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あかね噺-第112席・ジリ貧-感想

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第二回あかね噺の会の盛況だったそうで、倍率12倍とか、単行本10巻の売り上げがよかったのも、この抽選に応募するために複数買いした人もいたのかもね。柳家喬太郎師匠も桃月庵白酒師匠も、すごい人気があってチケットの取れない落語家ですし、第三回をやるとしても、コレ以上のメンバーが思いつかない程なので、行けた人が羨ましいですね。
第三回はチケット代とって、もっと大きい会場でやってほしいけど、無料のあかね噺の会だから、集められたようなメンバーなので、チケット代とってやる会だと、こういうメンバーは難しいかもね。

◆あらすじ


週刊少年ジャンプ 2024年6月3日発売 27号 

持ち前の軽い芸で盛り上げようとするまいけるだが、客には全く響かない。会場にあきらめムードになる中、まいけるの噺の転機が訪れる。

◆感想


全生のアップで始まり、まいけるのアップで終わる噺でしたが、途中の見開きの客席が怖すぎた。
前回の感想で、この噺について書いたんですけど、題名を引きにされたので、この先の噺には触れずに感想を書きます。
今回は、シンクロ・見せたいよりも見たい、について書いていきます。

シンクロ
観客がまいけるの真打ち昇進失敗が見えた瞬間に「全員、俺が死ねばいいと思ってんのかい」って台詞から逆転しそうな感じがカッコよかったのですが、ここのシンクロが堪りませんね。
若旦那に対して親戚縁者が死ねばいいと思っている事と、まいけるの試験に落ちれば良いと観客が思っている事のシンクロでけではなく、軽い芸風で呆れられたまいけると、遊びにかまけて真面目に働かない若旦那もシンクロしていて、若旦那とまいける、縁者と観客の双方がシンクロしていて、上手いなと思いました。

「全員、俺が死ねばいいと思ってんのかい」というのは、まいけるから観客に向けた台詞なのか、若旦那が縁者に対しての台詞なのか、若旦那と同じ状況に追い込まれたまいけるが発するからこそのリアル差があり、観客を一気に引き込む力があったのでは無いでしょうか。

ここから、窮地に追い込まれた若旦那がどんな行動を取るのかが楽しみですね。この後の行動がまいけるのこの先に繋がるのかも注目ですね。

見せたいよりも見たい
まいける昇進試験編のテーマは、この「見せたいよりも見たい」だと思っています。
この言葉を言って営業で落語をやらなかった訳で、この真打ち昇進試験で「見せたいよりも見たい」がキーワードで、今回にもこの言葉が出てきました。

「全員、俺が死ねばいいと思ってんのかい」の部分で、現在のまいけると若旦那の境遇が重なることで深い意味を持つ台詞として印象が強いのですが、これは偶然ではなく計算だと考えられます。
上で書いたとおりに客から呆れられるまいけると、縁者から呆れられる若旦那が重なります。
これは、本来は噺にない長唄を歌うシーンを入れ込んだり、細かいギャグを足すなど、客の期待していない軽い芸をやったからで、客の反応は、まいけるの想定通りで、この重なりを作るために、あえて軽い芸をやったんだと思います。

そもそも「見せたいよりも見たい」を考えると、この軽い芸はまいけるの見せたい芸であっても、客の見たい芸では無いわけで「見せたいよりも見たい」を掲げるまいけるなら、客の見たいが分かっているはず。
ここまで貯めた分、ここから客の見たい本格派の芸を見せてくれると思います。


今回はいろんな眼がありました。なんといっても観客からの白い眼の見開きが怖すぎました。
あの見開きは、魁生の真景重ヶ淵の見開きよりも怖かった。

それとまいけるのきめセリフの時の眼も黒目を塗らないことで、諦めとも覚悟とも恨みとも取れるような虚無的な眼に仕上がっていてゾクゾクしました。

この高座を審査している一生の眼は陰に隠れて、どんな感情で見ているか分からないようになっていました。
一生が、まいけるの考えを理解できていないとも思えないので、どんな気持ちで見ているかも知りたいところです。

一剣は、周りの空気に囚われず、冷静にまいけるの高座を見ていたようで、この演目をこのように演る理由を看破しているようで、一剣の落語を見る目の確かさを感じました。

でも、一番気になったのは、まいけるが空気を換える前に挟まれた全生の驚いたような見開いた眼です。全生はいつもサングラスをしていて目が見えないキャラで、たまに眼鏡の奥の目が描かれることもあるんですけど、ここまでしっかりが描かれたことは無く、こういう表情が描かれることも無かったんじゃないかと思います。

全生が見たい物は、兄弟子志ぐまの弟子が昇進できない所や、同じ芸風のまいけるが、その芸風から失敗する所。ここまでの全生の言動から見たい物はそういうところだと思いますが、本当に見たいのは、同じ芸風の落語家が、その芸風で劣勢を跳ね返す姿なのかなと思いました。

それが見たいから、全生は目を見開いたように感じました。
まいけるの思う「見たい芸」は、全生にとっても見たい物になるような予感がしました。


今回の掲載順は2番目と、最近順位が悪かったので心配したのですが、話のクライマックスに向けてしっかり順位を上げ、その順位を上げた回で、引きの強い面白い話が来ているのは良いですね。
とはいえ、まいけるの真打ち昇進は重要な話だけど、あかねの活躍しないお話なので、どの程度のボリュームが良いのか難しいですが、読者の興味を引くことには成功していると思います。
この後どうなっていくのかを楽しみに次回を待ちます。でわでわー。


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