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あかね噺-第111席・軽過ぎる-感想

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新連載3連弾もある程度話数が進んだので、まとめて評価してみる。

「願いのアストロ」
1話目がすごく良かったので期待したのですが、2話目から大失速。
隕石が落ちて、特殊能力に目覚めた人が大量発生して、これは北斗の拳的世界観で、任侠道で本当の強さを見せるマンガになると思ったけど、なんかしょぼい悪党とヤンキーみたいな喧嘩してるだけで、ジャンプにチューニングした為か、毒にも薬にもならん漫画になってて、対象年齢を低くしてるっぽいけど、子供にも受けないんじゃないかなって感じ。
打ち切られにくい漫画だと思うけど、短期で打ち切る勇気があるのか見たいです。
「極東ネクロマンス」
めちゃくちゃ面白いって訳じゃないけど、那波先生の色がしっかり出ていて、キャラクターの立たせ方、特に台詞回しの良さに光るものがあり、これが好きな人は確実にいると思います。
その人数が多いか少ないかだけど、連載が続けばすごいフックのある話が描ける作家だと思っているので、これは続いてほしいと思います。
まだまだ怪しいけど、看板になれる可能性が少しだけあると思う。
「さいくるびより」
いける可能性はあると思うけど、ちょっとふわっとしすぎてるかな。キャラも世界観も面白いけど、やってる事のわりにすべてが緩すぎる。
この緩さが作風だし個性で良いと思うけど、読者にハマるにはもう一つ足りない気がする。今後の展開やキャラの魅力が増すような事が無いと厳しいんじゃないかな。まだ底が見えてないので、今後に期待。

ここまでのところの私の評価は、極東>>さいくる>アストロかな。
ヒロアカが終わるの秒読みなので、割とチャンス貰えそうな時期の連載として、批判したけど粒は揃ってると思います。

◆あらすじ


週刊少年ジャンプ 2024年5月27日発売 26号 

まいけるの高座が始まり、冷えた客席を盛り上げようといろんな手を打つが、全生の妨害もあって上手くいかない。

◆感想


まず「居残り佐平次」じゃ無かった。同じ廓噺だけど「たちぎれ」でしたって事でカッコ悪すぎる。
今回の話は、まいけるのカッコよさと苦戦っぷりも良かったんですけど、全生がかなり立体的に見えてきて面白かったですね。
てな理由で今回は、たちぎれ・いいけど別にいいけど、について書いていきます。

たちぎれ
冒頭にも書いたけど「居残り佐平次」では無く「たちぎれ」という演目でした。言い訳すると「居残り佐平次」が、まいけるの”仁”にすごくあった噺だったので、来たね!と思ってしまったという恥ずかしい話でした。
この「たちぎれ」は、上方落語の大ネタであり、江戸落語でもやられる噺なので、真打ち昇進試験でまいけるがやるのにふさわしいネタです。

まいけるが、客席を温めるために”長唄”を歌いますが、本来の落語にはそういうシーンはありません。若旦那は長唄や三味線が好きな事は噺のキーパーソンではあるのですが、実際に長唄を歌うような事はしません。
この「たちぎれ」はくすぐり(笑い)が少ないネタなので、こういう長唄を入れ込んで、客を楽しませようとする芸達者なまいけるならではのアレンジだと思います。

長唄だけでは盛り上げることは出来なかったものの、まいけるは怯むこと無く歌うような調子で客席を引き込んだかに見えたが、その瞬間に全生の邪魔が入り上手くいきませんでした。
元々、くすぐりの少ないネタだけに、ここからの挽回するのは難しそうですけど、まいける兄さんならやってくれると信じてます。
ただ、マイクで雑音をいれるみたいな邪魔の仕方をされてしまうとどうしようもないので、物理的に対処した方が良い気がする。

この歌うようなまいけるの語り口を”唄い調子”と呼んでいましたが、これは睦の四天王の一人「三代目春風亭 柳好」のことを指していると思います。
柳好は、花が咲いたかのように艶やかかつ華のある流麗な口調が独特で多くのファンを作った大正時代の名人です。
作中では春風亭は無くて喧風亭なので、柳好は居ないのでしょうが、睦の四天王など本当にあった呼び名を出してくるのは、作品のリアリティーが上がるうまい演出だと思います。

「たちぎれ」の内容については、作中でどう演じられるかを見守りたいのですけど、鶴花さんがぐりこの代理だけじゃない重要な役目を果たしてくれそうで、鶴花さんの活躍にも期待したいですね。

いいけど別にいいけど
今回の目玉は、全生が志ぐまを嫌う理由が分かったことでした。
目の前の客にウケること事ばかりを考えた自分が、本格派の兄弟子達ほど評価されなかった事が、全生のコンプレックスであり、兄弟子である志ぐまを嫌う理由だと明かされました。

この前の志ぐまが全生に対して、目も見ずに失せろと言い放ったシーンでも思いましたが、志ぐまは一生については、それなりの感情があるのでしょうが、全生にたいしては相手にしていない。
全生の態度や言動にも問題はあるけど、過去の回想シーンでも一生や三禄、うららとは仲良くしている描写は入るものの、全生はそのシーンにはおらず、全生に対して志ぐまが兄弟子としてしっかり向き合ってきてなかったようにも感じ、全生がかわいそうに感じました。

そして”いいけど別にいいけど”です。全生の口癖として出てくるこの言葉が深すぎる。1話目の志ん太のアレンジを評価するときも、若干言い回しは違いますが、似たようなセリフを言っていて、この頃から全生のキャラクターは完成してたんでしょうね。凄すぎる。

私は、全生が出てくるたびに言う”いいけど別にいいけど”って台詞に、何か違和感がありました。口癖にしてはキレのない言葉だなぁって思ってたんです。
”いいけど別にいいけど”っていいと思ってない人の台詞で、本来はここで止まらない言葉なんです。いいけど別にいいけど、こうこうしたほうが良くない?とか、いいけど別にいいけど、出来ることなら別の方にお願いしてほしい。みたいに後につく台詞があるはずなんです。
それを飲み込んで”別にいいけど”で止めてる訳です。

なのにですよ。全生は”ワガママ”って言われてるんですよ。
”いいけど別にいいけど”で、言葉を止めて言いたいことも不満も抑え込んで、本心を言ってないのに”言葉にウソがない”なんですよ。
眼の前の客にウケることだけをやる軽い芸とは、客に媚びる芸をしているのに”媚びへつらうことをせず、嫌われることも厭わない”って言われてるんですよ。
口癖の”いいけど別にいいけど”で感じていた違和感が、今週の話で意味が見えてきた感じがしました。

”いいけど別にいいけど”は、本格派でない自身や人に媚びず嫌われることに対する、批判に対しての諦めの言葉。
何を言ってもどうせ理解されないから、変えたり合わせにいかずワガママにやる事に決めたから”いいけど別にいいけど”なんですよ。
ヤッてることは屑だけど、不憫すぎる。

しかし、眼の前の客にウケることに一生懸命やるのが、軽いとか言うのも違う気がするんよね。そこに本格派も何も無いし、だから志ぐまや一生が全生を軽く見てるんなら、それこそ志ぐま達が悪いと思うけど、阿良川四天王になってるぐらいだし、芸風は違えど評価してると思うんだけど、一生も志ぐまも全生の事を相手にしてない感じがするんよね。
かわいそうすぎる。まいけるに救われるのが全生って事になるのかもしれんね。てか助けてやってほしいね。


SAKAMOTODAYSのアニメ化発表で、次はウイッチウォッチかあかね噺、順番が回ってくるのも秒読みかな。和ぬかとのコラボも良かったし、あかね噺の会の2回目もあるし、もう一段上の人気になってもいいと思うんだけど、掲載順はもう一つなのは心配です。
あかねが活躍する話じゃないとアンケは厳しいのかなって事で、今回はここまで、でわでわー。




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