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小説を書くための七つ道具 辞書<再掲>

この記事はちょうど一年前に掲載したものです。
昨日掲載した『表記ゆれ対策』の記事の反響が多く、その中で記者ハンドブックのことを書いたのですが、この対策には辞書も威力を発揮してくれています(と言いますか、やはり辞書が基本です)。
それらの辞書たちのことも触れておかないと、と思いましたので再掲します。

・・・・ここから再掲です・・・・

『三省堂国語辞典第八版』・『新明解国語事典第八版』・『類語例解辞典』・『記者ハンドブック』 私が普段、小説を書くために使っている辞書です。どれも使い込んでいて、本当に大切な相棒です。

『新明解国語事典第八版』


『新解さんの謎 (文春文庫)』赤瀬川 原平さん、を読んで以来、愛用してきました。辞書というものは客観的に事実のみを説明するものだと思っていたのですが、この辞書は、解説を書いた人の考えや思いがダダ漏れで、自己主張をしてきます。
誰が書いているのだろう、と思うほど個性的で、読み物として読者を喜ばせようという意図すら感じられます。
読んでいて楽しい辞書です。

有名な「恋愛」の語釈(解説)です。思わず読み込んでしまいませんか?
確か昔は「あわよくば合体したいという気持ち」とまで書いてあったような記憶があります(さだかではありません)。

『三省堂国語辞典第八版』


語釈が個性的な新明解に対して、『三国』の方は、新語に非常に強いことが特徴です。
小説を書いているとどうしても風俗や最近の流行に対して敏感でないといけないので、今は『三国』が重宝します。

こんな言葉が載っていると、「地味に嬉しい」です。
言葉は常に生きて変化しているものです。新しい言葉が生まれ、その中から何が生き残るかは、私たちに託されているのだと思っています。
この辞書はそのことを教えてくれるようです。

『類語例解辞典』

小説を書き始めたときに、自分の語彙の乏しさに悲しくなり、同じ言葉でも違う表現を使いこなせるようにと購入しました。
写真は『人間の性質』の『悲喜』の中のページです。「驚く」という感情を表現するのにも、驚愕・驚嘆・愕然・喫驚・驚天動地・たまげる・仰天・びっくり、など様々な言葉があります。
関連して興奮・激昂・逆上などもあって表現の幅が広がります。

この辞書をテキストとして読んでみたことがあります。
特に『人間の動作』、『人間の性質』の項目は語彙を増やすために有効だと思います。
歩く、走る、座る、立つ……喜怒哀楽など
知らない言葉、使ったことの無い表現が、たくさんあるでしょう。

図書館で類語辞典をどれでも借りてみて、試してみてはいかがでしょう。気に入ったら一冊購入して、使い倒すことをお勧めします。

余談ですが、日本語にもっと言葉の種類があれば良いのに、と思うことがあります。例えば「うなずく」という言葉。同意を示す言葉ですが、

頷く、首を縦に振る、首肯する、点頭する、肯んずる このくらいです。

「首肯する」からはほとんど使えないです(時代小説なら別ですが)
少ないと思いませんか? 

小説を書き上げて校正を始めて気がついたら、主人公は頷いてばかりということもあって、困ることが多いです。

『記者ハンドブック』

新聞用字用語集です。記者さんが記事を書く際に参考にする辞書。
私の使っているのは共同通信社発行のものです。
特に役立つのは次の二つ。

どの字を使うか
漢字で書くか、平仮名で書くか

写真は「あげる」という言葉です。「上げる」、「挙げる」、「騰げる」、「揚げる」。どれを使うか迷ったことはありませんか。もちろん「あげる」でも良いのですが、小説ならば、ぴったり合う言葉を使いたいものです。

時々、どちらの字を使っても良い。平仮名でも漢字でも良い、とされる場合があります。(たとえば「うなずく」と「頷く」)
私は、この辞書を「この場合はこの字を使う」という基準にもしていました。

今日は『辞書愛』のお話でした。ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
辞書は、小説執筆の工程では、校正の場面でもっとも活躍します。校正についての記事はこちらからどうぞ。

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