PARCO劇場『ピサロ』を支えるダンサー
久しぶりに劇場に行ってきました。現在、東京・PARCO劇場で上演されている『ピサロ』を観劇に。
この作品には #私のイチオシ ダンサーNana Suzukiさん (パンフレット表記:鈴木奈菜さん、ポスター下段左から4番目)が出演されていたからです。
Nanaさんはコンテンポラリーダンサーです。コンテンポラリーダンスの舞台はもちろん、このような演劇やミュージカルの舞台にも多数出演されています。ダンサーとしてだけでなく近年振付師としても舞台に携わり、また自身の即興でのダンスをYouTubeやnoteでもupされています。
小さい身体なのにも関わらず、それを感じさせないダイナミックな動き。舞台に立つと不思議と目が惹きつけられ、身体だけではない顔から足のつま先までも表情を持っているかのような表現力。魅力的なダンサーであり、役者でもあるように私は感じています。
今回、舞台の内容の知識は何も持たず観劇してきました。ここから先の文章は少しネタバレのような部分もあります。お気になさる方はぜひ劇場でお楽しみください。またもしもこのような時期で・・と観劇を迷っている方いらっしゃいましたらこちらを参考にしてみてください。
劇場の入り口ではサーモグラフィーでの体温測定、劇場内の至る所にアルコール消毒液が置いてあり、全スタッフさん達はマスク着用を徹底されていました。通常は解放されているであろうCAFEスペースは空いておらず、代わりにペットボトルでの飲み物販売。館内放送ではマスク着用・咳エチケットのお願いが放送。劇場の横は庭園のようなスペースもあるため換気もしっかりされており、また後に知りましたが急病人に対応できるよう看護師さんが常駐していたそうです。お客様が少しでも安心して楽しんでもらえるようという劇場の方々の配慮をとても感じました。
いろんなイベントが開催されない中のこちらの作品の開幕にきっと賛否両論あったかと思いますが、私はこちらの作品を創られた演者の方々・スタッフさん達の熱が伝わる舞台を観れたこととても嬉しく思っています。できることならもう一度足を運ぼうと思いました。
舞台の開幕の初めのシーンからインパクトがありました。強烈な背景にただ佇んでいる後ろ姿。その後ろ姿が神々しくて女神かと思いましたが、後に分かるのは宮沢氷魚さんが演じているインカの王アタウアルパでした。独特の雰囲気が印象的でただ美しかったです。 ピサロ演じる渡辺謙さんの存在感は圧倒的でした。”見えないスポットライトが常に照らされている” そのような印象を受けました。内容を知らず舞台を観劇することは今までほぼないので、ついていけるか不安な部分があったのですが出演されている役者の方々の創りだす世界にどんどん引き込まれているのを感じました。
物語が進むにつれて、今か今かとNanaさんの登場を待ち望んでいました。Nanaさんはインカ帝国の原住民・インディオの一人として登場しました。いつものトレードマークのショートカットではない姿や雰囲気が女性らしさを増しドキッとしました。インディオを演じていらっしゃったのはダンサーの方々かと思われます。 舞台ではよく、台詞を話される役者の方々と”アンサンブル”と呼ばれるダンサーの方々が共演されています。アンサンブルのダンサーの方々は台詞はなく、身体表現のみで舞台を彩る”脇役”とも言われます。ですが私はいつもこのような舞台を観劇するたび、このアンサンブルの方々の存在の大きさを感じずにはいられません。
インディオ演じるダンサーの方々が出てきて一気に舞台がインカ帝国の世界観を増してきました。所作が一つ一つ美しい。インカ王がもっと神々しい王に見えてくる。インカ王がインディオを引き連れて登場するシーンは思わずぞくっと鳥肌が立ちました。”王国の人々”というよりは”天界の人々”なのかと感じてしまう。それはもちろん宮沢氷魚さんの放つオーラもあると思うのですが、彼をそう見せているのは周りを囲むインディオの存在が大きいと思うのです。
1幕の終わりにスペイン人がインディオを虐殺するシーンはあまりの迫力に涙が溢れそうになりました。ダンサーの方々の表現力の凄み。Nanaさんかっこよかった!!舞台装置としてある階段と背景の演出も相まって、舞台上だけじゃなく客席全部が異様な雰囲気に包まれました。絶望を感じて終わる1幕。2幕が待ちきれない。一体これからどうなるのだと不安とワクワクで心渦巻いて休憩を迎えます。
2幕が始まり、Nanaさんはインカ王に仕える女性3人のうちの一人として頻繁に登場していました。(明記されてはいないが多分妻の一人)髪が他のお二人より短めの方がNanaさんです。2幕はダンスとしての場面は少なかったように感じ、正直‥もっともっとダンスシーンも観たかったのが本音です。ぜひ一度Nanaさんのダンスしている姿を観てください。しなやかにダイナミックにどこからそのエネルギーが溢れてくるのかと驚かされる。音楽のタイミングの取り方も絶妙で、観ていて”そこでそんな風に踊るの!”という驚き。裏切られる喜びみたいなものを彼女のダンスから感じるんです。とっても面白い。とにかく興味深い。最高なんです。
確かにダンスシーンは多くはなかったけれど、ダンスシーンじゃなくてもやっぱり凄いなぁと思った瞬間なんていっぱいあって。今思い出すのは後ろ姿‥なんか感動したんです。 スッとした綺麗な後ろ姿だった。役が降りている。台詞がなくとも、背中で語られているような‥ ちょっとしたこと。でもそのちょっとしたことを大事にする演者の方々、凄いなぁと思うのです。
作品の内容もとても興味深いものでした。”愛”を知らないもの同士が出会い触れ合っていく。もしもピサロが、もしもインカ王が…あの時違う選択をしていたらどうなっていたのだろう。そんなことを考えさせられる舞台でした。帰りに買ったパンフレットには役者の方々・演出家それぞれの考えがぎっしり書かれていて、じっくり読みこもうと思いました。読み込んでからまた作品を観るとまた違った見方ができるのだろうなぁと思います。
出演されていた演者の方々はもちろん、その方達を支える裏方スタッフの方々、すべてのパワーが結集されて創られたことが舞台上で存分に発揮され初めから終わりまで熱量が凄かったです。休憩時間を合わせ約3時間の舞台でしたがあっという間に終わってしまいました。
今回の舞台を観劇し改めて思ったこと。Nanaさんは私にとってやっぱり最高のダンサーであること。そしてやっぱり舞台って凄いってこと。 エンターテインメントや芸術が私達に与えてくれるものは想像以上。きっと今このような時期だからこそ、それを実感している方々は多いのではないかと思います。大好きなアーティストのイベントがなくなり、落ち込み悲しんでいる人たちも多いはず。そんな中、今回この舞台が観れたことは私にとっては本当に有難いことでした。
『ピサロ』も初日を変更しての開幕だったそうですが、その影響で追加公演が決まり4月30日まで渋谷のPARCO劇場にて公演されています。作品に携わっているみなさんはいろんな想いを抱えて舞台に立っていらっしゃると思います。最後のカーテンコールでそれがひしひしと伝わりました。無事にこのまま舞台を駆け抜けることができること祈っています。応援しています。素敵な舞台をありがとうございました!! ぜひnoteのみなさんも『ピサロ』を観劇してみてください😊
Nana Suzukiさんのnote → https://note.com/nanasuzuki
ピサロオフィシャルサイト→https://stage.parco.jp/program/pizarro/
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