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侘しい夜が近づく夜に

 「火曜から寒くなるらしいよ。」 12月も中旬差し掛かり、師走を走り抜けるのを肌で感じる。もうあっという間にカップルの大量生産の時期のクリスマスイブを迎える。クリスマスを迎えると、すぐに年末に入り、すぐに新年を迎える。一年があっという間。今年だけでどれほどの人を好きになってその度に砕けさる。そんなことの繰り返し。
 クリスマスが近づくとどうしてこうもカップルが増加するのだろうか。一方でクリスマス前に別れてしまう悲しい終わりを迎えてしまうカップルも多いらしい。ここ数年、好きでやまない異性とイブという夜を過ごした覚えのない私としては、自分だけどこか世間様から離れたところに置き去れな気分なのである。まだ、自分には全く関係のないような顔でカップルがたくさん群がるイルミネーションの中を歩けるほどに離別することは難しいのだが。
 だから、ここ数年のクリスマスイブは、大半が仕事であり、大半夜は、出かけることもせずに吐き気がするほどに胃に食べ物を詰め込んで、胃袋だけでも満腹に満たしてしまう。満腹にして苦しくなって、そのことだけを考えることで心の満たされなさを考えずに済むように無理やり整える。そんなふうに自分をごまかしてここ最近のイブを過ごしてきた。

でも、もうそろそろ限界。

 とはいえ、この人と一緒にいたい。なんて好きな異性もいないし、そんな寂しいと感じる夜に共に癒やし合うような心をすべて許せるような友人は、一人しかいない。一人そんな友人がいれば幸せだろうと思う人もいるだろう。
 しかし、彼女はまだ学生で学生は社会人の私とは違って、出会いもたくさんあるだろうし、学生ならではの付き合いもあるだろう。年上の私に彼女の青春を奪うことはできないので、クリスマスなんていう世間様様が騒ぐイベントに自分が寂しいからといって巻き込むことなんてできないのである。

結論からして、今年も一人で過ごすことになるだろう。

 それで今は、いいのだ。変にクリスマスだからといって、誰かと付き合ったり、誰かに会ったりすることは、できない性分なのだ。時間もお金も労力も全てにおいてムダにしたくないという思いが勝ってしまうのである。ムダしてしまったという考え方は、人それぞれに違うのかもしれない。
 好きでもない、行為も抱いていない異性と過ごすことは、ムダでしかないのだ。私としては、中途半端な関係性の異性と過ごすか、一人で自分の好きなものを食して自らを満たすかで考えたら、圧倒的に前者を選んでしまうのである。
 しかしながら、会ってデートでもしなければ次へもどこへも進展できないのであるから、困ったものである。出会いに先行投資しなければ、好きな人ができ、幸福が手に入るないのであるのだから。誠に悩ましい。
 ただし、悩めるということが大変恵まれているのだと思えることは、私が大層幸せ思考な持ち主だからなのだろうと心から思うことができる。

ああ、なんて幸せ者なのだろう私は。


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