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なぜ今、世界のビジネスリーダーは東洋思想を学ぶのか

東洋思想

今までは「1時間で1個の商品を作る人」より「1時間で10個の商品を作る人」のほうが価値が高いということを当たり前のこととして信奉されてきていました。

果たしてこの信奉だけでよいのかと、問題提起をする人がいます。なぜこの問題を提起したのかという背景には、「客観的なおデータが正しい」「客観的な事実に基づく評価」など近代西洋文明に基づく概念、すなわち今まで信奉されている「思想の源泉」への揺らぎが起こっているからです。


ではなぜ、今まで信奉されている「思想の源泉」への揺らぎが起こっているでしょうか。

作者によると、世の中は、成長・安定・転換というサイクルで動いています。日本は2000年に入ってから転換期を迎えています。転換期というのは、昨日まで当たり前だった事象でも、明日同じ現象が起こるとは限らない時代であり、過去の成功体験や客観的な事実、データなどすべてが今の時代に活用できるわけではない時代が到来しています。そのため、今まで信奉されていた「客観的なデータは正しい」という西洋の概念だけが足りなくなります。そこで、作者は東洋思想と西洋思想の融合が必要と提起しています。

本書では、東洋思想は「儒教、仏教、道教、禅仏教、神道」5つの思想をさしています。西洋の「外側にある心理(すなわち、誰もが見ることができる)に迫っていく」に対して、東洋は「自分の中にある仏性、神的性に迫っていく」と定義しています。


では、転換期を迎えている中、どんな能力を求めているでしょうか。

作者は世の中の変化を以下の7つのパラダイムシフトにまとめ、求められる能力を東洋思想に基づいていると述べました。

① 「機械的数字論」から「人間的生命論」へ
この章では老子の思想を例として挙げています。
「もっと人間的」「もっと楽しく」という「命を喜ばせる」価値観が求められています。「遊び半分の人」や「楽しんでいる人」は次のイノベーターになるかもしれません。

老子の思想とは:無為自然の世界に心を遊ばせ、真の人間性を感得しながら生きることをよしとする思想。


 ② 「結果主義」から「プロセス主義」へ
この章では禅仏教の思想が例として挙げています。
「目に見える結果を出す」だけではなく、「プロセスを楽しむ人」「ワクワクしている人」が重要としています。


 ③ 「技術・能力偏重」から「人間性重視」へ
この章では儒教の教えが例として挙げています。
これからAI、ビッグデータなど関連した技術革新の「第四次産業革命」が到来している時代では、人の「技術・能力」より「人間性」のほうが重要視され、「自分の最善を他者に尽くしきること」が大事とされています。

 ④ 「見える世界、データ主義」から「見えない世界、直感主義」へ
この章では老子の思想が例として挙げています。
成長期や安定期に、従来のデータの管理と分析することで、ある程度未来が推測できていましたが、このような時代がすでに過ぎ去っています。「過去とは全く異なる未来」の転換期が訪れているため、「見えない未来」が見える直感や努力が必要です。「おもてなし精神」を貫くこと、ブランド力の向上、信頼を築くことなどがこれに当たります。

⑤ 「外側志向」から「内側志向」へ
この章では禅仏教の思想や儒教の教えが例として挙げています。
条件のよさや、体面のよさなど外側の条件だけはなく、自分が満足しているか、わくわくしているか、成長しているかなど「内側動機」がモチベーションを保つキーです。

 ⑥ 「細分化・専門型アプローチ」から「包括的アプローチ」へ
この章では老子の思想が例として挙げています。
二者択一の発想ではなく、「相反する二つの要素が混ざっていることで価値がある」、「相反する要素を成り立たせる」「矛盾を解決する」という陰陽論的な発想はイノベーションのヒントです。

⑦ 「自他分離・主客分離」から「自他非分離・主客非分離」へ
人と人の境界線や線引きがなくなりつつあります。例えば、従来の上司と部下、発信者と受信者、売る側と買う側などはっきり分かれている境界線が現在では非常に曖昧になっています。そのため、他者との情報シェアや協力などが必要で、競争だけはなく、共存の考え方が必須となってきます。

「転換期」と言われると、当然「変化」というキーワードを浮かべるでしょう。
学校やビジネスの教育現場では「適応力」、「臨機応変」や「柔軟性」などもっとも求められる能力の一つだとたまに聞きます。これらの能力もしくは言葉の意味には、「変化に応じて適切な対応する」の意味が含まれ、「変化に対応する」というのが前提としてあります。ただし、転換期というのは「変化する日々」という状況が避けられない時代です。なので、「変化に対応する能力」はすでに最低限必要なものとなり、さらに必要とされる能力は「変化を生み出すこと」に間違いない。上記の7つのパラダイムシフトを意識し行動すれば、新しい変化が生み出せるでしょう。

こちらの本は上司に勧められ、読んでみました。

本書を読み終わって、上記の「変化を生み出す能力」と、「自分と向き合う能力」、この2つがもっとも必要だなぁと感じ取ります。転換期の中、個人の自由度がより多く与えられ、自分が納得しないこと、ワクワクと思えないのであれば、なかなか次のステップに突破できないです。常に自分自身を見つめなおし、他人、会社、社会でどのような位置付けなのか、どのように行動すれば他者によい働きを与えるのかをルーチンとして考えなければいけません。すべてが自分自身の延長線に成り立っていると理解しています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生により世界各国が危機に直面している「大きな変化」の中、我々はどう変化を生み出すでしょうか。


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