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人生は伏線の連続だと蝶が教えている

星あかりに誘われるように
畦道を歩く
何かが呼んでいる

雨の匂いがする

雨の気配に
蛙がるるると鳴いている
田んぼの水面がわずかに揺れる 
湿った空気

雨の匂いがする

私がここにいる

それは
前から決められていた必然

過去の日々のすべてが
今に繋がっている
そして
今日という日は
未来に繋がる

伏線は回収してみて
初めて
人生における意味に気がつく

あの人に出会ったこと
突然訪れた訪問者
思いがけない知らせ
偶然見つけた文章
ふと立ち寄った店
もたらされた悲劇と挫折
乗り越えるための長い道のり

すべて
今日という日に繋がっている

一見
「つまらない」
そう感じる出来事も
回収してみると
大きな意味をもっていた事実に
愕然とすることがある
一度は通り過ぎた出来事が
煌めきをもって
動き始めることがある

まるで
推理小説のように
日常に散りばめられた
伏線たち

雨の匂いがする

雨降りの日さえ
意味あることのように思えてくる


畦道は
森に続いている

森の入口で
私は立ち止まる
梟が鳴く
足を踏み入れるなと警告している

雨の匂い
森の匂い
田んぼの匂い

ある出来事が
頭の片隅をよぎる

意味を考える
導かれて出逢ったものたち

影と光を落とした日々

光を見つめる
伏線の意味を確かめる

この暗闇が
どうか
美しい未来への
伏線でありますように

扉の向こうに
笑顔の毎日が待っていますように

私は
森に足を踏み入れる
蝶が一羽先を行く
枇杷の実の橙がぱちんと弾ける
梟は
もう鳴かない

雨の匂いはもうしない
これも
ひとつの伏線

蝶一羽雨の匂いを追いかけて
ぱちんと弾ける明日への伏線


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