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本当の意味で「父親」になるために、私がベビー用品を作る理由

はじめまして、ANDROSOPHY(アンドロソフィー)代表の山田麻木です。

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ANDROSOPHYは、ベビーキャリアを始めとしたベビー用品のブランド。「男性の育児を当たり前に」をコンセプトに掲げ、男女で兼用しやすいデザインのアイテムを作っています。


実は、ANDROSOPHYはもともと私が鞄づくりの老舗、土屋鞄にいたときに構想を始めたブランドです。私自身、国内外で、ランドセルやビジネスバッグなどの事業管理や商品企画を手掛けてきました。

それが、なぜベビーキャリアを作ることになったのか?

noteでは、ANDROSOPHYの価値観はもちろん、私自身の経験や想いを記していきたいと思っています。今回は、「私が、育児商品を作ろうと思った理由」をお伝えします。

未来を描く企画が好き

最初に、私自身の話を少しさせてください。

土屋鞄に入社する前は、ニュージーランドの大学に行ったことをきっかけに海外で働き、法人の立ち上げを経験してきました。オーストラリア、アメリカ、香港などの国々で働いた末、日本に帰国。マーケティングコンサルとして働きながら、また海外で働くことを考え土屋鞄に入社した、という経緯があります。

土屋鞄では、当時立ち上げて3年ほどだった土屋鞄香港へ。

5年ほど土屋鞄香港の経営に携わり、その後、台湾に事業展開しました、「今度は商品企画をやってほしい」という代表の土屋の指示の下、帰国が決まりました。

商品企画と言っても、私が担当したのはひとつひとつの鞄を作るのではなく、5年先を見据えた製品群の組み合わせを考える仕事。未来を描いて、そこで軸になっていく土屋鞄の商品を考える。そんな仕事が好きでした。

そんなある日、土屋鞄代表の土屋に呼ばれました。

運ぶべき「大事なもの」って?

「土屋鞄の企業資産を活用し、ランドセル、鞄に続くもう一本の柱(事業)を作って欲しい」

土屋鞄は、もともとランドセルから始まり、ビジネスバッグやショルダーバッグ、トートバッグなどあらゆる鞄を展開してきた会社です。そんな土屋鞄がこれまで培ってきた軸を生かした新事業。土屋鞄がやるべき未来を見据えた鞄作りを託されました。

まず、「鞄は何のために存在するのか」という意味の部分まで深堀ることにしました。今の鞄の形態自体は西洋から来ているけれども、日本には風呂敷文化があったわけで。鞄自体の存在意義は何なのだろうと、日本文化を知るために日本家屋の職人さんや伊勢神宮の神宮さんなど、本当にたくさんの人に話を聞きに行きました。

そうして辿り着いた1つの答え。それが「鞄は、人々の『大事なもの』を運ぶものである」ということでした。

例えば、北海道のある民族にとって一番重要なものは家の鍵だそうです。家に他人を入れる文化がないために、家の鍵は自分たちの居場所を守る大事なもの。それを、皮の入れ物に入れて、常に首からかけている。それも立派な「鞄」じゃないかって。

今まで土屋鞄が作ってきたランドセルやビジネスバッグは、彼らの「大切なもの」を運ぶことに貢献してきたのだ、と納得できました。

じゃあ、次の時代の、未来の「大切なもの」って?

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そう考えたときに、それは子どもなんじゃないか、と。仕事道具を運ぶのが鞄、学習道具を運ぶのがランドセル、そして子どもを運ぶベビーキャリア。全てがつながったような感覚を覚え、私たちのベビーキャリア開発が始まりました。


「父親」になれなかった時期

私自身にも、大切な娘がいます。

生まれたばかりのころ、香港に単身赴任中だった私が娘と向き合うのは常に画面越し。離れていたから子育てがしたくてもできない環境だった……なんていうのは、正直なところ言い訳でしかなかったと、今ならわかります。

やはり、当時の私は子育てにそこまで興味がなかった。形の上では父親になったけれど、意識は「父親」になりきれていなかったんだと思います。

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そんな状態だったため、日本に帰国して娘と一緒に暮らすようになっても、妻に比べて娘との距離を感じていました。妻にはニッコリ笑顔なのに、僕と顔を見合わせると泣きそうになったり。やはり、とてもさみしいことです。

子どもが大きくなればなるほど、小さい頃の子どもとの時間はすごく限られていると感じる日々。子どもと接する時間にもっと興味を持っておけばよかったな、と感じていた頃でした。

同じく子どもを持つANDROSOPHYのチームメンバーや周りの男性に話を聞いてみると、みんな、なかなか育児ができていない。できない理由をいろいろ並べるんですけど、聞いててわかってしまうのは、やっぱり“できない”んじゃなくて、興味関心を女性ほどに持てていない。

絶対に口には出さないけれど、心のどこかで「育児の大部分は女性がするもので、自分の義務じゃない」と思っている人も多いんじゃないかと感じていました。日本では男性の育児参加率が低いと言われています。育休制度や社会環境の問題ももちろんあるけれど、当事者になって初めて「意識」の問題でもあることに気づきました。

どうすれば、私も含めて男性たちの「意識」が変わるのか、本当の意味で「父親」になれるのか。その答えはないままに、私は「大切な子どもを運ぶ」ベビーキャリアのリサーチを始めました。

「当たり前に」育児をする父親を増やしたい

ベビーキャリアを作るにあたって、まずは使用感や課題感を知りたいと思った私たちは、知り合いに声をかけ、子どもがいる7家族に集まってもらいました。

ベビーキャリアの話を聞くつもりだったのですが、徐々に家庭ごとの「子育て文化の違い」のような話になっていきました。そこで興味深かったのが、きっぱり2つのグループに分かれたこと。

片方はお父さんたちが頑張って子育てに“参加”している、いわゆる「イクメン」グループです。もう一方は「育児に“参加”という考え方自体がわからない。育児は普通に父親もするものでしょ」という家族。おもしろいことに、後者のグループは奥さんが全員、西洋人の方だったんです。

もちろん、できる範囲で「手伝う」のも、ひとつの家族の形かもしれません。それが夫婦ふたりが納得した上で決めた形であるならば。

ただ、諸外国に比べ、日本の育児参加における男女格差が大きいのは、よく知られることです。子どもが生まれると、女性には「子育てがんばって」、男性には「ますますお仕事がんばらないと」と声をかけられる国、日本。

男性も女性も、知らないうちに「こうあるべき」と思い込まされているのではないか。そんな今の価値観のままでは、女性はますます子育てを抱え込んでしまうし、男性は子どもと過ごせるはずの時間を仕事に費やすようになってしまう。

諸外国と同じようにはいかなくても、男性が育児を「手伝う」のではなく、「当たり前に」する社会。女性にとっても男性にとっても、そして子どもたちにとっても幸せな形なのではないか、と感じる出来事でした。

このことをきっかけに、僕は積極的に娘のおむつを変え、朝食を作り食べさせるようになりました。あるとき娘の便が出ていないことに気付き、ネットで調べて便秘に良いというバナナやヨーグルトをあげることがありました。

以前の私であれば、便が出ていないことにすら気付いていないと思います。そんな小さな一歩だけど、私も当たり前に育児をしようとし、やはり、それは幸せな瞬間だと感じています。

価値観や文化を変えるのは、時間がかかる難しいことです。でも、私たちができることをブランドの根底に置いてやっていきたい、とそのときに決めました。

男女を問わず、当たり前に育児をする未来を創造し、少しでも手助けできるような、製品やサービスを提供できるブランドになりたいと思います。

こうして、ANDROSOPHYは生まれました。

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