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【あべの"防災"ほっとカフェ】開催レポート・2024/07/06(土)

 皆さんこんにちは、あべのまちセンです!

 今回は、2024/07/06(土)に開催した、あべのまちセン主催企画「あべの"防災"ほっとカフェ」のレポートをお届けします!

 阿倍野区の災害避難所に指定されている「明浄学院高等学校」を会場にお借りして、「阿倍野区に実際に災害が起こったら……」というシミュレーションや、地域の避難訓練にも活用できる「もしもに備えるための、ゲストスピーカーによる取り組み紹介」など、盛りだくさんの内容で実施しました。

 当日ご参加くださった方は振り返りに、残念ながら参加できなかったという方もぜひ、こちらの記事で"ヴァーチャルほっとカフェ"にご参加いただけますと幸いです。

会場としてお借りした、明浄学院高等学校 新校舎

私たち阿倍野区まちづくりセンターは、「地域活動協議会」の支援を中心に、地域活動のサポートをしています。このnoteでは、地域活動の振興を目的として、地域活動協議会のものを中心に、地域の暮らしを彩ったり、有事に備えるための地域の営みや、それらを担う組織、プレイヤーなどについてご紹介していきます。


あべのほっとカフェって?

 「あべのほっとカフェ」は、私たち阿倍野区まちづくりセンターが主催する自主企画です。地域の拠点を会場に、地域活動のプレイヤーと、これから地域活動に参加したい地域の皆さんが幅広く、カジュアルに交流する会です。

 不定期で年に2回ほど、阿倍野区内の地域活動協議会と、地域で活動する企業・団体・学校など、地域の皆さまの交流の場を設け、地域が抱える課題の解決策を探り、新たな連携・協働を模索することを目的に開催しています。

 例えば昨年度(令和5年度)は、「育徳コミュニティセンター(現mazeruba)」、「あべのキューズモール」を会場にお借りして、多様な人々が関わり合い混ざり合う「ごちゃまぜコミュニティ」のあり方、また、高齢化が課題となっている地域活動に若者がどのように参画していくか、「地域と若者のかかわり」をテーマとして実施しました。


令和6年度「あべの"防災"ほっとカフェ」

 それでは、ここからは、令和6年度のほっとカフェ第一弾、2024/07/06(土)に開催した「あべの防災ほっとカフェ」についてご紹介していきます!

 今回の会場は、阿倍野区・文の里地域で100年以上の歴史を誇る「明浄学院高等学校」をお借りしました。地域の災害時避難所にも指定されている明浄学院で、地位活動協議会や各地域の防災担当の方をはじめ、広く住民、市民の方々にご参加いただく会となりました。

開会挨拶

 まずは、本企画のプロデュースを行った、防災士の資格を持つあべのまちセンまちづくり支援員・多田より、参加者の皆さまへご挨拶させていただきました。

  阿倍野区まちづくりセンター山中・多田より開会の挨拶

 2024年1月に起こった能登半島地震の記憶も新しく、今後起こると予想されている南海トラフ巨大地震に対する備えについて今一度真剣に考えるなど、地域の皆さまの防災意識は高まっています。

 阿倍野区では、地域活動協議会や連合振興町会をはじめとして、地域活動に関わる皆さまが毎年、まちなか防災訓練を実施しています。しかし、大切な取り組み・有事への備えである防災訓練・避難訓練ではありますが、毎年の開催となると、地域の防災担当の皆さまの負担も大きく、また「ネタ切れ」や「参加者の固定化」といった課題が生まれることもあります。

 そこで、今回の「防災ほっとカフェ」は、

・明浄学院高等学校という、普段は足を踏み入れることのない地域の避難所を会場に、普段は混ざり合うことのない様々な地域の住民や、地域外からの通勤者、通学者と共に、災害時の避難所運営シミュレーションを行う。

・様々な取り組みをしているゲストスピーカーの講演を通じて防災についての知見を共有し、また、ゲストスピーカーとのつながりを通じて、今後の防災訓練のネタを発掘する。

 以上の2つをテーマとして実施しました。


避難所運営シミュレーション


 まずは、1グループ8名ほどのグループを8つに分け、大判印刷をした明浄学院高等学校の地図を用いて、避難所運営のシミュレーションを行いました。

「もし阿倍野区で災害が発生し、明浄学院高等学校に避難を行ったら……」

 という想定のもと、「本部」をどこに設置するのか、「怪我人」をどこに運び込み、どのように支援を行うか、「感染症」が発生した場合はどのように対応するのか、など、様々なシチュエーションごとに、校内図を見ながら避難所の配置・運営についてディスカッションを行いました。

 グループワークには、明浄学院高等学校ユネスコ俱楽部の学生さんや、防災に興味を持ってくれた明浄学院高等学校の学生さんが参加してくださり、学校に対する生の声をもとに、ディスカッションをリードしてくれました。

 仮に、平日の日中に災害が起こった場合、実際に生徒さんがいる学校に地域の皆さまが避難してくることになります。そのような事態にどう備えるのか、リアリティのあるシミュレーションとなったのではないでしょうか。 

ゲストスピーカーによる講演「日本防災普及協会」

 上記の避難所運営シミュレーションの合間に、ディスカッションのテーマに即した活動をされているゲストスピーカーによる講演を行いました。

 まずは、お隣・天王寺区在学の高校生が設立した学生団体日本防災普及協会が、災害時の応急手当についての講演と、応急手当の実演を行ってくれました。

代表・千星さん(高校一年生)による講演

 防災訓練の定番ともいえる応急手当の訓練。多くは地域の消防署に依頼を行い、災害訓練時に出張講習をしてもらうのですが、地域の訓練と消防署のスケジュールが合わないこともしばしばあるそうです。

 しかし、応急手当の訓練・講習を実施できるのは消防署だけではありません。「応急手当普及員」という資格を持っていれば、消防署から備品をレンタルし、応急手当の訓練・講習を実施することができます。
 
 「日本防災普及協会」の学生さんは、応急手当普及員の資格を取得しているため、今回のほっとカフェでも応急手当の実演を行ってくれました。なお、実演のほか、救命人形やAEDなどの備品レンタルといった下準備なども全て、日本防災普及協会の皆さんが行ってくれました。

今井さん・福西さん(ともに高校一年生)による応急手当の実演


 地域の避難訓練など、日本防災普及協会に応急手当に関する講習を行ってほしい場合は、ぜひ一度、あべのまちセンまでご連絡ください。

 また、日本防災普及協会では、一緒に活動するメンバーを募集しています。詳しくは以下のInstagaramもご覧ください。


ゲストスピーカーによる講演「阿倍野区保健師 飯田係長」


 続いては、阿倍野区の担当保健師、飯田さんによる、能登半島地震被災地支援の報告と、それをもとにした避難所運営についての知見共有の講演についてご紹介します。

阿倍野区役所保健福祉課・飯田係長による講演

 今回、飯田さんが支援に向かったのは、石川県小松市の「二次避難所」です。二次避難所とは、災害が起こってしばらくしてから、高齢の方や障がい、持病を持った方など、より配慮の必要な方々を集めたり、あるいは、被害の大きな被災地近くの避難所から、支援を行いやすい・受けやすい周辺地域に再度避難をして暮らすために作られる避難所です。

 飯田さんは保健師として、避難者の皆さんの健康観察などを行って来られました。そこで、活動時に気付いた、避難生活時に気を付けるべきことについて、具体的に教えていただきました。

  • 栄養バランス

 まずは被災時の食事の栄養バランスについて。

 今回、飯田さんが派遣された石川県小松市の二次避難所では、食事は主にお弁当が支給されていました。しかし、数か月にも及ぶ避難生活では、お弁当のメニューはレパートリーが少なく、食事に対する意欲が減退してしまう被災者さんもいらっしゃったそうです。

 また、平時には問題ありませんが、揚げ物などの油ものや、塩分強めの味付けが多く、基礎疾患や健康リスクを抱える方にとっては、長期間食べ続けるには理想的とはいえない献立も散見されるそうです。

 これに関して飯田さんは「例えば、揚げ物は衣をはがして食べたり、お漬物は全部食べずに残したり、保健師などと相談しながら、ご自身の身体に優しいようにお食事を調整することが大切です」と対応策を提示されていました。

  • フレイル予防

 続いてはフレイル予防について。

 フレイルとは、健康な状態と要介護状態の中間の段階を指します。

 年齢を重ねていくと、心身や社会性などの面でダメージを受けたときに回復できる力が低下し、これによって健康に過ごせていた状態から、生活を送るために支援を受けなければならない要介護状態に変化していきます。

厚生労働省「健康長寿に向けて必要な取り組みとは?
100歳まで元気、そのカギを握るのはフレイル予防だ
 より

 
 先ほどご紹介した食事の問題のほか、精神的、身体的ストレスがかかり、移動・運動も制限されがちな避難生活においては、このフレイルが急速に進行する恐れがあります。

 しかしフレイルは、適切な対策を行えば予防可能であり、また、元の健康な状態に戻ることができる、可逆性のある状態である、という特徴があります。

 そのため、避難生活の中でも、可能な範囲でラジオ体操などの運動を心がけることや、周囲の人々と交流して心の健康も保つなど、心身を弱らせないための工夫をしていくことが大切です。

 また、高齢者の方だけでなく、全世代に降りかかる可能性があるのが「エコノミークラス症候群」です。

【エコノミークラス症候群とは】

食事や水分を十分に取らない状態で、車などの狭い座席に長時間座っていて足を動かさないと、血行不良が起こり血液が固まりやすくなります。その結果、血の固まり(血栓)が血管の中を流れ、肺に詰まって肺塞栓などを誘発する恐れがあります。

厚生労働省「エコノミークラス症候群の予防のために」より

 こちらも、定期的なストレッチや運動などを心がけることで予防することが大切です。

 今回の避難所支援経験をもとに、飯田さんは最後に、

「運動や食事など、様々に気を付けるべきことはありますが、一番大切なのはコミュニケーションです。長引く避難生活という心身ともにしんどい状況でも、周りの方とコミュニケーションをとって心を元気に保っていれば、運動や食事に気を付ける余裕が生まれてきます。そのためにも、普段の生活から地域や周囲の方とつながりを作っておく、人と関わる習慣を作っておくことが、もしもの備えとしてとても重要です

 と締めくくっていました。


ゲストスピーカーによる講演「AKINDO SPARKLE株式会社」


 次は、大阪府立住吉商業高校の学生たちが、大阪府内の他の高校の学生と共に設立したAKINDO SPARKLE株式会社の取り組みについて発表を行いました。

 AKINDO SPARKLEは、大阪府立住吉商業高校ほか、商業やものづくりなどに取り組む学校の学生たちが設立した株式会社です。商売や経営、デザインやものづくりなどの専門的な学びを、社会の中で実践・実現していくことを目的に、学校という枠を飛び出し、株式会社という形で活動しています。

 今回は、住吉商業高校の学生たちが、被災時にも美味しく食べられる備蓄パンのプロジェクトについて発表を行いました。

 災害が発生した際、避難所での生活や、ライフラインの供給もままならない中では、しばらくは防災備蓄食を中心に食事を摂ることになります。

 備蓄食というとカンパンなどを思い浮かべる方も多いかと思いますが、住吉商業高校の学生らがリサーチしたところ、被災経験のある方々は、パサパサとした食感や味のレパートリーの少なさなど、「カンパンをはじめとした従来の備蓄食だけでは、食事に対する意欲を維持することが難しかった」という経験をされていたそうです。

 そこで学生たちが考案したのが、被災時にも美味しく食べられる備蓄食です。続くリサーチの結果、大阪で、しっとりと美味しく食べられ、味のレパートリーも複数種類ある備蓄パンを作っている会社の存在を知り、コンタクトをとりました。現在は、避難生活時にも退屈しない、遊びのあるパッケージデザインなどを組み合わせたコラボ商品の開発に取り組んでいます。

 また、備蓄用の食品といえど、消費期限は存在します。AKINDO SPARKLEの学生たちは、備蓄パンを無駄にしないために、消費期限前にパンを回収し、子ども食堂などへ届ける、さらには、パッケージングの作業を就労継続支援B型事業所(障がいをお持ちの方などが働く作業所)で行うなど、防災とSDGsを掛け合わせた展開を構想しています。 

ゲストスピーカーによる講演「 京都大学防災研究所・黒澤さん」

 最後のゲストスピーカーは、京都大学防災研究所で防災について研究している黒澤さんです。

 黒澤さんは「古今災考」というプロジェクト名で、過去の災害事例を研究し、そこから得られる知見を今後の防災に活かす、という取り組みを行っています。

 今回は、1923年に起こった関東大震災、その中でも、復興作業で活躍した学生ボランティアを題材に、災害が起こったあと、どのように日常を取り戻していくのかについて、参加者の皆さんと考えるワークを行いました。

  関東大震災の発生時、当時の東京大学の学生たちは「学生救護団」を結成し、被災者の救援・支援活動に奔走しました。その活躍は行政も認めるほどで、彼らの救援・支援活動にお墨付きを与えていました。

 しかし、被災から時間が経つにつれ、「学業に戻りたい」と考える学生も出てきました。その際、市民や学生たちの間で、活動を続けてほしい・続けたい、学業に戻ってほしい・戻りたい、という意見の相違が生まれたそうです。

黒澤さんによる関東大震災当時の状況説明

 こういった状況は当時に限ったものではありません。現代においても、災害が起こり、避難所になっている学校をいつ通常の学びの場に戻すのか、お年寄りの多い地域でボランティアとして復興を手伝う学生をいつ学業に戻すのか、受験など、日程が決まっている予定についてどのように融通を図るのか、など、「学生」というテーマ一つだけでも、様々に考慮すべき事情があります。

 この事例紹介のあと、黒澤さんは会場に

「皆さんは『学生救護団』が学業に戻りたい、と言ったとき、それに賛成しますか? もう少し支援を手伝ってほしいですか?」

 という質問を投げかけました。

 過半数の人が「学業に戻ることに賛成」としていましたが、中には「自分が救護団の立場なら、復興の目途が立つまでは、学業よりも支援を優先したい」という現役の学生の声も上がるなど、参加者それぞれが、被災後の状況について、一歩踏み込んだ想定をすることができました。

 防災というと、災害が発生した直後のことを考えることが多いですが、そこからどのように日常を取り戻していくのか、という、より長いスパンでの防災を考えることができました。

閉会挨拶

 最後に、避難所運営シミュレーション、ゲストスピーカーによる講演をすべて終え、あべのまちセン多田から、会全体の総括を行いました。

 実際に災害が起こった際の避難所での過ごし方や、自分自身が主体的により良い避難所の環境を作っていく、という避難所運営についての意識、また、様々な取り組み・視点から防災について考えることができた今回のほっとカフェ。

 企画の趣旨である「実際の避難所指定場所での避難所運営のシミュレーション」と「今後の地域における防災訓練に活用できるヒントの提供」について、達成できたのではないでしょうか。

 また、今回の企画運営に協力してくれたシミポタ(大阪市市民活動総合ポータルサイト)の紹介、活用の提案や、会場を提供してくれた明浄学院高等学校の先生から地域の皆さまへのご挨拶があり、参加者の皆さんの活動を広めるためのヒントや、いざ災害が起こった際にスムーズな連携を図るための、普段からの関係づくりについて呼びかけがありました。 

シミポタによる「あべの防災ほっとカフェ」のレポートはこちら。

ネットワーキング

 本プログラム終了後、30分ほど、ゲストスピーカーと地域の皆さま、様々な取り組みをされている参加者の皆さまがつながる時間をとりました。名刺やチラシを交換しながら積極的にお話する姿が見られ、新たな連携・協働の種が生まれていました。

この会を通じて、「日本防災普及協会」の皆さんが、シミポタとつながり、レポート記事をアップしてくれています。
記事はこちらから。

まとめ

 昨年度に引き続き、地域の会場をお借りして開催した今回のほっとカフェ。コロナ渦も落ち着いたことや、シミポタによる広報の協力、新たに建て替えられ、地域の避難所としても指定されている明浄学院高等学校での開催、1月に起こった能登半島地震による防災意識の高まりなどもあり、一般申し込みを40名締め切りとしていたところ、スタッフも含めて70名以上の方にご参加いただくなど、盛況な会とすることができました。

 ゲストスピーカーのほとんどが学生・若者ということや、SNSでも広報活動を行ったため、若い中では中学生の参加者もみられるなど、地域活動の輪の広がりを感じることができました。

 本企画の主な目的である、各地活協の防災担当者に向けた今後の防災訓練に活用できる人材・コンテンツの紹介・提案のほか、地域住民の皆さまに向けても防災意識を高められるような内容を実施できたと自負しております。

 今後は、この会で生まれたつながりなどもフォローし、今回のほっとカフェで完結するのではなく、さらなる連携・協働を育んでいきたいと考えています。

 最後までお読みくださり、ありがとうございました。