をする「計画錯誤」バイアスが存在す
るのにもかかわらず、計画を立てることが大切だと考えてより厳密に計画をしようとする人がいます。皆さんの現場にもいらっしゃるのではないでしょうか。
リサーチも計画の仕方と同様に、考え方で結果が変わります。本書が説明するリサーチは、単なる情報収集の活動ではなく、深い洞察と理解を得るための手段です。リサーチ対象者の日常生活に深く潜り込み、対象者の視点から世界を見ます。
本書は、形式的なリサーチからの脱却のために書かれています。そのため、
基礎研究を行うような研究者やプロのリサーチャーのための書籍ではありません。
リサーチに対する深い洞察と実践的なアプローチを提供することで、プロダクト開発に携わるすべての人が、より質の高い意思決定を行えるようにする
のが本書の目的です。
リサーチのプロセスや方法論は複雑であり理解するのが難しいため、著者のErika Hall(エリカ・ホール)は、ユーモアや独特な比喩表現を交えながら、リサーチとデザインの基本から始め、徐々に高度なトピックや具体的な手法を説明しています。
リサーチが問題解決や意思決定プロセスにどのように貢献するかの理解や、
リサーチの倫理と信頼性・正確で公正な結果を得るための重要性と方法を説明しています。また、リサーチの障壁となる、怠慢さ、傲慢さ、そして組織内の政治的争いなど、様々な要因を打ち破るためのアドバイスも提供してくれます。
多種多様な分野でリサーチがさらに重要だと認識されるようになる中、本書
が皆さまのリサーチに役立つ道標になればと願っています。
―菊池 聡、久須美 達也、横田 香織
翻訳者について
菊池 聡(きくち さとし)
UX DAYS TOKYO 主催、Web Directions East合同会社 代表社員
著書に『レスポンシブWebデザイン マルチデバイス時代のコンセプトとテクニック』(KADOKAWA)など。
レスポンシブウェブデザインやモバイルファーストなどを日本に紹介。コンサルタント、日本人初のノーマン・ニールセンのマスター資格をもつ。
久須美 達也(くすみ たつや)
通信事業会社に勤務。大規模メディアやEC事業の責任者を歴任し、複数の新規事業も開発。UXデザインの力に魅了され、社内外で啓蒙活動を行っている。
横田 香織(よこた かおり)
アプリ開発会社に4年勤務し、カスタマーサポート、マーケティング、UX設計、広報に携わっている。個人では、動画制作にも従事。
監修について
UX DAYS PUBLISHING
日本最大級のUXイベントのUX DAYS TOKYOの書籍の出版や翻訳を手掛け
る部門として、海外の書籍を独自のネットワークで仕入れて、「絶対に読みやすい本や利用しやすい本」を目指して翻訳や執筆を手がける。
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