新人賞応募前の校正<小説の書き方>
推敲と校正は違います。
推敲は書いた小説を読み直して、更に良くする作業。ブラッシュアップです。私の場合は前日に書いた原稿を翌朝から読み直して、修正します。
原稿が良くなっていくのですから、とてもとても楽しい作業です。
校正は文字や表現の誤りを直すこと。
今日は推敲が終わって、ほぼ完成と言えそうな原稿を校正する作業の話をします。
新人賞応募用の原稿で、これまでにあったミスの例
noteは始めたばかりですが、私の記事を読んでくださる方には、新人賞を目指している方が多いようです。なので新人賞応募の前の注意事項と言うつもりで書いてみます。
下に書いたミスの例は、私、酒本歩がデビュー前に応募を重ねていた頃、校正をして発見したミスの例です。応募の一歩手前で発見して冷や汗を書いたものもあれば、そのまま新人賞に応募してしまったものもあります。
意味が通るミスはまだしも、「なんだ、これ」という致命的なものも。
キャラの名前ミスなどあり得ないことなのですが、あり得ました……
・名前の打ち間違い 亀谷⇒亀山とか 早紀⇒沙紀とか
・単純な誤植 製作料⇒制作料 ケイタイ⇒ケータイ
・同じ表現の頻出 「必死に~」が一つの小説で12カ所。
「うなずく」が一枚の原稿に3回
・表記の揺れ こつこつと⇒コツコツと
(開くか閉じるか) 亡くなった⇒なくなった
・つじつま合わず ものの値段が600万円⇒60万円
70%⇒50%
・変換の不統一 九五%⇒95% 2カメ⇒二カメ
ミスを防ぐ校正の秘訣
校正の秘訣は、できるだけ何回も読むことです。
しかし毎回、ディスプレイに向かって最初から黙読するのは(はっきり言って)苦痛です。もう頭の中にあるものを何度も繰り返すだけなのですから。当然、集中力が落ちます。おざなりなチェックになります。
そうすると見落としはいくらでも発生します。
新鮮な気持ちで読む工夫をしましょう。
「手を変え品を変えて、同じ作品を何度も読み直す」ための工夫が必要です。私の場合は推敲に次のプロセスがあります。
①PCなどの端末で読む
②印刷して読む
③音読する
④名前校正(後述)する
これだけで4回です。あとは繰り返して、精度を高めることです。
通して校正して、一カ所もミスが見つからなかった時が、終了です。
※実際には読み直す度に、どこかにミスがあるものです。
音読の意味
音読はリズム、テンポの確認に有効と言われます。しかしそれだけではなく、声を出して読む以上は文字を一度、頭の中に入れる作業をしているということです。
黙読だと、読んだつもりで読んでいない、自分の記憶にあることを思いだしているだけ、という場合があります。他のことを考えながら字を目で追っているだけ、というときもあります。
音読は黙読の倍以上、時間が掛かると思います。
時間を書けて間違いなく目で文字を追うという作業でもあるのです。当然、ミスに気づくことが多くなります。
名前校正とは?
これは私が独自にやっていて、勝手に名付けた作業です。登場人物の名前だけは間違えたくない(当たり前です)。その一心で始めたことです。
原稿を印刷して、登場人物の名前だけをペンや鉛筆で丸で囲って読んでいくのです。この時、他の文字校正はしません。登場人物の名前を一覧にした紙を片手に、ひたすら名前だけをチェックします。だから通常の素読より、はるかに早く終わります。
私の場合、この名前校正をすると、長編で3~4カ所、誤りを見つけることができます。『ロスト・ドッグ』の場合は主人公の「太一」という名前が900回以上、出てきました。おそらく全登場人物の名前は2000回を超えると思います。
2000カ所の名前に○をしながらチェックして、数カ所のミスがある程度なのですが、もちろんあってはならないミスです。この名前校正で「助かった」「危なかった」と思ったことが何度もあります。
途中でキャラの名前を変えたりしたら、さらにリスクが高いです。
※ワープロの「置換」で一度に変えるのはオススメしません。名前と同じ読み方の別の言葉まで置換されることがあるからです。
ex.「ようこ」を「洋子」に一斉に置換すると「ようこそ」が「洋子そ」になってしまう。
そういう時は面倒でも、一カ所ずつ置換して名前が変わることを確認します。
ワープロソフトの校閲(校正)機能・表記揺れチェック機能を使う
これはとても有効でありがたいです。私は一太郎とワードを両方使いましたが、どちらのソフトも優秀です。
ただ、この機能でも、同音異義語など、見落としてしまう場合はいくつもあります。
ex.「洋子そ」は引っかかりますが、「同音意義語」はスルーしてしまいます。「発想」のつもりが「発送」になっていても教えてくれません。
あくまで補助ツールです。
やってはならないこと 応募直前の推敲&修正
最後のアドバイスです。
ぎりぎりまで頑張りましょう、と言いたいところですが、酒本の経験で言うと、もっともミスが起こるのは最後に推敲して修正した箇所なのです。
何度も読み直し、校正すれば普通ミスは防げるのですが、最後に直して焦って応募すると見直す時間がありません。すると……
・名前の単純な打ち間違い
・同じ表現をすぐ近くに使っている
・誤字脱字
・改行や行頭一字空けのミス
など、細かいものはご愛敬かもしれませんが、中には読み直したら死にたくなるようなミスまでが起きるのです。
ですから応募前、最後に読むときには修正を入れない前提で読むこと。どうしても直さなければいけない場合は、最小限にとどめて、その前後を含めて本当に真剣に見直すこと。それを心掛けましょう。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
精魂込めて書いた小説ですから、最後の校正にも精魂込めましょう。
(私はそれがなかなかできませんでしたが……)
『ロスト・ドッグ』の情報はこちらからどうぞ。
追記、2022年末、3つのマガジンにまとめて公開しています。
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