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ババア☆レッスン(その9・出産、4人目)

 さて。
このタイトルを見て「・・・え?4人目??」と思った読者の方もいらっしゃるだろう。若い頃は「子供、全然欲しくない!」と言ってた女が、出産4人目。
 個人的には「まぁ、3人というのはアリだろう」と思っていた。世間でも「三兄弟」とか「三姉妹」というのは存在する。子供が3人というのは特にめずらしい事ではない。しかし。
「4人」となると途端に「え!!?」な反応を示される。
 というわけで、ご安心(?)下さい。この出産物語は4人目で終わりです。
次男を産んだその2年後、42歳の時に、私は次女を産みました。
そして、50歳でシレッと閉経しました。
私の子宮は今、ハードモードな活動を終え、鼻クソほじくりながらゴロ寝してるような状態です(てか、前からそんな体たらくだったかもしれないが)。

 それにつけても。
4人目妊娠発覚した時は・・・・妊娠検査薬・陽性の部分を見ながら、頭の中が真っ白になった。そして、目の前が真っ暗になった。てか私、妊娠発覚した時って毎度毎度、こんなしょっぱい反応ばかりしてるな。
 実母に4人目妊娠の報告をしたら、電話の向こうで絶句していた。
そして義母に至っては。
夫が電話で報告したら「・・・・マリエさんはそれを喜んでいるの?」と言ってたそうである。なんだ、それ。

 というわけでまぁ、例によって例のごとく、もはや行きつけと化した杉並区の無痛病院へ。
今回、私が42歳で4人目出産、という事だからだろうか、看護師さん達に「あなた、えらいわねぇ〜〜えらいわよぉ〜〜〜」と過剰に褒められた。
私は、この日本の少子化に歯止めをかけようとする、数少ない功労者の一人になったらしい。しかし。
子供の教育費、満たされた生活環境を与えるために、計画的に出産人数を割り出す夫婦からすれば、私は単なる「貧乏人の子沢山」的存在であろう。
「雑な子宮」から生まれた子供は「育ち方も雑」と思われても仕方がない。
事実、大家族モノのドキュメンタリーをテレビで観ると、やはりその生活っぷりは(以下、自粛)。

 それにつけても妊娠も4度目となると、なんとなく「飽き」がきて、新鮮味もへったくれもない。以前なら、妊婦雑誌や著名人の妊娠エッセイなど色んな本に目を通したものだった。「妊婦は重いものを持つな」と言われてるのに、書店で妊娠関連の本を大量に買い込み、帰宅途中、そのあまりの重さに腹が張って痛み出すというバカな事もやらかした(流産・早産注意!!)
 しかし、4人目の時はもういいかげんそんな本に目を通す気もなく、ただひたすらボンヤリしてたような気がする。

 私が妊娠するたびに感じた事。それは、妊娠中の子宮は、まるで「寝ながら夢をみている」ような存在であった。ドラえもんの四次元ポケットのごとく、子宮の中が無限に広がってるように感じるのである。
そして、出産して子宮の中がカラになったら、途端に現実に引き戻されて、ハッと正気に帰る、そんな感じであった。

 子宮の中がそんなふうに、四次元ポケットの開けっぴろげな状態なのだから、頭の中もそれに準ずる。
 当時「冷えとり健康法」という、なんかスピがらみな健康法が話題になってたのだが、私の頭はまんまとソレにハマったわけだ。
冷えとり・・・・それは、「シルクの靴下を4枚重ねて履く」「半身浴」「温めて毒素を出す」などなど、そこにオーガニックやオシャレをまぶし混んで、当時、スピ好き女性の間で話題になってた気がする。
 とにかくアホのようにシルクの靴下を買い込んで重ね履きしていた。
洗濯物は靴下だらけ。「毒素が出ると靴下がボロボロになる」という定説を信じ込み、毒出しのために風呂にはいりまくり、湯たんぽを抱えて寝た。
そして、妊婦雑誌はそっちのけで、冷えとりに関する本ばかり、目を血眼にして読んでたのだった・・・・要するに、ヒマ。
 結局、出産して子宮の中がカラになり、ハッと正気に戻ったら「・・・・・・・なんだこれ?」と、大量の靴下を前に唖然。それらが即、ゴミ袋行きになったのは言うまでもない。
 「妊婦になってそっち系に目覚めて、出産後もそのままオーガニックのオシャレママ」を貫き通す人もいるが、どうやら私はそういいう輩ではなかったようだ。
 確か、4人目出産後の最初の仕事は「新宿のおなべバー取材」だった記憶がある。
 
 てなわけで、4度目の妊娠中もまた「胎児と母親の、感情の連携プレー」を感じる出来事があった。
 4人目の赤子(エコーでの性別判定は女の子)は、腹の中では随分とおとなしく過ごしてるヤツだったのだが。
 ある晩私は、ヒマにまかせて映画「エイリアン2」を観ていた・・・・まぁ、エイリアンですからね。映画の中でギョッとするシーンになるとすぐ「うぉぉぉっっ!!!!」と雄叫びをあげる私である。
当然、始終雄叫びのオンパレードだったのだが、ラスト、主演のシガニー・ウィーバーとエイリアンクィーン(エイリアンの母親)の一騎打ちのシーンを興奮状態で観戦してたら・・・・・それまでポコポコだった胎動が急に、今まで感じた事もないような、とんでもない胎動に変わった。
それこそまぁ、腹の奥底からズッコンボッコンと、シガニー&エイリアンのぶっ込み合いに合わせるかのごとく、胎児が暴れ始めたのだ。
そんなあまりの興奮っぷりは、まるでコイツにも今、映画が見えてるようで、なかなかにギョッとした。シガニー・エイリアン・胎児の三つ巴の戦い。
 そんなあの時、腹の中で暴れてた娘も、現在小6。
成長した彼女に「アンタ、エイリアン観てる時とんでもなかったんだよ」と当時の事を話すと、何故かものすごく恥ずかしそうにする。なんで?
いや、なんか分からないでもないが。

 というわけで、今回もまた「計画出産の無痛分娩」であった。
出産の流れはもう分かってる。腰にブッ刺す麻酔の痛みがどんなふうかも知っている。だから、そこまで緊張する事もなく出産に挑んだ。
そのせいだろうか。
お産はとんでもなくスムーズに進んだ。
医師から「そろそろ分娩台に上がりましょう」と言われた時は「え!!??もういいんですか!?」と、あっけなさを感じたほど。通常の自然分娩だったらこんな状況下は、絶叫雄叫びの真っ最中である。なのに「もういいんですか?」って・・・・無痛分娩は、本当に凄い。
 そして、最後にいきんでる時だった。
まだ赤子、産道の道中ににいる道すがらだったのだが。
「もう、泣いてるよ〜〜〜」と医師が言った。
まだ、外の世界に出てきてなくても、もう、すぐそこで泣いている。
そうなんだ、もう泣いてるんだ。
もうちょっとだよー、もうちょっとだよー、そう思いながらいきんでいたら、赤子はおとなしい感じで生まれてきた。長男次男とはまるで違う生まれっぷりであった。

 結局私は、4回子供を産んだ。けれど、産んだ直後に「感動して泣く」という事は一度もなかった。まぁそういう人間なのだろう、と思ったりする。
しかし、どういう訳か、4回目に医者から言われたあのセリフ、「もう、泣いてるよ〜〜」、あのセリフを思い出すと、何故か今でもせつなくなって、涙がつつーーーと流れてくる。産んだ直後は泣かなかったくせに、なんでだよ。子供って、けなげなんだよな。

 というわけで、さっき娘に「アタシ、小学生の時、チャーリズ・エンジェルになりたかったんだよ!」と言ったら「あれって美人じゃないとなれないじゃん」と言われた・・・・成長を感じた。この曲聴いて踊りまくってやろうかと思った。

Apollo440
Charlies Angels 2000

 




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