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早稲田大ビジネススクール(MBA)でシリコンバレー視察

早稲田大学ビジネススクールに通い始めて1年が経とうとしている。MBA取得のためのこのスクールはイベントが目白押しで、インプットの嵐だ。夏休みに受けた英語コーチング(MBAの授業外)や冬学期の授業についてまとめたいのだがそれは後回しにして、この授業はビックイベントだったので残しておこうと思う。

「スタートアップファクトリー」を受講して

MBA1年目の冬クオーターの授業で、「スタートアップファクトリー」とう授業を履修した。スタートアップやアントレプレナー関連の授業で有名な長谷川教授と、ベンチャーファンドを持って実務でスタートアップ投資をしている瀧口教授が受け持っている。

授業は「新規事業を創る」ことがゴールになっていて、履修前にはグループが組成されていることが求められる。私は入学時から履修しようと決めていたので、一緒にグループワークをしてみたいと思う人に声をかけて晴れてメンバーも揃い履修スタート。授業の内容は机上の勉強ではなく、ひたすらアウトプットを求められる。毎週がピッチコンテストのようなもので、教授陣に壁打ちをしてもらい事業案を練り上げていく。

この授業参加者はスタンフォード大学での講義を受けられるということで、私はこれをモチベーションに受講していた。今回は3年ぶりのスターディーツアー敢行で、履修者なら参加資格アリということで、シリコンバレーへ行くことになった。任意参加なので追加で履修単位は得られないが、それ以上に多くの学びがあった。

長谷川先生
長谷川先生によるキックオフスピーチ@サンフランシスコ

滞在中は昼は企業訪問で、せっかくなら観光もしたいしとなると、毎日スケジュールは埋まっていた。観光についても書きたいが今回はツアーに絞っておく。

デロイトとJETROによるシリコンバレー市場講演

デロイト トーマツ ベンチャーサポートの新規事業の責任者やJETROの責任者からお話を頂戴した。サンフランシスコやシリコンバレーの環境、そしてそこでどんなスタートアップサポートをされているか講演頂いた。

シリコンバレーを海外拠点とする企業は、日系大企業が上位に食い込むほど多い。でもその日系大企業が苦戦をしているのは「インナーサークル」に入れないから。海外拠点は作ったものの、そこでの活動に予算をつけることが少なく自前でなんとかしないといけない。自前でシリコンバレーのインナーサークルに入り込むことは難しく、入れないまま駐在期間が終わり帰任をしていってしまう。そんなことをお話されていた。

インターネットで便利に情報にアクセスできる世の中ではあるもの、生っぽい情報は現地でないと分からないなあと、初日にして来てよかったと思った。

PLUG AND PLAYへの訪問

SunnyvaleにあるPlug and Play Tech Center

PLUG AND PLAYの企業訪問でも、日系企業の苦悩を伺うことになった。言語の壁や、現場に裁量権が少ないため意思決定が遅く、日系企業がシリコンバレーのスタートアップに投資ができない状況であるそうだ。

スタートアップは待っていられない、そしてスタートアップ側が投資家を選ぶという状況にあることをおっしゃっていた。だから、英語が喋れないし、意思決定も遅く、(もしかすると)出資額も少ない日系企業を選ぶ理由がスタートアップには無いのだと。日系企業に務める人間として耳が痛かった。

その解決策として日本のCVCが現地採用をしようとしても、採用も難航している企業が多いそうだ。条件が折り合わないと言っていたが、大きくは給与条件と企業文化のマッチングが合わないからだろう。確かに、滞在中に買ったちょっと美味しいサンドウィッチとコーヒーは2500円とかするし、Uberの運転手の年収は1000万円と聞くと、給与だけでも折り合わないのに納得する。

逆に、この壁があるからこそ日本という国が守られているのであって、日本進出したいスタートアップの支援をPLUG AND PLAYサポートしているとのこと。

PLUG AND PLAYのオフィスには日系企業の拠点もあるし、スタートアップのシェアオフィスもあるしで、パーテーション区切りだけで風通し良く交流ができるような作りになっていたのは印象的だった。日本だったらセキュリティー観点で完全個室に区切られていないとダメだと怒られるのだろうな・・と苦笑いした。

エントランスには企業ロゴがずらっと並ぶ
オフィスエリアは風通しが良くコミュニケーションが活発にできる作り
定期的に開催されるスタートアップピッチイベント

DNX Venturesへの訪問

テスラを改造して座席にして働いているスタートアップ社員

San MateoのシェアオフィスにDNXの拠点があり、HERO CITYという名前のビルだった。街はこじんまりしていて、可愛らしい印象を受けた。オフィスの中もHEROというだけあってマーベルのヒーローがそこら中に居た。

この拠点にいるスタートアップは3〜6ヶ月で卒業していくそうだ。このスピード感はスタートアップだけでなくアメリカという国も同じで「やばい!」と思ってからの市場の調整がとてつもなく早いとおっしゃっていた。今は気候変動のスタートアップだけが唯一生き残れる投資領域だと言われており、企業が提供するサービスだけでなく、アメリカのメインの消費者であるZ世代に魅了できる企業かどうかという点でも、消費者行動に良い影響を与えられる企業が評価されているそう。

この土地にはスクールカーストならぬ、シリコンバレーカーストがあるそうだ。カーストのTOPに君臨するのはやはり起業家で、下のリストの順になっているそう。

  1. 起業家

  2. VC

  3. GAFAM

  4. 他大企業

このオフィスで印象的だったのが個室トイレの壁に「TAKE RISK」と大きくポスターが貼られていた。トイレまでメッセージを伝えるのにくすっと笑いもしたが、リスクを取らないことがリスクだというメッセージが強烈だった。

スタンフォード大学での特別講義

スタンフォード大学ビジネススクールのWhang教授

Whang教授の授業は刺激的なメッセージが多かった。こうゆう教授たちがスタンフォード大学のビジネススクールで教鞭を振るい、一流のビジネスパーソンを生んでいるのか。勉強嫌いな私でも面白くて聞き入ってしまった。Whang教授はアジアのバックグラウンドを持つこともあって、日本の理解も深く、日本人学生に向けてのメッセージとしてよりすぐりの言葉をかけてくれていた。以下は、授業の中でメモをとったメッセージ達だ。

  • 日本は改善できるけど、アメリカは破壊をすることができる(SONYのウォークマンに対してAppleのiTunesを例に)

  • シリコンバレーのインフォーマルなビジネス文化は一朝一夕でできたわけじゃない、ちゃんと積み上げられてきたもの。

  • 大学でいうと、MITのほうがお金が稼げるけど、スタンフォードはそこで会社ができる場所。

  • アメリカは効率を重視する。日本は違って、効率よりも偉い人が偉い仕事をすることが重要。

  • 失敗を産まないのと、失敗を避けるのは違う。

現地起業家にも評価されるピッチコンテスト

自チームのピッチ中の写真

同じくスタンフォード大学のセンターで、今回参加した生徒たちによるピッチコンテストがあった。順位は3位だったので、まずまず。

メンバーは日本での授業履修時と同じだが、シリコンバレーのピッチに向けて全く違うビジネスプランに変更をした。授業のときは、運輸業界の人手不足に対するB2Bソリューションをテーマとしていたが、今回は話題のジェネレーティブAIをテーマにしたtoC向けサービスに切り替えた。日本の授業が終わってから渡航まで数週間しかなく、もちろん平日昼間は仕事をしているので、大学院生観点でいう春休みはどこかに消え去った。アメリカ滞在時も平日は企業訪問をし、夜な夜なピッチの準備をした。

このあとのエピソードでも書くが、海外旅行に付き物ではあるがトラブルもあって、心が折れそうになったが、メンバーが鼓舞してくれたおかげでピッチまでたどり着いた。

プレゼン後に、宇宙系のスタートアップCEOが話しかけてくれて、君たちのアイディアが一番良かったと言ってくれたのは救われた。他の評価者もプレゼンの表現を褒めてくれたのは嬉しかった。英語でビジネスプレゼンをしたのは初めてだし、トークスクリプトは全部ChatGPTにお願いしたけど、ChatGPTが壁打ちをしてくれたお陰で英語の準備は相当時間短縮した。それよりもチームメンバーが、最後まで良いアウトプットを出そうとチーム全体の士気を引き上げてくれていたのは、この仲間とシリコンバレー来てよかったと心から思わせてくれた。

スタンフォード大学のMBAビジネススクールのキャンパス

不便で便利なアメリカ

シリコンバレー滞在中に大きなトラブルにあった。滞在期間中、サンフランシスコ、サンノゼ、と日々訪問場所が異なるため、ホテルからAirbnbに途中で宿を切り替える予定になっていた。
Airbnbはいわゆるアメリカのドラマに出てきそうな平屋一軒家で楽しみにしていたのだが、その宿泊日に発生した大嵐の影響でエリア一帯が停電になっていた。それに気づかずUberで宿まで到着、真っ暗なままの家に入ってブレーカーを探すも電気がつかない。Uberの運転手も心配して手伝ってもらって、すぐに自然災害による停電だと分かった。

みんなの迅速な判断で少しエリアが離れたホテルまで避難できた。重いスーツケースをもってホテルも何軒も回る羽目になった。正直疲労困憊だった。こんな状況で正しい判断をするの困難だ。真っ暗な町の中で、寒空の中、本当は泊まれるはずの家の前で見上げた星がキレイだったのは、エモかった。自然や災害とか、大きな力には勝てないのだと人間のちっぽけさを感じた。

ホテルについたのはトラブルから3時間後くらいで、夕飯も食べていなかったのでUberEatsでジャンクフードをホテルに頼んだ。
日本ならコンビニ行って、美味しくて温かいごはんにすぐにありつけるのに、アメリカはなんて不便なんだろう。夜は治安が悪くて1人で外に出られないし、21時頃にはお店は閉まるし、24時間営業のコンビニなんて無い。日本だとUberEatsは便利だけど高い、程度にしか思ってなかったが、この土地ではなんてイノベーティブなサービスなんだと思わされてしまった。同じサービスでも環境が違うと、こんなに便益が変わるのか。やっと宿を確保して、みんなで食べた夕飯は美味しく感じた。

ホテルで食べたジャンクフード

この話をシリコンバレーに住んでいたことがある友人に伝えたら、アメリカでイノベーションが起きる理由は不便だからなんだ。日本はもう十分便利だからイノベーションが起きないんだよと言っていた。

日本に対する耳が痛い話しも、自然災害によるトラブルも、便利なサービスで救われたピッチも、すべて今回のスタディーツアーに参加したから得られたものは財産になるだろう。最後に、このnoteカバー写真は実際に私が撮影をした。晴れていれば天気が良くて過ごしやすいシリコンバレーにまた近々訪問したいし、次は仕事で来て傍観者じゃなくて当事者として関わりたいと思うのでした。


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