どうして、旅行するの。

これをお読みのあなたは、旅行が好きですか。そうでもないですか。まあどっちでも構わないので、ごゆるりと読み進みを。

旅行が好きだ。

とは言っても、noteを書いている皆さんのような海外旅行なんて大層なものではなく、国内を回るのが専らだけど。海外は家族で1度、ハワイに行ったことしかない。

鉄道好きでもあり、鉄道路線が通っているところを主に訪れる。先月は紀伊半島を4日かけてローカル線で巡ってきた。サムネイルは最初に立ち寄った奈良の興福寺。

大学のサークルでもちょくちょく合宿で遠出していて、自分にとって旅行することは当たり前となりつつあった。

でも、きっとそれって当たり前じゃないんだよね。

●　　　　　●　　　　　●

この前、弟と東京で待ち合わせた。

神奈川の大学に通う弟。僕の大学で特別講義があったらしい。

弟は東京に来るのが久しぶりだというので、ブラブラしながら話をすることにした。

秋葉原。僕らは二人ともそこそこサブカルに関心がある。アニメショップ、電器店を回った後、弟のサークルの話になった。

弟は軽音サークルでボーカルとギターを担当している。普段は、一人暮らしの自宅、大学、ライブハウスを三角形に動きながらの生活。

いや、正確には四角形か。サークルは授業とは別のキャンパスを中心に活動しているらしい。少しばかりの疎外感を味わいながら参加しているようだ。

ふと、僕は気になった。

「旅行とか行かないの？」

「行くつもりにもならないなぁ、友達もいないし」

「それならそれで、一人旅でもいいじゃんか？」

「別に……必要性を感じないし」

二人とも実家にいた頃は、家族旅行の計画を僕と母親がほとんど立てていた。弟曰く「俺はついていくだけ」だったらしい。もともとがそのくらいの関心で、予定を組んでわざわざ旅行に行く気にもならないという。

そして、弟に聞かれたのだ。

「どうして、旅行するの？」

「……あれだ、うまいもんが食べたいし、異世界感味わいたいし……」

「異世界感ねぇ」

取って付けたような理由が口から出た。

考えたこともなかった。旅行好きと周囲に散々言いながら、その理由を自分の言葉で表現したことがなかったのだ。僕は何の目的をもって、わざわざ計画を組み、荷物を用意して遠出するのだろうか。頭をひねっても答えは出ない。でも、定期的に無性に行きたくなるのは確かなのだ。

実際、うまいもんは食べたい。異世界感も味わいたい。でもそれは一つ一つの欲求でしかなくて、旅をする目的の総体のほんの一部でしかない、気がする。

●　　　　　●　　　　　●

今は、そんな感じで旅を楽しみながら、その理由は分からずにいる。楽しむことが目的か？それなら別の手段でもいい。きっと、旅でなければいけない理由がどこかにあるような気がしている。それを確かめるため、またきっと、僕は旅に出る。