刹那の知覚体験 -オラファー・エリアソン展@麻布台ヒルズギャラリー
オラファー・エリアソン展:相互に繋がりあう瞬間が協和する周期@麻布台ヒルズギャラリー(-3/31)。
はじめにアウトラインがあったほうが、ダイナミックな(同時に、何をポイントに鑑賞したらよいのか、つかみどころがないともいえる)作品の輪郭がつかめるかも?という気が個人的にするので、概要の引用から(原文はすべてつながっており、当方で改行)。
蛍の生物圏(マグマの流星)
はじめに出逢うのは、この作品だ。
球体のなかで光がうごめく。
映る影もまた、生き物のように動きをもって壁を移動する。
終わりなき研究
次の展示室ではじめに目に入るのは、ぐるぐると回転し続けている、この木製の機械(?)のようなもの。
台の下の、振り子のゆらぎが動力源のようだ。
セットされた紙に、自動的に図形が描かれていく。
壁に貼られているのが、その完成作品。
ハーモノグラフについては知らなかったけれど、いかにも19世紀という感じで、科学の香りがする。
そういえば、この機械を操って、自分の作品を描く体験付きのチケットも販売されていた。
ダブル・スパイラル
ぐるぐると回転を続ける、天井から吊るされた巨大な「知恵の輪」のような立体。
上昇するように、同時に下降するように。しばらく見ていると、足元がおぼつかなくなってくる。
本作の魅力のひとつが、影だと思う。ハーモノグラフを観た直後だからかもしれないが、床の上の影も、留まることなく床に円運動の軌跡を描き続ける。
呼吸のための空気
観ただけではなかなか、意図をつかみかねる作品もあった。
「オラファー・エリアソン:想像力を擁する砂漠」 からのドローイング
溶けゆく地球 (バナジウム・イエロー)、あなたのエコーの追跡子
私のエコーの痕跡、溶けゆく地球 (カドミウム・イエロー、 グレー)
瞬間の家
最後の展示室は、厚いカーテンで覆われている。暗闇で展開されるのは、こんな作品だ。
予備知識を持たずに展示室に入り、時間をかけて観ているうちに、本作がとてもシンプルな仕組みであることに気づいた。
ホースで水を撒くとき、水流が強すぎてホースが手を離れ、水が乱舞することがある。暗闇でそれと同じことをして、強いストロボライトを点滅させる。それによって水滴は、宝石のように闇にきらめく。刹那の知覚体験。
その仕組みは分かっても、美しく魅せられてしまう作品の魅力は変わらない。写真を撮りながら、長い時間を過ごした。
意図を理解することは難しくても
展示の最後は、この文章で締めくくられている。
作家のインタビュー画像が視聴できるスペースもあった。インタビュー中でオラファー・エリアソンは、 鉱山から回収された亜鉛廃棄物というリサイクル素材に特化した初めての作品「呼吸のための空気」について、アートとサステナ ビリティについての考えを語るなどしている。
ただ、そこで語られていたのは大きな枠組みの話であり、個々の作品ではない。作品については、鑑賞者に解釈が任されているということなのだろう。
美しい、興味深い、面白い。鑑賞をしてその時々に生まれた感想は数あれど、どれにしても、「作家の意図」が気になった。それは、何か多くのものを取りこぼしているに違いない、という確信だ。
だからこそ、もの言いたげなオラファー・エリアソンの作品は、しっかりとまだ記憶に残り続けている。
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