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どうして日本のものづくりに『見えないものを観る力』が必要か?

令和時代の日本のものづくりには、見えないものを観る力が求められています。主な理由は3つです。

  1. 中国をはじめ東南アジア諸国の技術力の向上
    ⇒ 同じものを作る(見えたものを見る)だけでは勝てない

  2. 「知的財産権法」の整備
    ⇒ 最初に考えた人(見えないものを観る人)の権利が守られます

  3. 安心安全なものづくり
    ⇒ 事故が起こる(見える)前に気づくことが大切です

ここでは、見えないものを観る力=先見性の発揮について、その背景について述べたいと思います。

1. “科学技術強国”中国の躍進

中国は今、経済強国であると同時に、技術強国でもあります。莫大な研究開発費を背景に科学技術分野が急成長し、航空宇宙産業やIT産業だけでなく、電気自動車(EV)、新幹線、テレビや冷蔵庫、洗濯機などの家電に至るまで、あらゆる分野で競争力を発揮しています。

中国の新幹線

もはや、同じ土俵で戦っていては太刀打ちできないと言えるでしょう。それでは、日本のものづくりは何を強みとすればよいでしょうか?

まず、中国をはじめ東南アジア諸国のものづくりの強みは、既にあるニーズに対する高い競争力です。「これを作れば売れる」ものに対しては、価格と品質の競争となりますが、中国は安い土地と労働力を武器に、製品を安くつくるだけでなく、高度な設備も取り入れ、高い品質で製造することができるのです。

さらには、既に問題となっていることを改善する製品を生み出すなど、出せれた問題に対して回答する能力は圧倒的と言えるでしょう。

日本のものづくりの生きる道

他と同じことをしていたり、既にある問題点や要望を追っているだけでは、中国をはじめ東南アジア諸国には勝つことが難しいと言えます。必要なのは、少し先の未来を予見する力=見えないものを観る力です。

製品開発には時間がかかります。そのため、製品を売るときの、少し先の社会の要求を見抜いて製品を開発することが大切です。それは単に頭で想像するだけではなく、自分たちが製品を開発すること(行動)によっても社会の要求も変化しますので、私たちの行動の在り方も問われるのです。

このように、前例のない一生で一回きりの社会の流れをつかみ、その流れを変えるところまでが先見性の発揮と言えます。

経営者の先見性というものは、
単に未来を予測するということだけでなく、
むしろ未来を創造していく点にある。

松下幸之助 松下電器産業(パナソニック)創業者

2. 「知的財産権法」の整備

また、新しいものを作っても、既にあるものを改善する(応用特許)だけでは特許としての力も限定的です。知的財産権の観点からも、今ある技術では実現していない、新しいコンセプトを可能にした発明を含む特許(基本特許)が真の意味での強みとなります。その観点からも見えないものを観る力が必要なのです。

3. 安心安全なものづくりのために

人の命にかかわることなど、事が起こって初めて気が付くようでは遅いこともあります。前例のない、新しいものづくりを展開する場合には、過去の前例に頼ることが困難ですが、私たち人間は、世界で1つ、1回きりのことに対しても、正しく考え、正しく行動する能力があります。

虚空(こくう)よく物をいる。
心に主あらましかば、胸のうちに、若干(そこばく)のことは入り来(きた)らざらまし。

吉田兼好、徒然草、第二百三十五段

「予断」が(心にいる主の)先入観をもって判断してしまうことに対して、「予見」は熟練した行為(虚空)の目で観ることを言います。見えないものを観るとは、ありのままの実際をありのままに知ることなのです。

そのような予見する力=見えないものを観る力は、私たち人間に豊かに備わっていますが、養わなければ発揮されず、明示しなければそれだと気が付かないものです。哲学は、見えないものを論理的に扱う上で役に立ちます。

大切なものほど目に見えない

コンピュータにはコンピュータの得意とするところがあり、人間には人間のよいところがあります。令和の日本のものづくりは、その2つを発揮することが求められていますので、コンピュータと人間との違いを知り、人間のよいところを伸ばすことが大切です。

西田哲学は難解ではありますが、コンピュータや人工知能(AI)と人間との構造的な違いを教えてくれます。そして、その一部でも平たく、やさしく、正確に、伝えてみたいと考えて、このnoteでの記事を書き始めました。

松下幸之助さんだから伝わる、稲盛和夫さんだから響く言葉がありますが、「偉人の境地になってから」では遅いのです。そこに論理があればこそ、誰でも、若くても、目に見えない大切なことを議論できるようになる、間違いに気づくことができる、そのための哲学だと思っています。

小川雅

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