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森美術館(六本木ヒルズ)

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現代美術の「先生」的な存在の美術館。メンバーシップに入り、企画展には必ず訪れています。今後はアーティストトーク、キュレイターズトークのイベントについても感想を書き綴ることができれ…
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シアスター・ゲイツ展 -03 アフロ民藝の意味するもの

 シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝 2024.4.24(水)~ 9.1(日)  心揺さぶられる展覧会だ。すでに何度も鑑賞した。  前回からの続きで、下のフロアガイドの向かって右の広い展示室で、呼応するように並んだ「民藝」とアートが融合した作品たちを鑑賞し、  「年表」を鑑賞し終えて、これで展示終了と思って先に進むと、意外な世界が広がっていた。 小出芳弘コレクション  それは、こんな空間だ。  この膨大な数の焼き物や道具が何かといえば、  ひとりの陶芸家の遺した

シアスター・ゲイツ展 -02 巨大空間に[民藝]を感じてみる

 シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝 2024.4.24(水)~ 9.1(日)  4月のアーティストトークにも参加して、作家の肉声と、おおらかで親しみやすい人柄を垣間見ることができた。  (たぶん、得るものが多すぎて)なかなかまとめることができなかったのだけど、シンプルに展示順に振り返ろうと決めて、  その2回目。 ブラックネス  フロアガイドの、向かって右側の長方形の広い空間。  そこには、「民藝」ワールドが広がっていた。 ドリス様式神殿のためのブラック・ベッセ

シアスター・ゲイツ展 -01 何によって揺さぶられているのか

 シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝 2024.4.24(水)~ 9.1(日)  民藝、は関連本を数冊読んだことがあるだけで(理解はしていないと思う)まったく詳しくもないし興味も……と思いながら、シアスター・ゲイツ展にすっかり嵌った。  封切翌日の4/25にはアーティストトークにも参加し、作家本人から作品について伺う機会も得た(ゲイツさんはとてもパワフルかつチャーミング)。  すでに5回は鑑賞し、作品世界と展覧会の構成に、ぐいぐい惹きこまれている。写真もたくさん撮ったのだ

ループの結び目,代入-グエン・チン・ティ《47日間、音のない》@森美術館

 森美術館で開催中の「MAMコレクション018:グエン・チン・ティ」(-9/1)。  4月27日にアーティストトークに参加して、しかしそのままになっていた。  トークはとても興味深く、コンセプトのようなものは、なんとなくつかめた気はする。しかし作品空間に入り込むと、その中に深く沈んでしまって、なかなか言葉にならないし、すっきりしない。  それほどに、魅力的で、ふしぎな作品だ。最近になって再訪し、4回ほど連続で作品を鑑賞した。 30分、2スクリーンの映像作品  まず作

アートという手段で環境を変える -アグネス・デネス [私たちのエコロジー展]@森美術館

 六本木ヒルズ。  森美術館。  本展覧会には、すでに何度も足を運んだ。  開催は今月末まで。これから、特に印象に残った作品とその理由を、手短に紹介していこうと思う。 アグネス・デネス  本展には、アートを以て抗議を示す作品も数多く展示されている。ダイナミックで、そして洗練を感じたのが、アグネス・デネスの作品だ。 「小麦畑―対立:バッテリー・パーク埋立地、ダウンタウン・マンハッタン」(1982)  タイトルをヒントとすると、この1枚の集合写真のパネルからは、「も

【写真】11/30の紅葉と,谷口雅邦,殿敷 侃 の立体作品(森美術館)

 未整理の写真が出てきた。昨年11月30日、参宮橋あたりを紅葉を見ながら散策し、夕暮れ時に森美術館に入った、そのときものだ。  撮るときにどうしてもピントが甘くなってしまう標準レンズで、しかもコントラストが最も激しい時間に紅葉など撮ったものだから、ふしぎな曖昧さがが否めない。ただ、眺めてみると、それがそのときの心象を著しているいるような気もして、気に入ってしまった。  参宮橋駅を通り過ぎ、強い風の下で大きく揺れる銀杏の木の下を歩いた。  黄色い葉の1枚1枚が、まるで蝶か

囁き声と,見えない世界との繋がりと -MAMプロジェクト031 地主麻衣子@森美術館

 森美術館に、不思議な映像インスタレーションが展示されている。  11/18に開催された、作家自身によるトークの内容も少しふまえつつ、その魅力を書いてみたい。 スクリーン、回転するモニター、謎のダクト  地主麻衣子「空耳」。展示風景は、こんな感じだ。  スクリーンに展開するのは、祖父の法事に参加した女性が、その夜に体験するできごとだ。  作家自身が、物語をゆっくりと、ささやき声で回想し、それに対して再び作家自身が質問し、という対話形式で物語が進んでいく。  だから

[私たちのエコロジー展]第1章 森美術館-帆立貝は粉砕され,人造人魚は海洋をゆく

 10月18日「森美術館開館20周年記念展私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために 環境危機に現代アートはどう向き合うのか?」開催(2024年3月31日まで)。  ゲスト・キュレーターによる講演会も含め、18日と19日に行ってみたのだけれど、鑑賞したのは第2章まで。そこまででもかなり見応えがあった。 本稿では、第1章を紹介していく。 ■ ■■ ハンス・ハーケ《無題(1968-1972/2019年)》 一作目は、写真作品から。  拡大して見ていく。  組み写

ヘザウィック・スタジオ展④スケッチと部分模型からプロセスを知る

 六本木ヒルズ展望台(東京シティビュー)で開催中の「ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築」@東京シティビュー。6月4日まで。今回は【セクション5】【セクション6】と、部分模型、デザイン画の展示を紹介。 ■ ■■ ツァイツ・アフリカ現代美術館 ■ ■■ 拡張する家具(シリーズ)  天井から吊るされたこの写真を観るまで、丸テーブルと楕円テーブルそれぞれ単体が展示されているものと思っていた。  仕組みを知った後だと、円形テーブルの天板の厚さは、デザインでそうなっている

ヘザウィック・スタジオ展③電気自動車[エアロ],Google新社屋ほか

 六本木ヒルズ展望台(東京シティビュー)で開催中の「ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築」@東京シティビュー。  今回は【セクション2】と【セクション3】から、印象的だった作品・プロジェクトを振り返っていく。 エアロ(電気自動車)  会場入口に原寸大モデル画展示され、とにかく人目を引いていたのが「エアロ」だ。  シャープなのに、なぜか温かみのある印象。上記の「より野心的な環境への貢献」といった言葉ひとつとっても、コンセプトとしてあたためられてきた言葉が、デザインの線

ヘザウィック・スタジオ展②[上海万博英国館]ほか

 「ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築」@東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー)前回は、個人的に気になる麻布台ヒルズが含まれる【セクション4】を紹介した。  今回は最初に戻り、イントロから。 エクストリュージョン(押し出し)  「これはいったい、どうやって作ったのだろう?」というのが、はじめ見上げたときの感想だ。なにしろ巨大なのに継ぎ目がない。そして、精巧な部分と歪みの差が激しく、アート作品と言われれば納得しそうだ。造られ方のヒントは、タイトルにあるわけだけれど。

ヘザウィック・スタジオ展①[麻布台ヒルズ/低層部](2023) から

 遅ればせながら、「ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築」@東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー)へ。  いつでも行かれると思っているうちに、6/4の終了が近づいてきていた(ラララさんからいただいたコメントが恰好のリマインドになり、感謝!)。 [ヘザウィック・スタジオ]の28プロジェクトが展示  天井の高さを生かしたダイナミックな展示も魅力的だ。  展示は6セクションに分かれ、空間を余すところなく使っている印象だ。膨大な数の展示物から、特に印象に残ったものを紹介し

森美術館20周年記念展 ワールド・クラスルーム:⑦ [理科]

「森美術館開館20周年記念展 ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」。本日は、【理科】を。  理科(Science)と書いてあるのに、まずふしぎな感じを受けた。言葉のイメージからすると、展示作には理科的なものと、サイエンス的なものがあるように思えた。 ペーター・フィッシュリ、ダヴィッド・ヴァイス  わたしのなかでの「理科」のイメージはこの作品だ。  広い、工場のような場所。黒いゴミ袋やタイヤといった、生活におなじみのものたちが並び、それらは物理や

森美術館20周年記念展 ワールド・クラスルーム:⑥ [数学] [総合]

「森美術館開館20周年記念展 ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」。5回足を運び、自分にとって無理のないペースで映像作品以外はほぼ鑑賞できた。  本日は【数学】から。 片山真妃  わたしには数学という言語に乏しいため、とても残念なのだけど、作家の創り上げた(数学的な、そして音楽のような)世界観をくみ取れなかった。ここでは覚え書き的に、作品と作家のラフを残しておこうと思う。まず作品から。  一連の作品の、プランドローイングも展示されていた。