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バレンタインに羊羹を作ってきてくれた最高の彼女

 彼女は料理が得意だった。付き合って三回目のバレンタインのことである。高校で彼女は人気ものだった。もちろん、そんな彼女は作ったチョコを学校に持って来ていた。彼女は大量に作ったチョコを女友達で食べあっていた。そこに人気者の男子が近づいて来た。「俺にもくれよ」その男は言った。彼女は躊躇せずにチョコを挙げた。たまたまそこに彼氏の俺は出くわしてしまった。もちろん、彼女も、人気者の男もそんな気持ちはなかっただろう。いわゆる「義理チョコ」である。しかし、やはり彼氏としての俺はその現場を見て少し嫉妬してしまった。その後、彼女は俺の存在に気づいた。「○○も食べる?」俺はもらった。なんだか少し苦い味がした。
 その後、俺は部活があった。彼女は部活がなかったため、先に帰宅した。部活も終わり、近くの公園で彼女と会うことになった。俺はこの時間が好きだった。彼女は学校では人気者。一方、俺は目立たない人だった。そんな感じから、学校での彼女は少し、遠い存在に感じていた。しかし、二人で会うときは違った。俺は「彼氏」、彼女は『彼女』だった。公園に行くと彼女はすでにベンチに座っていた。いつもになく、ニヤニヤしている。何か企んでいるようだ。言わずに俺もベンチに座った。すると彼女は何も言わずに、箱を俺に渡してきた。「なんだと思う?」彼女はそう聞いてきた。さすがに察しはつく、バレンタインだもの。「開けてみて」彼女がニヤニヤしながら言った。俺はゆっくりと箱を開けた。茶色い物体。プルプルしていた。「あーー!ようかんか!」彼女は相変わらずニヤニヤしていた。俺は和菓子が大好物であった。そんなこともあり、チョコではないものをバレンタインにくれた。【少し変わったことをしたい】そんな精神は相変わらず俺と似ている。俺も、普通が好きではなかった。他の人と違いたい、変わっていたい、そう思うことがよくあった。羊羹はとてもおいしかった。お世辞抜きで。やはり彼女は料理がうまい。嫉妬していた気持ちはなくなっていた。俺のためだけの羊羹だからだ。「みんなの」ではない。そんな彼女の変わっているところが好きだった。
 3月14日、俺は彼女に手作りのカステラをプレゼントした。

#忘れられない恋物語
#私のバレンタイン

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